ギガントスクイド
亀井惺司
第1話 トイレの花子さん
「なぁイカゲソ。」
白いイカの守護怪獣ギガントスクイドがタイ近海でギガントシャークと共闘し、怪獣マカラゴンを倒し、その刺身を食べていると、シャークが話しかけてきた。
「お前に行ってほしいとこがあるんだ。」
「何だい?」
「あっちにある日本っていう島だ。そこで怪獣退治をしてきたらどうかと思うんだ。」
「なんでまた‥」
「あの島は怪獣がよく出るんだ。今いる守護怪獣じゃ手が回らないこともあるかもしれねぇ。目覚めたばかりでまだ体が鈍ってるだろう。そこで修行して、イカした男になって戻ってこい!」
「よぅし‥」
スクイドはシャークの言葉に押されて、日本に向かうことにした。
「それは丁度いい!」
横からフタバスズキリュウ型ダイノモーファー、アクアマリンに乗ったナツメ・ダンが声をかける。
「日本に新しいダイノモーファー2台と基地を作ったんだ。君にはそこに常駐してほしい。」
「わかった!」
スクイドはアクアマリンと並走して日本に向かう。着いたのは神奈川県逗子市の小坪湾だった。漁港の近くに物々しい基地がある。
「怪獣対策機構 怪獣科学調査所」
と書かれていた。
「ここは?」
ナツメ博士はアクアマリンから降りると、説明を始める。
「私が新しく作った調査研究基地だ。身の回りの怪獣が絡んでいる可能性のある事案、例えば変な生き物を見たとか、不思議な体験をしたとか、そういう相談を受けて調査するんだ。ネット上の体験談も調査の対象だ。」
「ほぅ。」
「それが怪獣事案だった場合、直ちに守護怪獣やダイノモーファーが出動し、素早く退治するわけだ。そしてここが日本最初の調査所だ!私の他に二人が常駐しているぞ!紹介しよう。」
ナツメは建物に入ると、二人の男を連れて出てきた。一人はスーツを着た30代半ばの真面目そうな日本人の男で、一見普通だったが、取っ手のついた鞄のような形の水槽を持っており、中には一匹のヤマメが泳いでいる。
もう一人は白い髭をもじゃもじゃと生やしてつばのついた帽子を被り、赤と黒のチェックのシャツに青い吊りズボンを履いた典型的な農夫のような出立の丸々と太った白人の男だった。
「石見譲二です。以後お見知り置きを。」
水槽を持った男が礼儀正しく頭を下げる。
「俺ぁジェームス・ケントってんだ。まぁ仲良くやろうや!」
太った男が陽気に自己紹介をする。
「えぇと‥色々聞きたいことがあるんだけど‥
石見さん。その魚は‥」
スクイドは戸惑いながら話しかける。
「ミツキです。私の家族。片時も離れたことはありません。」
この石見という男はこのミツキと名付けたヤマメを特別視しており、常に連れ歩いているらしい。
「後、ジェームスさん‥その格好は‥」
「俺ぁ農家だ。少し離れたビニールハウスでピーマンを作っとる。よかったら食うといい。」
「あ、はい。」
極めて個性的な人々を前にスクイドはよそよそしい口調になってしまう。
「そしてこの基地が有する自慢のダイノモーファーを紹介しよう!石見くんの専用機ブラックストリームとジェームスくんの専用機クリムゾンソリッドだ!」
ナツメ博士は海に停泊している青黒いモーターボートと赤黒いトラクターを指差す。
「これがあのイカしたメカに変わるのか!」
「もちろん!変形するのは怪獣が現れた時だけだがね。ここで君は様々な案件の調査に関わり、怪獣から人々を守り、シャーク君の言ったようなイカした男を目指すんだ!」
「よぅし!」
スクイドが意気込む。
「ではこれより、怪獣対策機構怪獣科学調査所の業務を開始する!」
「頑張っていこうではなイカ!」
「お互い助け合っていきましょう。」
「怪獣どもに一泡ふかせてやろうや!」
こうして、スクイドの日本滞在が始まった。
所変わって、基地から少し離れたところにある小学校。1人の女子生徒が一階のあまり人の使わないトイレで用を済ませ、手を洗っていたところ、ドアの少しだけ開いた後ろの個室から気配がした。
彼女が恐る恐る鏡を見ると、便器からおかっぱ頭に赤い吊りスカートの、穴のような真っ黒な目をした青白い顔の少女が上半身だけを出している。
「ひぃっ!」
彼女の口から悲鳴が漏れる。不気味な少女は便器から個室の外まで体を伸ばし、彼女の腰をぎゅっと掴んだ。彼女の肩に不気味な少女の顔が乗る。少女は彼女の顔の目の前でニヤリと笑い、物凄い力で便器に引きずり込もうとする。
「いやぁぁぁぁぁぁぁっ!」
彼女は洗面台にしがみついて必死に抵抗する。
「はなしてっ!はなしてよっ!」
彼女がじたばたと暴れると、腰を掴んでいた手がヌルリと離れる。彼女は泣きながら必死にトイレから出て、急いで階段から離れる。服の腰部分がぬらぬらとした粘液で濡れている。彼女の心には大きなトラウマが刻みつけられた。
調査所の始動から数日後、電話が来た。最初の案件だ。
「スクイド、君が出るんだ。」
ナツメ博士が言う。
「えっ!何で‥」
「守護怪獣の君が出れば、向こうも安心する。」
建物の海側にある穴からスクイドの方に巨大な受話器が伸びてくる。
「はい!こちら怪獣対策機構怪獣科学調査所の在注守護怪獣、ギガントスクイドです。イカがされました?」
「あの‥この近くの小学校で養護教諭をしているものです。」
30代後半の落ち着いた女性の声だった。
「最近、学校でひとりでトイレに行けない子どもたちが増えてるんです。」
「あの失礼ですが‥かけるところ間違えてます。」
スクイドは電話を切る。
「どうだ?どんな案件だった。」
ナツメ博士が尋ねる。
「間違い電話だったよ。子どもの健康相談と間違えたみたいだ。そそっかしい人もいたもんだな。」
「間違いだと?そんなはずはない。」
「でも、子どもが学校でトイレに行けないなんて、そんなの怪獣となんの関係が‥」
「最後まで聞かなかったんだろう。」
ナツメ博士が言う。
「ここに似た番号で、相談を請け負うような施設はありません。」
石見がそう言う。
「子どもが学校でクソができなくて困っとるちゅうだけで、ここに電話が来るこたぁねぇ。何かあるに決まっとろうが。」
ジェームスが言う。
「掛け直すからもう一度出るんだ。」
ナツメ博士が掛け直し、スクイドはもう一度電話に出る。
「いや、先程は申し訳ありません。イカなるご用件かもう一度最後まで‥」
「いえ、無理もありませんよね、普通なら怪獣と繋がる話ではないですし‥最近、トイレに行くのを怖がる子が増えてるんです。粗相をしてしまう子も‥」
「ふむふむ。」
スクイドは今度は真面目に聞く。
「それで、お腹が痛くなって保健室に来た子がいて、その子にどうしてトイレに行かないの?って聞いたら、花子さんがいるから嫌だ、便器に引きずり込まれそうになったって言うんです。花子さんの噂は学校中に広まって‥見た、襲われたって子も何人も‥」
「襲われた!?それは大変だ!」
「昨日、1人の男の子が泣きながら私のところに来たんです。どうしても我慢できなくてトイレに行ったら花子さんに襲われたらしくて‥腰のあたりにべったりと粘液が付着していて、脇腹に手形みたいな跡がついてたんです。後ろからものすごい力で抱きつかれたみたいな跡でした。腕と五本の指の跡がしっかり残ってました。服に着いていた粘液も採取したので送ります。どうか、解決して子どもたちを安心させてあげてください。」
「分かりました。」
スクイドはそう言った。
「一大事だ。子どもをトイレに引きずり込もうとしている怪獣がいる。」
「そらみろ重大事案じゃないか!いいかスクイドくん。どんな相談でも最後まで聞くんだ。関係がないと思えるような相談の裏にとんでもない大怪獣が関わっていることもあるんだ。重要でない相談などないと思った方がいい。シャーク君なら、子どもが悩んでいる、怖がっていると聞くだけで真面目に取り合うと思うぞ。あんな切り方をしたら、信用を失いかねん。」
「本当にイカさない対応をしてしまった‥自分が恥ずかしい‥」
スクイドは自分を恥じた。
「気を取り直して‥花子さんって誰なんだ?」
「花子さんというのは現代日本で最もポピュラーな都市伝説です。学校のトイレに現れる少女の姿をした怪異と言うのが一般的ですが、山形県では三つの首を持つ巨大なトカゲとされています。怪獣として扱われている地域もあるわけですね。」
石見が淡々と説明する、
「所謂学校の怪談というものには全て怪獣が関わっていると私は睨んでいる。シャーク君によれば、外道怪獣というものはよく子どもを狙うらしい。現代で子どもが集まる場所といえば学校だ。そこを餌場にして子どもたちを襲った怪獣が、様々な怪異として噂され、全国に広まったというわけだ。」
「そんなら学校の怪獣と呼んだほうがいいじゃねぇか。」
「まぁそうだな。」
「学校の怪談にトイレにまつわるものが多いのも気になりますね。」
「排泄の時、生き物は無防備になる。怪獣どもにとって一番獲物を狙いやすい場所だ。」
「なるほど。」
その後、保健室の先生が子どもの服に着いていた粘液と、体についた跡の写真を持ってきた。
ジェームスが粘液を調べる。
「こいつぁリョーセールイの体のネバネバだな。生臭い香りはサンショウウオのそれだ。先生よ。子どもの皮フにエンショーが出たりはしなかったか?」
「掴まれたところがヒリヒリするって言ってました。」
「すると顆粒腺から出たネバネバだなぁ。リョーセールイの皮フからでるネバネバは2種類あってだな。粘液腺から出る肌がカンソーしないようにするためののネバネバと顆粒腺から出る身を守るためのユードクのネバネバだ。詳しくセーブン分析をすりゃあ、どんな毒なのかも分かる。今後の対策に役立ちそうだ。」
ジェームスは続けて子どもの腰についた後を見る。
「この跡は‥ハイカイキノボリサンショウウオと同じ吸い付き方をしとるっぽいな。指先にある血洞っちゅう部分に血を出し入れして、吸い付く力をチョーセイするっちゅう仕組みだ。吸い付いている時に力のキョージャクが変わった跡がある。多分緩んだ瞬間があったから、子どもたちは脱出できたんだろうな。器用な怪獣じゃあなさそうだな。これで見当がついた。花子さんの正体はサンショウウオに近いリョーセールイの怪獣のカノーセイが高い。」
ジェームスは怪獣のオリジンがどんな生物なのかの推察、体構造、攻撃のメカニズムはどうなっているのかを調べることを得意としており、分泌物の成分分析にも長けている。だが、訛りの強い解説は若干聞きにくい。
「よし、ジェームスの分析をもとに対策をして学校を調査しに行くぞ。」
翌日、小学校は怪獣事案により完全に休校、生徒も教師もいない状態になった。ナツメ、石見、ジェームスは花子さんの襲撃が最も多いというB棟1階のトイレだ。理科室と図工室がある、少し不気味さのある場所で授業とトイレ以外で子どもたちが使うことは少ない。最初に襲われた女子生徒も恥じらいからこの人気のないトイレを使っていた。
「しかしな。子どもがこねぇとヤツも出てこねぇんじゃねぇか?」
「教員用トイレには一切現れていないようですからね。」
「こんな時のために特注の子どものマネキンを用意したぞ!」
「うわっ!」
ジェームスが身をのけぞらせる。
ナツメが不気味なほど精巧な少年のマネキンを持ってきた。まるで生きているようだ。
「なんといかがわしい‥」
「あぶねぇ香りしかしねぇぞ。」
「作戦のためだ!リアルである必要がある。これを便器に座らせてヤツを誘き寄せるぞ。」
ナツメは椅子にマネキンをセットする。
「クソをする時はズボンはおろすだろ。」
「それをやったら絵面がマズすぎる。それに手を洗っている時に襲われた子もいる。ズボンの有無は関係ないだろう。」
人形を座らせてしばらく待つ3人。すると、便器がカタカタと揺れ始めた。そして青白い手が出てきて、人形の尻をがっちりと掴み、無理やり便器に押し込む。人形がバキバキと音を立てて便器の中に引き込まれていく。やがて人形が姿を消した。そしてしばらくして
バシャァァァァァァァァァァッ!
便器から大量の水が吹き出し、バラバラになったマネキンが降り注ぐ。そして便器から鎌首をもたげた蛇のように、青白い顔に穴のような真っ黒な目の吊りスカートのおかっぱ頭の少女の上半身が現れる。偽物の獲物を与えられたことに怒っているのか、歯を剥き出しにした恐ろしい表情をしている。
「出やがった!」
「まさしく花子さんですね。」
「よぅし。迎え撃て!」
3人は特殊ライフルを構え、うねうねとくねる少女の上半身を銃撃する。少女の体に傷がつき、青い血が飛び散る。すると、少女の体がするすると引っ込む。そして地面が大きく揺れた。窓の外を見ると、校庭の地下を何かが移動している。校庭の地面に地割れができる。
「トレマーズみてぇなやつだ!」
ジェームスが言う。
そして体育館の屋根をを破壊して、ついに「トイレの花子さん」が咆哮と共にその全貌を表した。
ゲゲガァァァーーーッ!
少女の上半身に見えたのは、怪獣の額にある突起に過ぎなかった。その本体は藍色のイボだらけの皮膚に覆われたオオサンショウウオとチョウチンアンコウが合体したかのような四足歩行の怪獣だった。側頭部には鰓のような部位があり、目は非常に小さく目立たない。口は大きく避け、鋭い歯が大量に並んでいる。
「なんてことだ!花子さんはヤツの擬似餌だったのか!?」
「やっぱりリョーセールイだ!」
トイレの花子さん、いや怪獣ハナコサンはハイカイキノボリサンショウウオと同じ血洞のシステムを頭部の擬似餌のような部分に備えており、血液の流れを綿密に調整して送ったり、排出したりを小刻みに繰り返して細かに動かしていた。疑似餌の表情すら変え、相手に極限の恐怖心を与えて動けなくすることもできる。少女の手の部分には強力な吸い付き能力があり、獲物を決して逃がさないようにできている。しかし、この個体はジェームスの推測通り少々不器用な個体だったようで、一度もまともに子どもを捕食できたことはない。
「ジェームス、あの怪獣のオリジンは特定できるか?」
「頭の形からして、ジュラ紀のカラウルスだろうな。尾鰭から見るにギョルイの遺伝子も持ってるみてぇだ。地下水ん中で生きてきたんだろうな。そして学校のトイレを狩場にしたっちゅうわけだ。あんなもんを頭にこさえるくらいだ。主食は人間、それも子ども‥根絶やしにせにゃあ。」
ジェームスが言う。
ハナコサンは体育館の裏の山を突き破り、漁港のある街の方に向かっていった。ナツメたちは怪獣警報を発令、市民を避難させ、スクイドを直ちに向かわせた。
スクイドは小坪湾から出て、ハナコサンを迎え撃つ。
「トイレで子どもを襲うなんて‥イカさないヤツだな!」
スクイドはハナコサンを指差すように触腕を向け、そう言い放つ。
ゲギャァァァァァァァッ!!
ハナコサンは体をくねらせながらスクイドに猛突進し、カエルのように跳躍してスクイドの触腕に噛みついた。そして体を回転させて触腕を食いちぎろうとする。スクイドは抵抗するが、ハナコサンはそのままスクイドを持ち上げ、地面に叩きつけた。
「ぬわっ!」
ハナコサンは一旦スクイドから口を離すと、耳の両側にある毒線から黄色い毒液をスクイドに向けて発射した。
「ぎゃぁぁぁぁっ!」
スクイドの全身にひりついた痛みが走る。刺激性の毒だ。さらに口からは呼吸麻痺を引き起こすサマンダリンを気化させた毒霧を吐く。スクイドの鰓に毒霧が入り込み、息が苦しくなる。スクイドの体が痙攣し始める。
その時だった。毒霧の中を潜り抜け、何かが現れた。空を飛んでいたにいたのは青黒い首長竜エラスモサウルスの形をしたダイノモーファー・ブラックストリームだった。
「スクイドさん。今助けます!」
石見が駆けつけたのだ。
同じ首長竜型のアクアマリンにはないこの機体の特色は、空を飛ぶことができることだ。空を飛べる首長竜がいたらカッコいいというナツメの思いつきで作られた、プテロダクティルス型のルビーアイズに次ぐ第二の飛行戦力である。そしてコックピットにいるのは石見だけではない。石見の横では水槽に入ったヤマメのミツキが体を動かして、機体を操作していた。彼女はただのペットではなく、突然変異で高い知能を持つ、石見によって機械を操作できるように訓練された魚である。水槽の床面に設置された操作板で機体を動かしている。パソコンゲームも得意で、あるFPSゲームでは不動のランキング1位である。基本的な操縦と武器による攻撃は石見が、攻撃の回避はミツキが行う。ブラックストリームは口から空気を清浄化するファンを出して毒霧を振り払い、解毒剤を混ぜた高圧水流でスクイドの体を洗浄する。
「ありがとう。助かったよ。」
スクイドは立ち上がり、ブラックストリームと並んでハナコサンと向かい合う。
ゲガァァァァァァァッ!
ハナコサンが突進し、毒液を飛ばす。スクイドは同じ手は食わないと側転で華麗に避け触腕から氷のKエナジーを発射する。
「スクイド・レイ!」
凍てつくビームがハナコサンに当たる。
ゲギャァアッ!
その体がピクンと動く。怪獣となっても両生類。寒さには弱いらしい。
「冷気責めにしましょう!」
「あぁ!」
スクイドはスクイド・レイを連続で放ち、ブラックストリームは体をガチャガチャと組み換え、アクアマリンと同タイプの右手が銃のようになった人型機体に変形。右手についたファンを大きく広げ、冷気をハナコサンに向けて送った。ブラックストリームは空気中の水分を活かした攻撃を得意とし、気温を駆使して怪獣と戦う。スクイドとブラックストリームは冷気を強め、ハナコサンに当て続ける。ハナコサンの動きが鈍る。しかし、ハナコサンは全力を出し、スクイドに向かって突撃してくる。ブラックストリームはアクアマリンと同じように右手のエラスモサウルスの顔の部分から横からの機関銃の如き連続射撃を行う。それに怯んだハナコサンにスクイドがとっておきを放つ。漏斗からの凄まじい冷気。
「スクイドブリザード!」
それによりハナコサンの体が完全に凍りつく。
そこに
「スクイドスピアー!」
凍らせて鋭く尖らせた触腕でスクイドが突撃。凍結したハナコサンにヒビが入り、完全に崩れ落ちる。
「イカしてるねぇ。」
スクイドが決め台詞を放つ。こうして学校の怪異が一つ退治された。
その後、ハナコサン繁殖の可能性を考慮し、幼体を根絶やしにすべく小学校の近くのマンホールから地下水道に入ったジェームスは下水道で大量の古代両生類が繁殖していることを発見した。ハナコサンの原体であるカラウルス、ゲロトラックス、クーラスクス、ディプロカウルス‥生息年代も地域もまるで違う両生類たちがひしめいていた。巨大なマストドンサウルスもいる。怪獣対策機構はこれを全て保護、生態調査を開始した。両生類たちは神奈川県内の動物園で怪獣対策機構の全面監修のもと管理され、人気者になった。全国の小学校で学校の怪獣が警戒されるようになったのもこの一件からだ。ハナコサンの擬似餌部分が綺麗に残ったので、お台場のフカテレビ怪獣災害資料館で液浸標本として展示され、来館者全てに強烈なインパクトを与えている。
スクイドの日本滞在最初の事件はこうして幕を閉じた。
ギガントスクイド 亀井惺司 @gigantshark
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