第3話 激動の爆音

今度は爆発が真後ろから起こり、激しい熱風が肌を激しく焼いた。

爆風で吹き飛ばされ地面に叩きつけられた身体はいくら動かそうとしても痺れて動けなかった。


「いい加減ヨォ…アスランの家知ってる奴はいねぇのかヨォ…」


聞き覚えのない声が自分の名前を呼んだことに気がついて頭を上げてボヤける視界にその姿を捉えた


とても正気を保っている人とは思えない焦点の合っていない目と灰色でボサボサの汚らしい長い髪をしたボロボロの穴だらけの服を着た男が煙の中から出てきた


彼の身体は爆発で少しボロボロになっているが彼はそんなことなど気にしていないようで一心不乱に辺りを再び爆破し始めた


「ワザワザこんな変装なんてさせやがってヨォ…」

「回りクドイことしなくてもサイショからこうすればよかったよナァ!」


"爆破エスプロジオーネ"


人々の悲鳴がこだまする中薄れゆく意識の中で誰かが俺の身体を持ち上げたのを感じたのが最後の記憶だった


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


【まだ…ダメだよ…】


初めて聞く女の子の聞き覚えのない声が頭の中で響いたとの同時、俺は目を覚ました。


「だれだ…?」


身体を起こそうとすると不思議となんの痛みも感じなかった。自分の身体を見ると包帯が巻かれていた


周りを見渡すとそこは怪我人が集められた簡易テントのようで、怪我にうなされる人々の声が耳に入ってきた


痛みを感じないので包帯を少しめくると、爆熱で焼かれた身体が綺麗に元通りになっていた


「あれ?なんとも、ない?」


内心怯えながらゆっくりと身体中に巻かれた包帯を外すも怪我という怪我は見当たらなかった


医者の人たちは怪我人の治療で忙しいらしく、俺のそんな行動を咎める人もおらず


続々と怪我人が運ばれている状況をみてまだあの男が暴れているということは想像に難くなかった


そして遠くから響き渡る爆発音を聞く限り、ここは安全な場所なんだとホッと安堵の息を溢した


どうしたらいいのかと何も考えが思い浮かばず、ただ怖いという感情だけが頭を駆け巡った


肌を焼かれる痛み。あの時の痛みが鮮明に思い出せた


とりあえずここに居ては迷惑だろうと自分のカバンを手に取ってテントの外に出ると街のあちこちからは黒煙が登っていた


「こんな、ことって…」


目の前の光景に唖然としていると黒いフードとマントを纏った男が隣にいつの間にか現れた


「起きたのか…坊主。」


話しかけられるまで隣に来ていたことにさえ気づかなかったので思わず心臓が飛び出そうになった


「おじさんがここまで運んでくれたの?」


気絶する前に最後に見た光景で誰かに担がれたのが頭に残っていたので彼をその人に当てはめ、フードで顔は見えなかったが低くて重みのある声の質的にそれなりの年齢を重ねていると思った


「お、おじ…まぁいい。」


少し動揺した様子を見せた彼は咳払いをした


「そうだな。頼み事だったからな。」

「意外と傷は大したモノじゃなかったのか?」


彼からすれば運んでいる時にはとても無事とは言えないほどの重症だったはずの少年が今無傷で歩けるまでに回復していたのだからその反応は当然だった


「俺にもわからないけど起きたらもうかすり傷一つなかったんだ」


「おそらく相当いい治癒師でも居たんだろう。」

「それより俺が話したいのは別にある。ここじゃなんだ。ちょっとついてこい」


改まった様子で彼はここは人目に付くからと自分についてくるように言い、促されるままに彼の後について行き、しばらくして暗い路地裏へと入っていった


「俺はお前の父親と一緒に働いていた仲間であり、未来の信徒の元構成員だ。」


まわりに人がいないことを確認した彼は突然そう告白した


未来の信徒。世界中で有名なテロ集団。世界各地に拠点があり、各国の裏でなにやら怪しいことをしていると、いい噂の聞かない幹部以上は国際指名手配レベルで懸賞金までかかっている。


そんなテロ集団の構成員と聞いて唾を飲み込んで臨戦態勢をとった。正直怖いなんてもんじゃない、膝は震え、ましてや勝てるとは思っていない、ただ逃げきればいいと混乱する頭の中で策を案じていると彼はため息を吐いた。


「はぁ…俺はガキを痛ぶるような趣味はない」

「それに、お前に会いに来たのには理由があるんだ。」


「理由?」


罠の可能性も視野に入れつつ話だけでも聞こうと考えた


「そうだ。俺がお前に会いに来た1番の理由はこれだ。」


ポケットから取り出したその手には1つの通帳があった


銀行で使われる預金通帳と呼ばれるもの、そして名前には父の名前。ウリセス・アスランと確かに記載されていた


「今こんな状況だしな…話すと長くなるから簡潔に言う。」

「お前の父親は死んだ。」


俺は泣かなかった。母が亡くなった時は脇目も振らずに泣いていたが、今聞かされたことに自然と涙は出なかった


薄情者なんていわれるかもしれない、でも本当に俺とあの父親に親子の仲なんてものは無かった


悲しいとも嬉しいとも思わない。まるで他人かのような反応しかできなかった

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