第4話⋯冬休み6人の旅行

■■旅の始まり、朝の集合■■


冬の朝。駅前ロータリーに、順番に6人が集まってくる。

まだ吐く息は白く、だけど心は旅行のワクワクでいっぱい。


【駅前】


百合「ふぁぁ……集合時間、30分前に来ちゃった……」


輝「いや、早すぎるだろ。張り切りすぎかよ」


百合「だ、だって楽しみだもん!輝くんと旅行だし!」


輝「……まあ、その、俺も楽しみだけどさ(照れ)」


そこへスーツケースを引きずりながら愛と明が到着する。


愛「おはよう百合、輝。早いねー!」


明「おはよう。百合は絶対早く来てると思った」


百合「えへへ! 明くんは準備ちゃんとした?」


明「完璧。愛が半分やってくれた」


愛「明って、旅行バッグもたたみ方ひどいからねぇ。いる物も忘れるし」


明「それは……否定できない」


少し遅れて、楓と優太が一緒に駅へ歩いてくる。


楓「みんな、おはよう!」


優太「おはよー。……すでにテンション高いな」


百合「だって嬉しいんだもん!6人でお泊り旅行なんて初めてだよ?」


楓「日帰り旅行は何度かあるけどね!!」


愛「そうそう。今日は、思いっきり楽しもうよ」


楓「ふふっ、じゃあ出発しよっか!」


6人の視線が集まり、自然と笑顔になる。

冬の空気は冷たいけど、この瞬間だけは少し暖かかった。


■■電車の中、にぎやかな時間■■


愛「楓〜、これ見て。旅行のしおり作った」


楓「わー、さすが愛。手作りのイラスト可愛い……!」


百合「見たい見たい!」


輝「おいおい、騒ぎすぎだろ」


百合「えー?輝くんはテンション低いなぁ」


優太「俺はこれ持ってきたぞ。カードゲーム」


明「お、やる?」


優太「すでにやる気だな。じゃあ四人で……」


楓「私もやる!」


愛「私も入る!」


結局6人全員がカードゲームに参加し、

電車の中は静かなはずなのに、6人の周りだけほんのり明るい。


百合「やった!私の勝ち!」


輝「……なんでそんなに運がいいんだよ」


百合「輝くんといるからかな♪」


輝「お、おお……(急に弱くなる)」


愛「可愛いカップルだねぇ」


明「お前が言うと説得力が強すぎる」


■■温泉街に到着、散策タイム■■


昼前に目的の温泉街に到着。


楓「わー……空気が澄んでる。温泉街っていいね」


優太「坂が多いけどな。陸上部だから余裕か」


百合「あ、見て! 温泉饅頭の店!」


輝「結局食い物かよ……買うか?」


百合「うん!買う!」


愛「あっちには射的屋さんあるよ!行きたい!」


明「……愛がいちばん童心全開だよな」


愛「明、言ったな〜?射的勝負しよ」


明「本気出すぞ」


楓「私も挑戦してみたい!」


優太「じゃあ6人で勝負だな」


射的勝負は大盛り上がり。


百合「わーん!あたらない!」


輝「貸してみろ。……ほら(見本見せる)」


百合「かっこ……! 私もできる気がしてきた!」


輝「いや、無理すんな」


別の組。


愛「よしっ、景品ゲット!」


明「早いな……俺は……くそ、外れた」


愛「はいこれ、明にあげる♪」


明「俺が勝って取ったら意味あるんだが……まあ嬉しいけど」


そして。


楓「あっ……当たった!」


優太「おお、すげぇ!楓やるじゃん!」


楓「優太が隣で応援してくれたからかな」


優太「そ、そうか……(ちょっと照れ)」


初めての旅行、みんな子供みたいに笑っていた。


■■旅館チェックイン、温泉へ■■


旅館に到着すると、広いロビーにみんな歓声。


愛「うわあ!ほんとに大きい!」


百合「見て見て!かまくら型の休憩所ある!」


輝「テンション高すぎな……まあわかる」


部屋に案内され、畳の匂いがふわり。


楓「落ち着く……」


優太「やっぱ旅館っていいな」


愛「温泉入ろ、温泉!」


百合「入りたいー!」


女子3人はそのまま温泉へ。

男子3人も別で温泉へ向かう。


【女子風呂】


百合「はぁー気持ちいい……」


愛「天井高くて開放感ある〜!」


楓「お湯の温度、ちょうどいいね……」


女子同士でこそこそ話が始まる。


愛「ねぇ……旅行って“カップルイベント”多いよね」


百合「ふふふ……夜とか?」


楓「ちょ、ちょっと!変な想像しない!」


百合「だって楓ちゃんと優太くん、最近もっと仲良くなってるし」


愛「確かに〜。インターハイから距離縮んだよね」


楓「……そ、そうかも……(小声)」


3人は嬉しそうに笑う。


【男子風呂】


優太「ふぅ……生き返る」


明「温泉っていいな。疲労も取れるし」


輝「百合が“また入りたい〜”とか言う未来が見える」


優太「それ嬉しいんじゃねぇの?」


輝「……まあ、否定はしねぇよ」


明「優太はどうなんだ?楓と」


優太「え?……まあ……その……楽しいよ」


輝「めっちゃ照れてんじゃん」


優太「うるせえ!」


男子風呂も平和そのもの。


■■雪の夜の散歩と、6人の特別な時間■■


夕食後、外はうっすら雪が降り始めていた。


楓「わぁ……雪……」


百合「超きれい!」


愛「散歩しない?みんなで!」


6人は手袋をつけて外へ。


雪で白くなり始めた温泉街は、灯りでほんのり黄金色。


■■6人で、雪景色の橋の上■■


愛「ここ……写真映えすぎじゃない?」


百合「撮ろう撮ろう!6人で!」


スマホをセットして、みんなでぎゅっと寄る。


楓「はいっ!撮るよー!」


6人「はい、チーズ!」


ぱしゃり。


何でもない写真だけど、6人にとって宝物になる。


そのあと、カップルごとの静かな時間が生まれる。


---楓&優太---


楓「今日ね、すごく楽しい」


優太「俺も。……楓と来れてよかった」


楓「うん……」


冷たいはずの空気が、不思議と暖かかった。


---愛&明---


愛「ねぇ明、雪って好き?」


明「好き。……愛と見る雪は特に」


愛「っ……なにそれ急に!」


明「素で思っただけだよ」


愛「……もう……好き」


---百合&輝---


百合「輝くん……手、つないでいい?」


輝「言われなくてもつなぐ」


百合「ん……あったかい」


輝「……お前が冷えすぎなんだよ」


百合は嬉しそうに笑った。


■■夜の部屋、終わらないおしゃべり■■


女子部屋と男子部屋は隣同士。


【女子部屋】


愛「今日の写真見る?」


百合「見る見る!」


楓「みんな表情が自然でいいなぁ」


愛「百合なんて全部幸せそう」


百合「だって楽しいんだもん!」


【男子部屋】


明「優太、めっちゃ笑ってる写真あるぞ」


優太「やめろよ!いいだろ別に!」


輝「楓と一緒だと明らかに顔ゆるい」


優太「うるせえっ!」


3人の笑い声が廊下にこだまする。


■■翌朝の帰り道、また来よう■■


帰りの電車。


楓「あっと言う間だったね……」


優太「また来たいな、6人で」


百合「絶対来たい!」


輝「百合が言うなら、まあ来てもいい」


愛「また温泉入りたいな〜」


明「今度は春とかもいいかもな」


楓「みんなで行こうね。次の季節も、次の次の季節も」


6人の視線が重なる。

それはまるで、また次の物語が始まる予告のようだった。


そして、6人の旅行は幕を閉じた。

でもこの思い出はずっと、彼らの中で輝き続ける。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る