第2話 母の墓前

父は一度も帰宅することも、病院に来ることはなかった。


連絡を取ろうにも母以外に職場を知っている人がいなかったからだった。


母の葬儀が終わり、墓の目の前で1人で立ち尽くしていると雨がポツリポツリと降り始め、すぐに土砂降りの雨が小さな身体を叩いた。


茫然自失としていた俺は身体が冷えていく感覚も気に留めずに立ち尽くしていた。


その時、雨が地面を打つ音とは別にピシャピシャと水溜まりの中を歩く音が聞こえた。


その音はすぐ隣までくると鳴り止み、身体を打っていた雨が途切れた。


顔を上げると傘をさした父親がポツリと立っていた。


「ミーナは死んでしまったのか…」


隣でそう呟いた父親を見ると悲しそうな顔はしていたが涙は流していなかった。


「一度も帰ってこなかったくせに何言ってんだ…」


気がつくと俺はそう言いながら父親のズボンを強く引っ張っていた


「そうだな…」


そう呟くと父は傘を俺に持たせ、雨に打たれながら墓場を後にして行った


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家に帰るも父親がいる様子もなく、リビングのテーブルの上に一枚の書き置きが置かれていた。


内容はもう自分は家には帰ってこないこと、家事をしてくれるお手伝いさんを雇うのでその人に頼ること、毎月生活費を送金するので自由に暮らすこと。


次の日には30歳ほどのお手伝いさんが家にやってきた。


家事を難なくこなすと朝、昼、夜のご飯も作ってくれた。

俺はと言うと毎日、母の墓の前で座り込んでいたり、近所の子供たちと遊んだり、父の部屋に入って本を読んだりしていた。


そんな日々が何ヶ月と続いても書き置きの言う通りに父親が家に帰ってくることはなかった。


12歳にもなり体が成長するにつれて家事も1人でこなせるようになり、お手伝いさんのやってくる回数も段々と減っていった。


その時には父親の部屋に置いてあった本も全て網羅していた。


その本の中身は論文などの難しいものが多かったが、中には娯楽用の小説や図鑑もあった。

その中の本の一冊でとても興味がそそられた本があった。


それは魔法に関する本だった。全部で3冊。

1冊目は魔法の概念や基礎が書かれた説明書のような本。

2冊目は対魔物用の護身術的な簡単な魔法が書かれた本。

3冊目の本は読むことができなかった。なぜなら小さな鍵で施錠されていたからだ。


一冊目の内容を簡単に要約すると…

魔法とは頭の中のイメージが実現したもの。

権利の真似事と言われる魔法の起源はまさに権者の力を模倣することから始まったと言われている、身体の中や空気中に漂う魔力と呼ばれるエネルギーを物質などに変換してこの世界に顕現される。


二冊目は基礎的な戦闘用の魔法やその習得のコツが書かれていた。


三冊目の本に関しては鍵を壊すことはできそうだったが、自分の本ではないためあんな父親のものであっても壊すということはためらわれた。


俺はそれらの本を見つけてからはカバンの中にその3冊の本を入れてよく街の近くの山の中へとお墓参りの後に通っていた。


理由はただ1つ。魔法を使ってみたかったから、子供らしい単純な理由、いわば好奇心だった。


当時の俺は魔法の才能があるだなんて思っていた。本に書いてあった魔法を数週間で全てモノにしたからだ。

そこだけ見たら天才だなんて言われるだろう。


ただ…上には上がいる。それだけだった。


"火球ファイアボール"


岩を的にして手のひらほどの火の玉を放った。

それが命中すると同時に街中から爆発音とともに黒い煙が上がった。


爆発で生じた風圧が木々の葉を夥しく揺らして俺は大きな不安感に襲われた


煙の位置から見て家とは正反対の少し治安が悪い貧民街でなにかが起きたようだった


「なんだろう…あの煙…」


様子が気になったので山を降りて街中に出ると人々が慌ただしく悲鳴をあげて逃げていた。

露店の店の店主は貴重品を両手に抱え、子連れの家族は子供を抱っこしながら煙の立ち上るほうから正反対に逃げていた。

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