居候後期:図書館
彼女は、一週間の多くの日をサークルに費やしていた。セックスの回数は少なくなっていた。
*
僕はその頃、昼は地域の図書館に出向いて、なんとなく目についた本を読んでいた。気もそぞろだったので、その内容は完全に頭から消えている。ただ、その表紙に綺麗な淡青の渦巻きがあつらえられた白地の本だけは、覚えている。
*
セックスの時、しばしば彼女はフェラチオをしたが、鋭い歯が亀頭に立って、痛かった。でも、特に僕は何も言わなかった。わざわざしていることに対して、文句を言う形になるのが嫌だったからだ。そしてまた、それを告げる動機となる愛がないので、さらに、無難にその場をやり過ごすことのほうを優先したので、僕は黙って耐えるしかなかった。
*
ひとつ、とてもいい思い出がある。
桜も散ったよく晴れた日、最寄りの駅のある、中央線の線路沿いを二人で散歩した。なんてことのない昼下がりだけれども、一直線に伸びる線路は清々しくて、特に橋の上から見た、架線の連なりは、遠近法のお手本の如く先へ先へと伸びていて、全てはひとところへとゆくのだという暗示を僕にもたらしてくれた。
その時ばかりは、隣のNに対して、幾分かの愛着を抱いていた。ただ、感傷的になっていただけかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます