Log1 ビルの裏

早く来い。何故天才作曲家の僕がこの未知の生物の言う事に従わなきゃいけないんだ。


そう言いながらナナチの後に着いて行った。



「おい、人間。腹減ってないか?」

そうナナチは僕に言った。



減ってない。

何故か減ってない。そうか、クッキーを食べたからか。


「減ってても何もないんだけどな。」

そうナナチは僕に言った。

いや何も無いんかい。そう心のツッコミを入れた。


「んなー。」

そうナナチは言った。気怠そうに。



僕たちは元いたビルから出て外壁を越えて裏側まで歩いた。体感43分ぐらい歩いた。

裏側に来るまでナナチは定期的に「んなー。」と発していた。鳴き声か何かだろうか。



それか砂を「んなー。」と言っているのでは。

流石に考え過ぎか。


「あの、ナナチさん。僕たちは一体何処に向かってるんですか。」

裏側に着いたところでそう尋ねた。

「んな。あのビルの天辺に向かってるんだ。」

ナナチはそう言いながら左奥の寂れたビルを指差した。


「天辺に何かあるんですか。」

そう聞いてみた。

「ヘリポートがあるんだ。其処でお前を引き渡す。」

僕は焦った。

「ひ、引き渡す!?誰に引き渡すんですか。それにずっと思ってたんですが此処は一体何処なんですか!?鳥取?でも鳥取砂丘に貴方の様な生物は居ないし今の鳥取はもっと寒い筈だ。」

これを10秒でナナチに伝えた。要するに早口で伝えた、それ程焦った。



「んなー。」

ナナチはめちゃくちゃ引いてた。ドン引きするくらいに。僕が悪いのか。いいや。


「人間は早口だから聞き取りにくいんだ。ハヤトって言ったか?もっと分かりやすく言ってくれ。」

ナナチにそう指図された。指図されたと言うのは語弊が生まれる。

ナナチにそう言われた。これなら良いだろう。



「もう疲れたからいいです。早く進んで下さい。」

僕はそうナナチに言った。実際僕が言った事はとても気になっている。此処は何処なのかや誰に引き渡すのか。だけど一先ず置いといた。僕は人間以外と喋った事がない。ボーカルアンドロイドは別。そもそもボーカルアンドロイドを人と定義するのかそれ以外で定義するのかで話が変わってくるでしょ。本末転倒。



「んじゃあ、先に行くとしますか。」

ナナチはそう言いながら軽くストレッチをしていた。

そして次の瞬間、四つん這いになりうさぎ宛らのスピードで斜めに傾いているビルに向かって行った。



「おい人間。早くしないと日が」

喋りながら走っているお陰で最後まで聞こえずに済んだ。

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