第3話 現実

 程なくして初老の教師が現れた。

 「実技を担当する私に君たちを守る義務はない。それだけは覚えておけ。」

 随分な挨拶に教室の空気が凍る。お構いなしに教師は続けた。

 「その紙の内容を読んで納得したらサインをしたら外に出ろ。」

 サッと名前を書いて指示通りに外へ出る生徒たち。移動の最中、口々に話し声が聞こえてくる。

 「…マジで親ガチャかよ…うちは才能なさそうだ。俺どうなるのかな…」

 「お前の家、親父は凄かったろ、親父似れば平気だって!」

 弱気になっている生徒は不安な表情を浮かべている。悲喜こもごもな会話が聞こえてくる。


 開けた校庭に生徒が揃う。初老の教師は口を開いた。

 「実技を始める。これが最後の授業だ。よく話を聞いて、勝手に行動しないように。」

 「では、まず基礎だ。火を起こす練習から始める。」

 【Code 火 範囲 右手人差し指から3cm 時間軸 今 手本用  Enter】

 初老の教師の右手からロウソクの火が灯る。

 「これが基礎だ。モノと範囲を指定しろ。危険だから指示をちゃんと…」


 待ちきれない生徒が口を挟む。

 「なんだ、大したことないな。うちは両親とも元剣闘士なんだ。俺の限界量もかなりのもんだろ。お前らとは違う勝ち組だよ。先生なんかより、よっぽどすごいことができる!」

 希望と自尊心に満ちた眼で教師を見つめ、吠えるように話す。

 教師は言った。

 「皆彼から離れるように。できるだけ早く。」

 サッと彼を中心に空間ができた。

 待ちきれない生徒は自信に満ちている。

 「俺はすごいんだ!従う必要はない!見せてやるよ!長ったらしいもんじゃなくてもっと単純でいいだろ!」

 【Code 火 Enter】

 天を突くような、大きな火柱が登る。

 

 

 

 

 

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