第6話 球技大会について
またしても、俺と宮部で帰り道を歩くことになった。
悠貴は「図書館で勉強してから帰るから後は二人で仲良くね」といって去ってしまった。
あのヤロウ、絶対、この状況を楽しんでるに違いない。
「今日も一緒に帰れたね。嬉しい」
宮部は俺を見ながら、終始ニコニコしている。何がそんなに楽しいんだ。
「嬉しいよ、俺も」
めんどくさいので適当に俺も合わせる。
「棒読みだ。絶対思ってないよね、嬉しいって」
「思ってる、思ってるわ」
「嘘だあ」
そんな感じで俺と宮部は帰り道を歩いた。そうしていると、ふと思い出したことがあった。
というか一番最初に言うべきことだった。俺は少しやらかしたと思ったが、何食わぬ顔で話し出した。
「生徒会の仕事が来週から本格的に始まるから、今言うぞ」
「なにするの?」
「球技大会だ」
「球技大会ってなんだっけ?」
俺はギャグ漫画みたいにズッコケた。嘘だろ。去年やっただろうか!
「大丈夫?」
宮部が差し伸べてきた小さな手を握り俺は起き上がった。小さくてふかふかな手の感触で頭が少しだけ混乱してしまった。
「気を取り直して、俺が一から説明してやる。よく聞くように」
「はーい」
「はいは伸ばさない。この学校の球技大会は学年関係なくクラスごとにぶつかりあう一度負けたら終わりのトーナメント戦で行う。種目はドッヂボール。もちろん、男女は分けるがな」
「あったような、なかったような」
なかったわけないだろ。俺の記憶にはきっちり顔面にボールぶつけられて、鼻血が止まらなくなってリタイアした悲しい記憶が残っているぞ。
「その運営を担うのが俺たち生徒会だ」
「へぇ、優勝したらなにか貰えるの?」
運営のことより、景品のことしか宮部の頭にないらしい。
今から生徒会の仕事がこなせるのか心配になってくる。
「去年はお菓子の詰め合わせだったような」
「思ったよりしょぼいね」
宮部はグサリと突き刺さることを言ってきた。俺もしょぼいとは思うよ。けど、学校の景品なんてそんなもんだろ。
「ただの学園行事だからな。予算も限られてるし」
「つまらない」
宮部が今まで見たことないくらい冷え切った瞳をしていた。なんか俺が悪いことしたみたいな気分になるな。
「今年はもっといいのになるかもな?」
「ホント?」
宮部は先ほどから180度変わってキラキラ目を輝かせている。子犬か。
「うんうん。来週になったら羽生先輩と相談する」
来週になったら羽生先輩も面倒ごとが片づいてると思う。そう思いたい。
「ハワイ旅行の招待ついてくる?」
「それはない」
「そういや。お前を生徒会のグループに入れないとな。スマホにチャットアプリを入れてるか?」
「い、入れてるよ」
宮部は鞄からガサゴソと急いで探し出しスマホを取り出した。何もそんなに急がなくてもいいのだが。俺はポケットからスマホを取り出し、宮部と連絡先を交換する。そこから俺を経由し、生徒会のグループに招待した。
「よし、これで完了。お前も立派な生徒会役員だ」
「……」
宮部は俺の連絡先画面を見つめたまま微動だにしなかった。
あれ、間違えた。もしかして、痛いやつか俺?
「おい、どうした? まさか俺のアイコンのブタブーがダメだったのか?」
「……ブタブーは気持ち悪かったけど、それ以上に連絡交換できたことが嬉しい」
宮部はスマホを大事にその豊満な胸に押し込み両手で抱え込んだ。
「ありがとう、上本さん。これでいつでも繋がれるね」
ストーカーやってたやつから言われるとシャレにならないんだよな。
自宅に帰った後、2階の自室で俺は寝転がりながらベットでスマホを見ていた。
宮部が怖いことを言っていたから、てっきり鬼のようにチャットを送りつけてくるのかと思っていた。
しかし、時刻は現在23時。もう送ってこないと見て俺は眠りに着こうとした。
まさにその時。ピコンと通知オンがなった。急いでスマホを見ると、宮部から二足歩行のブタのスタンプが送られてきた。特に可愛くもない。どちらかといえば不細工なブタだ。
「これは好き?」と文章付きで。
色気もへったくれもない最初のやり取りに俺は思わず吹き出した。
「まあまあかな」と宮部に送り返し、俺は眠りについた。
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宮部桜は恋の謎を探求する りりん @88mdneo
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