憧れの異世界
第2話 異変は突然、出会いは必然?
ドカッ!』
「グハッ!」
突然、何かに弾き出されるような衝撃で目が覚めた。
「っ……痛……」
頭の奥がズキズキする。
反射的に体を起こして、すぐ異変に気づいた。
暗い。
完全な闇だ。
いつもは薄暗い程度なのに
(……布団じゃない)
背中に触れる感触は冷たく、硬い。
岩だ。
「?」
理解が追いつかない。
(洞窟? なんで?)
頬をつねる。
うん、普通に痛い。
「夢じゃない、か……」
不安になって叫ぶ
「誰かー!お父さんーお母さんー!」
返事はない、反響している
心臓が嫌な音を立て始める。
とりあえずポケットを探り、スマホを取り出した。
圏外。
「だよな」
ライトをつけると、白い光が闇を押し返した。
(光があるだけで、だいぶマシだ……)
足元を照らすと、岩肌と、湿った地面。
そして――除草剤。
「……なんでこれ持ってるんだよ」
理由は分からないが、放っておく気にもなれず拾った。
立ち止まっていても仕方ない。
スマホの光を頼りに、壁沿いに歩き出す。
ここは一体どこの洞窟なのか。
なぜ、手元に除草剤なんてものがあるのか。
そして――もしかすると異世界ではないのか?。
考えれば考えるほど、頭の中がぐちゃぐちゃになる。
あれほど非日常を望んでいたはずなのに、今はとても喜べる状況じゃない。
「……っ」
自分の足音が、やけに大きく響く。
静寂が耳にまとわりつき、不安を増幅させていく。
そのときだった。
前方の闇の奥で、淡く青白い“光”が揺れた。
「……光?」
思わず足が止まる。
洞窟の中で光があるとすれば、生き物か、人の明かりか、そのどちらか。
(まさか……人?)
胸の奥が、ぎゅっと掴まれたように締めつけられる。
気づけば、光に向かって歩き出していた。
近づくにつれ、光ははっきりと形を持ち始める。
そして――視界が、一気に開けた。
「……うわ……」
思わず声が漏れた。
広い空間。
天井も壁も、無数の青白い鉱石がびっしりと張りついている。
それらが淡く揺らめき、洞窟全体を照らしていた。
幻想的で、現実味がない。
ゲームやファンタジーの挿絵でしか見たことのない光景。
だが――そこに“人”の姿はなかった。
期待が、すっと萎む。
胸の奥が、ちくりと痛んだ。
それでも、
「……明るいだけ、マシか」
闇の中を彷徨っていた恐怖が、少しだけ和らぐ。
周囲が見える。それだけで、心が救われた気がした。
スマホのライトを消す。
(でも……この鉱石、なんだ?
見たことないし、蛍石でもこんな光り方は……)
確かめようと、一歩踏み出した――その瞬間。
「……なっ……ど……」
耳の奥に、かすれた声が届いた。
「……っ!?」
全身が跳ねる。
心臓が一気に喉元までせり上がり、息が詰まる。
反射的に、振り向いた。
そこにあったのはーー。
「うわっ!」
死体だった。
壁にもたれ、完全に動かない。
よくある冒険者みたいな風貌の
その隣に、”鬼の面が落ちている。
次の瞬間。
「びっくりした、こんなところに1人で来るとはな」
鬼の面が、喋った。
「……は?」
思考が止まる。
「能力強度0って顔だな。迷い込んだクチか?」
(待て待て待て)
敵か?
それ以前に、面が喋るってなんだ。
やっぱりなんかの夢?
再度頬をつねる。
うん、普通に痛い。
「お、お前……誰だ」
面が一瞬固まり、
「は?え、声、聞こえてんの?」
「聞こえてるけど!?」
「ま、まじか。普通は聞こえないはずなんだけどな」
軽すぎる反応に、逆に混乱する。
少し間を置いて、鬼の面が口を開いた。
「俺が誰かって話だったな。
俺の名はメルヴァン。討伐士パーティ《ヴェイルブレイド》の一員だ」
(……ヴェイルブレイド?
なんか組織名みたいな?、討伐士?聞いたことない)
首を傾げていると、メルヴァンが怪訝そうにこちらを見る。
「……あれ? まさか知らねえのか?」
「うん、分からない。
寝てたら急に弾き飛ばされるような感覚がして……
目を覚ましたら、ここにいた」
一瞬、鬼の面が黙り込んだ。
何かを考えるように、動きが止まる。
そして、納得したように口を開いた。
「……ああ、そういうことか。
俺、勘違いしてたわ」
嫌な予感がした。
「お前、被召喚者じゃねえな。
転移災害に巻き込まれて、こっちの世界に弾き出されたワケだ」
「……は?」
被召喚者。
転移災害。
ヴェイルブレイド。
聞いたことのない言葉が、次々と投げ込まれる。
(待って。情報量が多い…)
頭が追いつかない。
整理しようとするほど、疑問が増えていく。
「……なあ」
思わず、口を挟んだ。
「分からないことだらけなんだけど、
この世界は何?
被召喚者って?
転移災害って?
討伐士?ヴェイルブレイドって?
それと――」
鬼の面を指さす。
「お前は、一体何なんだ?」
一瞬の沈黙。
そして、メルヴァンが楽しそうに笑った。
「ははっ、そりゃそうだよな。
突然こんな場所に放り込まれたら、誰だって混乱する」
鬼の面が、こちらを真っ直ぐ見据える。
「いいぜ。
その疑問、全部まとめて教えてやる」
――その言葉が、
これから始まる“面倒な物語”の合図だった。
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