第2話 冒険者のおしごと
今から数えて……えっと、すっごく昔のこと。
あたしたちの世界は終わった。
世界滅亡。
といっても、ある日突然とんでもない魔法が爆発してみんな死んじゃったとかそういうんじゃない。
もちろん、おっきな戦争が何度もあったりして、国家とか社会とかいろんなモノがなくなっちゃって、資源だの何だのとかが枯渇した……とかなんとか。
難しいことはわたしも分かんないし、今もまだどこかにいる生の人間なんてマテリアロイドのあたしは会ったこともないので割愛。
ただ一つだけ言えるのは……
世界をどうこうしよう、なんて熱意のある人間はとっくに絶滅していて。
残ったのは再起することも絶望することもしない、ただ諦めた人間だけ。
だから、人間たちはあたしたちマテリアロイドにそれを押し付けたのだ。
この終わった世界を、ちゃんと終わらせることを。
◇――――――◆
「《
エントランスホールの吹き抜けの先。
二階部分からまるで舞台の檀上にでもいるかのような口ぶりで葬儀屋さんが言う。
「かつて、世界滅亡を回避しようと手を尽くしたとある技術者が絶望の果てに終わりという概念そのものを封印した。ありとあらゆる技術の粋を集めてそれを隠したのが、ここダンジョンというわけ」
子供でも知っているようなことを解説する葬儀屋さん。
当然あたしもそれは知っている。
というかマテリアロイドは人間の記憶を元に作られているから、そんなことも知らないようなちっちゃい子供なんているはずがないのだ。
……あれ。
でも、そういえば葬儀屋さんって少しちっちゃいような――
「今なにか失礼なこと考えてなかった?」
「いいえぜんぜん」
ブンブンブン!
あたしは勢いよく頭を横に振った。
葬儀屋さんはあたしに冷たい視線を向けてくるが、しばらくして小さな嘆息だけ漏らして話を戻した。
た、助かった……?
「まあいいわ。冒険者に割り振られたマテリアロイドの仕事は単純。とある技術者がこのダンジョンに隠した《
「はい! 今から突入するんですね!」
「――は? ちがッ……」
仕事があるなら膳は急げ!
言うが早いか、あたしはすぐに再び荷物をまとめて――ひと思いにダンジョンの入口である床の大穴へと足を踏み入れた。
葬儀屋さんはこのダンジョン全体の管理者だ。
たまたま出迎えてくれた流れで仕事の話を聞いたけど、きっと他にもやることがあって忙しいはず。
そんな人の貴重な時間をあたしみたいな一介のマテリアロイドに使ってもらうのはもったいないからね!
ダンジョンの中なら現場指揮官みたいな先輩もいるはずだし。
詳しい話はダンジョンで見つけた誰かにでも聞けばいいや!
そう結論して、あたしはダンジョンへ続く階段を駆け下りる。
「……あ、葬儀屋さんにお礼言ってなかった」
なんて思ったのと同時に、ダンジョンの外から「待ちなさい!」って声が聞こえてきたような気がしたけど、きっと空耳だよね。
……お礼はまた帰って来てから!
そう決めて、あたしはダンジョンへと向かったのだった。
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