エピローグ「陽だまりの執務室」
暁光団の事件から、三年が過ぎた。
帝国は、ミカエルと、彼を支える若き皇帝の力によって、かつてないほどの平和と繁栄を謳歌していた。
皇帝の側近として、多忙な日々を送るミカエル。その執務室の隣には、大きな窓から柔らかな陽光が差し込む、居心地の良い私室が設けられていた。そこは、ミカエルの公私にわたる最高のパートナーとなった、リオンの指定席だった。
リオンは、情報分析のスペシャリストとしての能力を活かし、今もミカエルの仕事を支えている。二人は、事件の翌年に、多くの人々に祝福されながら、正式に番となった。
ある晴れた午後。
リオンは、仕事の合間に、私室のソファでうとうとと微睡んでいた。穏やかな寝息を立てる彼の少しだけ膨らんだお腹に、ミカエルは愛おしそうに視線を落とす。そして、執務の手を止めると、静かに彼の隣に膝をついた。
「……聞こえるか? パパの声だよ」
ミカエルは、そっとリオンのお腹に耳を寄せる。まだ、小さな小さな膨らみ。しかし、その中には、確かに新しい命が宿っていた。二人の愛の結晶だ。
お腹の中の小さな命に語りかけるミカエルの顔は、皇帝の側近として見せる厳しいそれではなく、ただ一人の男の、慈愛に満ちた父親の顔だった。
その気配に気づいたのか、リオンがゆっくりと目を開けた。
「……ミカエルさん、お仕事は?」
「もういい。今は、君たちの方が大事だ」
ミカエルは優しく微笑むと、リオンの唇に、そっとキスを落とした。
三年前の、あの激動の日々が、まるで遠い昔のことのように思える。帝国の闇、裏切り、そして命をかけた戦い。それらを乗り越えたからこそ、今、この穏やかで、満たされた幸せがある。
「不思議ですね」
リオンは、自身のお腹をそっと撫でながら、ミカエルの大きな手に自分の手を重ねた。
「あの頃は、毎日が必死で、未来のことなんて考えられなかったのに。今は、こんなにも穏やかな気持ちで、新しい家族を待つことができるなんて」
「全て、君がいてくれたからだ」
ミカエルは、リオンの手を強く握り返した。
「君が、私の孤独を終わらせ、光をくれた。今度は、私が、君とこの子を、何があっても守り抜く」
窓の外では、帝都の街が、きらきらと輝いている。
陽だまりの中で寄り添う二人の姿は、一枚の絵画のように美しかった。
帝国の未来も、そして、彼ら家族の未来も、この陽光のように、明るく、温かい光に満ち溢れている。
運命から始まった恋は、時を経て、何よりも確かな、家族の愛へと姿を変えた。
彼らの物語は、まだ始まったばかりだ。
鋼鉄の冷徹上司がテロ事件から僕を庇って豹変! 隠されていたのは狂おしいほどの独占欲でした 藤宮かすみ @hujimiya_kasumi
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