第16話

 エンドゾーンの、今にも幽霊が出そうな、灰色に包まれた廃墟の中。


 2つの生物が、ぬらりと動く。

 その鼻はゾウで、目はサイ。

 足はトラで、尻尾はウシ。


 そんな不思議な生物の上には、眠気眼の明らかに

世界とテクスチャの違う、まるで絵本のようなテクスチャをした

青いパジャマを着た少年が、寝転がっていた。


 その少年が何かを察知したように

ふと、崩れかけた建物の入口の方に視線と

声を向ける。


「ひさしぶりだねー。

ともや。」


 照明の無い暗がりの道路から、青いコートの少年

メビウスと、少し怯えた様子でレミエルが入ってくる。


「相変わらずだな、バク。」


 飄々とした様子で、メビウスはバクと呼んだ 

少年へと歩む。


「デモン、ズ?!」


 レミエルが驚愕した様子で

建物の入り口に、ライフルをぶつけながらも構える。


「物騒だねー。」


 悠々と、何もせずに寝ているバクに向けられた照準を

メビウスが上へと逸らす。


「え、、、なにするの!?」


 そのメビウスの行動に、レミエルは困惑し

咄嗟に問いかける。


「こいつは、大丈夫だ。」


「大丈夫って、どういうこと?」


 レミエルが不思議に思うのも無理ははない。

 メビウスたちの眼前に居るその2つの生物は

どこからどう見ても人外の存在。

 つまり、天使かデモンズだ。


「こいつは、無害なデモンズだ。」


「無害、、、?」

 そう言い、レミエルは首を傾げる。


「そうそう。

ボクは、悪夢を食べるだけだからー。」


 そう。

 バクは確かに妖、妖怪だ。

 そして、種別がデモンズというだけだ。


 デモンズは敵、、、だけれども、幾重による調査と

接触によって出た結論、それはこういったものだった。


「少なくとも。

こいつは、敵ではない。」


「でも、こいつは、、、デモンズなんじゃないの?」


 レミエルの疑問も、無理はないことだ。

 天使であるレミエルには、目の前の存在が

デモンズであるかどうかが、感じれてしまうのだから。


「種族がそう、というだけだ。

それに、こいつにはリスクを看過して、生かしておくだけの

メリットがある。」


 メビウスの言葉に、レミエルは聞き返す。

「メリットって?」


 メビウスは、バクに視線を向けてこう言う。


「伝承とはちょっとズレてるが、こいつとこいつの従者、夢獣は

悪夢を喰らう。

そして、食料である悪夢。

つまり、負の感情の掃きだめや、集結地を検知する。

それはつまり、キョクヤの居る場所を

正確に特定できる、ということだ。」


 レミエルは不思議そうにこう言う。

「なんで、負の感情を感知したら

キョクヤの位置が分かるの?」


 メビウスはその言葉を聞くと

重い口を開け、ため息交じりにこう言った。


「デモンズは、、、

人間の負の感情の集合体だからだ。」


 それは、こう言っているのと同義であった。

人間が居る限り、デモンズが生まれてくる、、、と。

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