第三話 コウモリ
先生の日記によると湖を越えて川を上っていったところにラニザの木を中心に建設された大きな城下町があるらしい。
「そこのお城で柔和な性格の魔法好きなお嬢様に出会った、と…」
この人なら魔導書のありかを知っているかもしれない。そうでなくても魔法に精通している人と一度話してみたい。この街のラニザの木は特に巨大で、移動中の目印になるということでとりあえず探してみることにした。
朝から飛んでいて思ったが、まるは飛行するには少し重荷すぎる。地上におりて、歩いて
いると思いのほか新しい発見があった。川の近くに宝石のように赤く光る実や、まだうらなりのようなのに腰くらいの高さまで大きく育っているアヤトバコなどに気を取られているうちに夕方になってしまった。
まるが一日中移動して疲れ果ててしまっているようなので、ここらで休むことにした。
魔法で手のひらサイズに圧縮されたテントを開き、周りに落ちていた落ち葉と木を集めて火をつける。
歩いてる時に摘んだ赤い実を鍋の中で潰し、クリームとスパイス、砂糖を加えて煮込んで甘いスープを作った。
テントの中で座って飲みながら茜色の夕日を眺めていると、血糖値が上がったせいか急激に疲れと眠気を感じたので火を消し毛布にくるまって眠った。
月が昇りきったころ、空腹で目を覚ました。横ではまるが丸くなって寝ている。テントの外に出ると、数億個の星が弧を描いて降ってきていた。真上にある月は恐ろしくなるほどの完璧な真円で真っ直ぐに地上を照らしている。
カバンからパンを取り出し、硬くなったスープの残りをつけて食べる。寝る前には感じなかった甘さで喉が焼けるようだった。
ほうきに跨って、上昇させる。夜は何もかもが静かに眠っているからこんなに孤独を感じるのだろうか。気持ちを紛らわすために少し夜間飛行をしてみることにした。
昼よりもゆっくりと低い位置を飛んで行くと頭上を大きな影が流れていった。上を見ると、数百匹はいるであろうコウモリが群れを作って飛んでいた。先頭を飛ぶ一匹が下降すると急にスピードを上げ、真っ直ぐにこちらに向かって突進しながら、眩い光を放って爆ぜた。驚いて集中が切れ、ほうきが落下しかけたが幸いコウモリが爆破する前に避けることができた。急いで周りをみると無数のコウモリに周りを取り囲まれている。ただのコウモリならそれほどの脅威ではないが、爆発するとなると話は別だ。
「 」口元でそう唱える。
目の前のコウモリが操られたように墜落していく。私はほうきを急加速させた。
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