白いページの図書館

@Ne-mi

第1話

放課後の図書室は、ほんの少し埃っぽい匂いがしてていた。僕にはそれが落ち着く香りだった。友達と遊ぶより、本棚の間を歩いて知らない物語を探す時間が好きだ。

その日、棚の奥に、タイトルのない古びた本が斜めに差さっていた。開いてみると、「きみの今日を変える」とだけ書かれたページが一枚。あとのページは全部まっ白だった。


不思議に思ってページをめくった瞬間に、図書室にある時計が“コーン”と大きく鳴った。ふだん静かな時計があんな音を出すのは初めてだった。驚いて顔を上げると、さっきまで曇っていた窓の向こうが、夕焼けで赤く染まっていた。時間が跳んだのか、進んだのか、よく分からなかった。


家に帰ると、普段は遅い母が珍しく早く帰ってきていた。僕はなんとなく今日あったことを話してみた。白い本のこと、時計の音、夕焼けの色。母は「面白い話だね」と笑って、久しぶりにゆっくり夕飯を一緒に食べた。


翌日になって、図書室でどれだけ探してもあの本は見つからなかった。でもきっと、あの白いページは僕に“今日を変えるのは自分だよ”って教えてくれたのだと思う。僕は昨日より少しだけ周りを大事にしようと思った。

それだけで、この物語はもう十分だ。

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