第12話 佐藤由紀です!マジに信じられない!

私は、佐藤由紀です。

もうご存知かも知れませんが、田中健太君の「横浜の小・中・高の同級生、ピアノ教室も同じ、ついでに大学まで同じの、幼なじみ」です。

小学生低学年の頃は、「何度も、同じピアノで連弾した仲」です。

(それは、先生の指示で、弾いたと言われれば、そうなんだけどね)


健太君のピアノの腕ですか?

マジに私より上手です。

コンクールで一位の時もあった。(中学の頃でした)

(私の勝ちは、ちなみに、一度もありません、負け続けです)


音大とかの興味はなかったようです。(勧められてはいました)

でも、健太君は、興味の対象が、ピアノだけではなかった。

ピアノとシンセで、「もっと面白い音楽を創りたい」タイプ。

(凝り性です、しかも頑固)


下北沢のジャズバーに出ていることも、知っています。

マスターは、元N響のベーシストで、健太君のお父さん(現役のTフィルのチェリスト)の、元同僚です。

(ちなみに、私の父も、今Y響でトランペットを吹いています)

(マスターと健太君のお父さん、私の父は、芸大の同窓生です)


さて、「問題の」私と健太君の関係ですよね。

うーん・・・

私は、健太君のことは、好きです。

自分では、「初代彼女」と思っています。(・・・小学二年くらいまでかも)

でも、つい・・・健太君を見ると、強い言葉を、言ってしまうんです。


例えば、ピアノのレッスンが終わりますよね。

家も近所だったから「待っていてくれる」と思っても、あいつは、「自分が終わればサッサと」帰るんです。

だから、「何で帰っちゃうの?」と文句を言うんです。

でも、健太君は、マジに冷たい。(小学三年生頃からです)

「自分で帰れない?僕には僕の予定がある」

「5分もかからないでしょ?」

(確かに、ピアノ教室と私の家は、近かった)

(でもね、待っていて欲しいの、無視しないで欲しかった)


(何度話しかけても、ほとんど、上の空、だから文句を言うのに)

(仕方ないから、おしゃべりの男の子と、遊ぶようになった)

(でも、誰とも満足できないので、すぐに別れた)

(それで男好きとか、恋多き女の噂が立った)

(その発端は、健太のシカトだよ、あのバカ!)


中学までは公立なので、一緒。(文句ばかり言うので、避けられていました)

高校と大学は、意地で「追いかけ」ました。


その期間、何度も「山下公園に遊びに行こう」「元町の買い物に付き合って」「中華街で飲茶しようよ」と、誘いました。

でも、全部、断られました。

「君とは、話が合わない」(ごめんなさい、つい、一方的になる)

「そもそも、女子は苦手」(それは、わかる、おしゃれな話が苦手だよね)

「他の人と行けば?」(健太君を誘っているのに、泣きたい)

「だって、自分のことばかり、話し続けて、僕は頷くだけでしょ?」

(うん・・・ごめん)

「反論すれば、二倍三倍で、怒って来る」(だって・・・言いたくなるの!)

「貴重な時間を、無駄にしたくない」(これには泣きました)


時々、山下公園で見かけたこともあります。

「健太君!ちょっと待って!」と声をかけても、いつも、そのままスタスタと歩いて行ってしまいます。


そんなことが続いて、いつの間にか、健太は横浜からいなくなりました。

実家は健在だから、自分勝手に、一人暮らしです。

(結構な御身分ですこと!)(私から逃げたかったのかな)


ところがです!

たまたま見かけたキャンパスで・・・美少女と歩いている!

ムカついたのなんのって!

「マジ?健太が?私以外の女、しかも美少女と?」

「信じられない!ムカつく!」

「ちゃんと女子と話もできないくせに!」

(嫉妬のあまり?いや心配で追いかけました)

(ストーカー?そんな批判は受け付けません)


でも・・・ご存知の通りです。

(逃げられたよ・・・また)

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