居候後期:図書館

彼女は、一週間の多くの日をサークルに費やしていた。セックスの回数は少なくなっていた。

*

僕はその頃、昼は地域の図書館に出向いて、なんとなく目についた本を読んでいた。気もそぞろだったので、その内容は完全に頭から消えている。ただ、その表紙に綺麗な淡青の渦巻きがあつらえられた白地の本だけは、覚えている。

*

セックスの時、しばしば彼女はフェラチオをしたが、鋭い歯が亀頭に立って、痛かった。でも、特に僕は何も言わなかった。わざわざしていることに対して、文句を言う形になるのが嫌だったからだ。そしてまた、それを告げる動機となる愛がないので、さらに、無難にその場をやり過ごすことのほうを優先したので、僕は黙って耐えるしかなかった。

*

ひとつ、とてもいい思い出がある。

桜も散ったよく晴れた日、最寄りの駅のある、中央線の線路沿いを二人で散歩した。なんてことのない昼下がりだけれども、一直線に伸びる線路は清々しくて、特に橋の上から見た、架線の連なりは、遠近法のお手本の如く先へ先へと伸びていて、全てはひとところへとゆくのだという暗示を僕にもたらしてくれた。

その時ばかりは、隣のNに対して、幾分かの愛着を抱いていた。ただ、感傷的になっていただけかもしれない。

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