第6話
「やっと、やっとだ!」
薄暗い研究室で研究者が叫ぶ。
「この技術さえあれば、俺は!」
周りにある柵の中で
わらわらとまるで亡者のような影がうごめく。
そう、それは俗に言うゾンビ。
そしてそのゾンビは、紛れもなく。
デモンズそのものであった。
「この技術さえあれば
俺は!」
銃声が鳴る、前兆などなく
それが当たり前かのように。
銃弾が飛来し、男に命中する刹那、
声が聞こえた。
「行け、アイギス。」
カン、という甲高い音と共に
飛来した銃弾が、半透明の何かに阻まれる。
「メビウス。
君の行動は分かるが。
それは、、、看過できない。」
闇の中から銃弾を放ち現れた張本人、メビウスに対し
白いコートを纏い、屋根を突き破って空から降ってきた男
識別コード01、イージスはそう言った。
「邪魔だ。」
そう言って、メビウスは銃を構える。
「デモンズ技術の無許可所持、それに次ぐ利用。
確かに重い罪だ。
だが、だからといって。
この人を君が殺していいと、そう思っているのかい?」
イージスの言葉を聞き、メビウスは
一拍置いて答える。
「、、、あぁ。」
イージスはそれを聞き、悲しそうに
戦闘態勢をとる。
「そうか。
、、、残念だ。
アテナ、行くよ。」
屋根に空いた穴から、アテナと呼ばれた天使が降りてくる。
その姿は、翼を纏った古代ギリシアの女神のようであり
それに敵対しているメビウスは、まるで
人でありながらも、そうでないもののように見えた。
「了解。」
両者が睨みあうと、その隙を縫い
研究者の男が逃げ出そうとする。
その行動に、一瞬イージスの気が逸れる。
「しまっ、、、!」
だが、その一瞬の隙をメビウスが見逃すはずはなかった。
「アンカー、行け!」
メビウスの服の中から発射された、アンカーワイヤーが
天井へと突き刺さり、ワイヤーを巻き取ると同時に、
イージスを飛び越えるよう、地面を蹴って
ブランコの要領で宙を飛ぶ。
「アイギス、道を阻め!」
研究室丸ごと寸断するような巨大な半透明の盾が
突如として現れ、メビウスの行く手を阻む。
確か、同時召喚できる盾の質量は100tほど。
その上に、俺ではその盾を破るのは
一定の場合を除き、困難だ。
だが、、、いくら盾が強くとも、体の中は守れない。
出現した半透明の盾を足で蹴ると、アンカーを固定状態から戻し、
ワイヤーで巻き取りながら、イージス達から離れた場所に着地し
マガジンを特殊弾薬へと変える。
「発射モード切替 モードdecision。
座標セット・・・。」
ならば、弾丸を直接逃走している標的の心臓座標まで
飛ばしてしまえばいい。
「アテナ、彼の確保を頼む。
僕はメビウスを止める!」
イージスは手に持っていた槍、ランスカノンを
銃形態に変形させ、その大口径砲の銃身を
少しの迷いの後、こちらへと向けた。
演算完了まで、待ってくれる訳もないか。
特殊射撃モードの演算が、間に合わないことを悟り、
マガジンを通常弾薬へと交換する。
「開け、白の頁。」
まずは白の頁で未来視、初段はそれで避ける。
考えの通りに体を動かし、イージスの放った弾丸を避けた。
が、直後回避を行おうとした右方向に、強い違和感を感じ
動きを止める。
まさか、、、。
四方、全方位を盾で包囲しようとしている?
「っ、マズい!」
焦ったのには理由がある。
1つ、イージスは自身の出現させた盾を、
自由に扱うことが出来る。
2つ、イージスの出現させる盾は
とてつもなく硬度が高い。
「制限、瞬間開放!」
つまり、言い換えてしまえば
尋常なる硬さの物体によって、
相手を圧殺することも可能という事だ。
「鍵よ、解き放て!」
自身の体の内部に流れる力を、錠前を開いて
強引に、瞬間的に解き放ち
包囲が完成する前に、イージス、ひいては
殺害対象の標的まで距離を詰める。
「その技は、体に負荷が掛るんだろう。
無理をするな、メビウス。
君が力を振るうべきことは、今じゃないだろう!」
イージスの説得が聞こえてくるが
揺れる訳にはいかない。
何故か、それは簡単だ。
、、、標的を殺す。
それが、今の俺の役目だからだ。
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