星組そして従妹登場
「時間全然足りないよー」
終わるなり
そこに市川と仲の良い女子が集まって来る。
その中にこのクラス――いや学年全体でも最上級の美少女キャラがいた。
いつ見ても眩しい。アイドルとひそかに崇められるのも無理はない。ただでさえ極上の美貌なのに誰彼構わず話しかけるコミュ力と躍動感溢れる身のこなしが反則級だ。
俺はこのタイプの女子を見たことがなかった。
名は
「でぎながっだよー」
この残念な嘆きも魅力の一つだ。
高嶺の花ではなく身近なアイドル。それが
「
俺みたいなモブにも積極的に声をかける。
「うん、二十点かな」俺は平然と答えた。
「ありがとう、同士よ」
俺は肩を叩かれた。
近いな。もっと近寄ってくれても良いが。いい匂いがするし。
「なんだかんだ言いながら補習をクリアしたら
このクラスは寄せ集めみたいなものだからボッチか二人組くらいが多い。四人まとまっているグループは目立つ。香月と市川だけでも賑やかだが
そんな中、大きなボッチが手を挙げながらやって来た。
「やあやあ――ビューティフルガールズ」
こいつのことをよく知らない女子は遠目で見て顔を赤らめたり、キャーキャー嬌声をあげたりするのかもしれない。ひょっとしたら背景に薔薇の花が咲き乱れているのかも。
「星川くんにできたって訊くのは愚問よね」
「さすがにボクも最後の問題までは完答できなかったよ」
みんな引いてるぞ。
二年H組を「星組」にしようと言い出したのは星川漣だ。自分の名字にある「星」と香月星の「星」で「星組」にしようという安直な提案だったが、それは受け入れられた。
間違いなくそれは香月星の「星」だと俺は思う。
誰にでもカタカナ語で語りかけて挨拶をしまくる星川は陽キャにもかかわらずいつもひとりだった。
可哀相なヤツに見えるかもしれない。しかし可哀相かどうかは本人次第だ。本人が幸せならそれで良いじゃないか。なんてな。
しかしさすがは定期試験で二度続けて
それに比べて泉月は残念なことに俺たちの母親の頭脳を受け継がなかった。数学が苦手なのだ。
それでも総合で一位とか二位をとってきたのだからたいしたものだと俺は思う。
ひたすら毎日ストイックにコツコツと努力する。ある意味それは力技であり、脳筋の所作だった。
試験は午前二科目、午後一科目で三時には終わる。
俺は今日もまた夕食当番の責務を果たすために真っすぐに帰ってきた。
マンションの前で俺は待ち人と出会う。先ほど俺のスマホに連絡が入った。会いたいから行く――だと。
俺はマンション玄関口に悠然と立ち、周囲の視線を集める
美少女は俺を見て一瞬汚物を見るかのような怪訝な顔をしたが、はっと気づいて柔和な顔に再生した。
いやその変化は怖いだろ。
「お兄様!」美少女が俺に抱きついてきた。
やめろ! 目立つだろ。
さらさらストレートの黒髪美人は
「どうしてこんな顔をなさっているの? 探偵さん?」
「極秘任務のためだ」
「いけないわ、どこに隠密が隠れているか」
真咲は周囲をキョロキョロ見回した。
真咲を見ていた男たちがよそ見をして去って行く。
寸劇はこのくらいにしておこう。
「まあ中に入れ」
「はい」真咲は相好を崩した。
カードキーを使って玄関口を通る。そして最初のエレベーターへと移動する。
「わかりました。これはお姉様をサポートするために仮初めの姿に身をやつしているのですね」
「そんなところだな」
「気づきませんでしたわ。さすがです」すぐに気づいたではないか。
「
「そうでしたわね」
四階でまたカードキーを使って住居階へのエレベーターまで移動する。二十九階まで行くのに五分はかかる。
「楽しみですわ。お兄様お姉様のお部屋」
「来たことなかったか」
「お隣には来たことがありますけれど」
隣の部屋は叔父名義になっているらしい。使っている様子はなさそうだが。
二十九階と三十階がつながるメゾネット。それが俺たちの部屋だった。
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