第5話

 白い壁、壁、壁。

 頭がおかしくなりそうなそんな白い四角形の一室の中。


「はぁ、、、。」

 天使である私、レミエルは一人ため息をつく。


 私たち天使は、拡張次元で人の願いが集う事によって

自我を持ち、そしてこの世界に生まれ落ちる。

 人間を守るという責務を持って。


 だけれども、堕天?

とか言うのが起こる可能性があるから、この部屋から

出さしてもらえないらしい。


「いつになったら、出られるんだろう。」

ため息交じりに私がそう言うと同時に、唐突に、

部屋の外から声が聞こえた。


「俺に守護天使はいらない。」


「まぁまぁ、一度会ってみなって

悪いことは言わないから、さ?」


 そんな言い合うような声が聞こえ

少し間を開けて、扉が開く。


「さて、この子が

君の守護天使だ!」

 横にスライドして開いた扉の奥から現れたのは

仏頂面の青いコートを羽織った少年。

 そして、その横には胡散臭そうな笑みを浮かべた

メガネをかけたスーツの男が居た。


「こんにちは!」

 私がそう言うと同タイミングで、扉が閉まる。


「ほら、メビウス。

扉を閉めないっと。」


 シャーと、スライドして開いた扉の奥で

仏頂面の少年、メビウスと呼ばれたその少年は

うんざりしたような表情でこう言う。


「、、、こいつは必要ない。」


 そうぶっきらぼうに言うメビウスに

メガネをかけた男、神宮はこう問いかける。

「へぇ。

彼女に、似ているからかい?」


 その言葉を聞いた瞬間、メビウスは何か思う節があったのか、

酷く低い、底冷えするような声で一言こう言った。


「黙れ。」


 その言葉を聞き、神宮はこう答えた。

「悪い悪い、ちょっと意地悪だったかな。

まぁでも、彼女に似ているのは

一種の運命、とも思わないかい?」


 先のメビウスの威嚇とも取れる一言を

神宮は軽く聞き流し、こともあろうに

まるで挑発とも取れる言葉をメビウスに投げかけた。


「それより、だ。

目の前の彼女に、そろそろ

話す機会を与えた方がいいんじゃないかい?」


 神宮がそう言い、私の方に目線を移してくる。


「そうそう、なんで私を見た瞬間

扉閉めたの!?」

 叫ぶ私に対して、面倒くさそうにメビウスは答える。


「俺が守護天使を必要としていないからだ。」


 メビウスが話したくなさそうなことを見て

私は、話のターゲットを神宮に移す。


「ねぇ、神宮さん。

そこのメビウスって人の、守護天使になればいいの?」


 その言葉に、ピクリとメビウスが反応する。


 が、それを気にせずに2人は会話を続ける。


「そうそう、メビウスは強いんだけど

相棒を取らなくてね。

それで白羽の矢が立ったのが君ってことさ!

という事で。」


 満面の笑みで、神宮がメビウスの方を向こうとすると

メビウスはすでに、背を向けて

出ていっていってしまっていた。


「、、、あのメビウスって人。

どこかで見たような気がする。」

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