第3話 とんでもない世界、ワンチャン何かあるか?

——突然、見覚えのない場所に飛ばされて不安だよな。

いいぜ。その疑問、俺が全部答えてやる。


その言葉に、颯真はごくりと唾を飲み込んだ。


「まずは、この世界の話からだ。

ここは——《ネクサリア》。お前にとっては”異世界”だな」


「……ネクサリア」


耳に残る、不思議な響き。


(待てよ……異世界?)


一瞬遅れて、理解が追いつく。


(え、もしかしなくても……俺、異世界に来た?)


やったああああああああああ!


胸の奥が一気に熱くなる。

ずっと憧れていた非日常。夢想してきた“向こう側”。


叫び出しそうになるのを必死で堪えるが、

口元の緩みまでは止められなかった。


そんな颯真の様子など気にも留めず、メルヴァンは続ける。


「ネクサリアはな、’六つの世界が最終的に融合する場所”だ。

今はその途中で、四つの世界が混ざった状態になってる」


「四つ……ってことは、まだ二つ足りないのか?」


「そうだ。そして——五つ目が、お前のいた世界だ」


「は?……え。地球が?」


「そうだ」

(そうだじゃねえ、なに言ってんだこいつ?)


一拍置いて、メルヴァンは淡々と言う。


「お前の世界….地球っていうのか?はネクサリアの“五つ目の世界”になる」


……理解が追いつかない。


地球が融合する?

世界が混ざる?


「ど、どういう……ことだ?」


「まあ、すぐには理解できねぇよ。でも事実だ。

地球お前の世界にあったものすべてが、こっちに来る。

大陸も、島も、海も、生き物もな」


「……?」


「つまりだ」


メルヴァンは少し困ったように続けた。


「地球は形を変えて、ネクサリアの一地域になる。

今は異世界でも、いずれ“異世界じゃなくなる”」


「……な、るほど」


正直、よくわからない。

まあいいや

話の続きを聞きたくて、わかったふりをした。


「世界が融合するときにはな、前兆が起きる。

それが《転移災害》だ」


「転移……災害」


「大地震、天変地異。

本来いないはずの生物や物が突然現れる。

——お前の世界でも、心当たりはないか?」


あった。


あの地震。

ネットに溢れた“変な生物”の目撃情報。

空に浮かんだ、黒い影——は少しおこがましいかもしれない。


「……あった、かも」



「だろ?」


メルヴァンは、納得したように頷く。


「で——お前もその前兆の一つだ」



「……え? 俺が?」



「そうだ」


「あと、災害は個を選ばない。

多分、他にもいるぜ。お前みたいに巻き込まれたやつが」



「ふーん」



胸の奥がざわついた。

孤独じゃないと知って、少し安心して、少し落胆する。


——自分だけじゃ、なかったのか。

まあ慣れっ子だ、いつだってそうだから。


「さて」


空気を切り替えるように、メルヴァンが言う。


「お次は”能力強度0”《アビリティレベルゼロ》の話だ」


——もしかして。

俺にも、とんでもない能力が?

少しゼロという響きが不穏だが、


期待が膨らむ。

だが、メルヴァンの表情は真剣だった。


「まず前提だ。この世界の住人は、全員必ず一つ”能力”(アビリティ)を持つ」


「全員……?」


「能力の強さを示すのが”能力強度”(アビリティレベル)。

そして能力は——心の方向性で決まる」


「……思ったより、重いな」


「重いさ。それがこの世界のルールだ」


メルヴァンは続ける。


メルヴァンは淡々と続けた。


「心の向きにもいろいろあるだろ。

だから能力にも種類があってな、大きく三つに分けられる」


少し間を置いてから、指折り数えるように語る。


「まず一つ目。

—— 安定(スタビライズ)型だ」


「能力強度は、1から10まで。

数字が大きいほど、世界そのものに干渉できるようになる」


「世界に……干渉?」

(干渉?ちょっとよくわからないけどいい響きだ)


「そうだ。ただし、だ」


メルヴァンは念を押すように言った。


「レベルが高くなるほど、その能力は“固定”される。

 ちょっとやそっとじゃ、能力は変化しなくなる」


「低いうちは、変わる可能性がある」


「心の方向性が変われば、能力が進化したり、別の形になることもある」


なるほど。

思ったよりも、アビリティって生き物みたいだ。


メルヴァンは、少し声を低くした。


「そして——特別な枠がある」


空気が変わる。


「それが能力強度0《アビリティレベルゼロ》

——継承(ヘンタリス)だ」


「ヘンタ……? ゼロって……さっき言ってたやつ?」


「そうだ」


メルヴァンは頷いた。


「これは代々、異世界から“召喚”された人間。

被召喚者だけが受け継いできた能力だ」


「一度ヘリタンスになったら、死ぬまで変わらねぇ。

心の向きも関係なく、最初から与えられる」


「その代わり——」


少しだけ、口角が上がる。


「強さは別格だ。

レベル換算で7から10相当。どれも化け物級」


「……へー」

(強いのか!)


胸の奥が、期待でくすぐられる。


「じゃあ、もしかして俺も——」


「違う」


即答だった。


「お前はただ災害に巻き込まれただけだ。

召喚じゃねぇ」


「…………だよね」


期待は、きれいに叩き落とされた。

肩が自然と落ちる。


やっぱり、俺はその他大勢か。


そんな颯真を気にも留めず、メルヴァンは続ける。


「最後の一つ」


「——不安定(トレモア)型」


「トレモア……?」


「能力強度は-1から-10まで存在する」


「仕組みは安定型と同じで、心の向きで決まる。

だが真逆なのは——」


メルヴァンは、はっきり言った。


「数字が低くなるほど、世界に干渉できる」


「つよいの?」


「まあ強い、安定型よりも強い場合がある」


一拍置いて、


「だが“不安定”だ」


「-1から-6あたりまでは、まあ許容範囲だ。

安定型と大差ない」


「問題は——-7以上」


声が冷える。


「制御が効かねぇ。

強力ゆえ、依存性も高い」


「能力を使った結果、自分がダメージを受ける。

最悪——死ぬ」


「し、死ぬ……?」


「だからこの領域は、別名で呼ばれる」


メルヴァンは静かに告げた。


「”自壊デストラクションレベル”と」


「能力が、使い手を壊す。

因果応報、自業自得——それが自壊レベルだ」



「おお..」

壊れたくはないが、少しかっこいい


(…なんだよ、0強いのかよ。

ゼロとか言うから、てっきり最弱だと思ったじゃないか)


(まあ、この世界の住人は全員能力持ちって言ってた。

 能力使えるだけマシか、ゲームみたいだし)


俺だけが使えない、なんてことはないはずだ


あとは自分の能力を知るだけである


「ちなみにさ、自分の能力知る方法は?」


メルヴァンは続けた。


「ああ、自分の能力を知る方法はあるぞ」


「おお」


「今は無理だが、視る系の能力者に頼めば

名前とレベルくらいはわかる。

知人にいるけど頼もうか?」



(これは運がいい!、じゃあ遠慮なく)

「お願いする!」


メルヴァンは楽しそうに笑った。


「ちなみに俺の予想だと、霊と話せる系だな。

だって俺と話せてるし」


「うーんそれ、当たってほしくない……」

(なんて言うかザ・最強みたいなのがいい)


そんな軽口を叩いていた、その時。





「なっ——おい!」





メルヴァンの声が、凍りつく。


「後ろだ!後ろ!」


「?え」


振り向くより先に、

背中に“熱いナイフ”を押し当てられたような感覚。


「っ……!」

前につんのめるようにして倒れる


視界の端にソレが映るーー


黒い鱗。細長い体。

赤い舌。血のついた爪。

異世界だから魔物か、


さっきの平穏との寒暖差で風邪をひきそうだ


今はそんなのどうだっていい、


ただ——恐怖。


「走れ!!」


メルヴァンの叫び。


「俺を持って逃げろ! 右だ!」


考えるより先に体が動く。

抱えて、走る。


——なのに。


(……軽い?)


「なんだ?!

お前に持たれると、俺の力抜けてくんだけど!!」


そんなこと、今どうでもいい。

これはまずい!


——逃げなきゃ。殺される。


走る。

心臓が耳元で暴れる。

サイアクだ


——突然、視界がぼやけた。


(……血、出過ぎたか⁉︎)


膝が折れる。力が入らない…..!


ふと前に

影。

おそらく人、いや人であってくれ!

どうやら複数。


意識が落ちる、その直前。


俺は、声を絞り出した。

ワンチャンスにかけて


「……助けて……!」

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