第6話 ダメ男、閃いた
あれから俺はアパートに戻り、着替えを済ませた後、ベッドの上で腕を組んだ。作戦会議だ。
とは言ったものの、中々良い案が浮かばない。しかし、頭を回していかなければ、最適解なんか見つかるはずもなく。だから回す。思考を止めない。それらをやめてしまった時点で、そんな人間は死んだも同然だ。
「さて、と。どうしますかねえ。ない袖は振れないわけだし」
色々と考えたところで、俺はノートを開いた。俺の収支についてまとめるために。というわけで、俺はボールペンでそれらをまとめ始めた。
俺のレッスン料金は比較的高額の部類に入るものに設定されていた。ひとつのレッスンを三時間とすれば、二万六千円。つまり、十人の生徒さんがレッスンを受けてくれれば、それだけで二十六万円になる。これが、毎月の平均的な売り上げだ。
しかし、もちろん安定はしない。あくまでも、これはアベレージ。だからさっきの金額は机上の理論と言ってもいい。売り上げは上振れも下振れもする。至極当然だ。
「ちくしょう、全然足りないじゃねえか……」
足りない上に、この収入から支払うべきものも差し引かなければならない。節約すればなんとかなるかもしれないが。
だが、それは『数ヶ月をかければ』という括弧付きだ。今回は一ヶ月という縛りがある。そこが一番重要な点であり、問題点だ。自業自得ではあるんだけれど。
「あー、もう! 大木に一ヶ月って宣言しなきゃよかった……」
身から出た錆である。
正直、大木になんやかんやの理由を付けて先延ばしにすればいいだけなんだが、それでは俺のプライドが許さない。また挑発されるだろうし。我ながら面倒くせー性格だ。
が、奇跡が起こる。神は俺を見捨ててはいなかった。それが分かるのはもう少し後になるんだけれど。
まあ、先に端的に説明してしまうと、理由はブログだ。
「――試してみる価値はあるな」
昨年の九月のことだった。俺は自身で管理しているブログで『大阪に出張する』という旨をそこで発信したことがあった。すると十四名もの方々が俺のレッスンに応募をしてくれたのだ。たった三日間の中で。それを思い出した。
これは持論だけれど、俺はブログの持つ発信力や影響力を高く評価している。そして俺のブログの閲覧数は半端じゃない。現在もブログのランキングで上位に位置している。いわゆる、ランカーだ。
なので発信力がある。影響力がある。それだけではない。このブログにSNSを絡めることで、発信力をより強めることができるのだ。
「よし。明日の夕方までに記事を書き上げて投稿してみうよう」
これはひとつの賭けでもあり、挑戦だ。
しかし、この時点で確信していた。
この作戦が上手くいく可能性は非常に高いということを。
『第6話 ダメ男、閃く』
終わり
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