1-02 はじめてのやりなおし
俺はいわゆる転生者だ。
何が原因で死んだかは分からない。正直、死んだのかも分からない。
前世での最後の記憶は、サークルの飲み会でシマホッケを肴にビールをがぶ飲みしているところで、気付けばこっちの世界に来ていた。赤子の姿でね。
急性アルコール中毒か。はたまた恒例のトラック事故か。
死んだとしたらその辺が原因だと思う。他に心当たりがないしなぁ。
分かるのは、二十歳の大学生からノクスという赤子に変化してしまったことだけ。
まさか前世に引き続き、今世でも孤児として育つとは思ってもみなかったが、これが意外と悪くない。
なにぶん、前世ではそれほど勉強をしなかった。
環境的に塾通いは無理だったし、他の孤児もあまり勉強してなかったからね。それが当然だと思っていたんだ。
だから大学受験には苦労したし、来たるべき就職活動には恐怖すら抱いていた。
だって俺が経営者なら俺みたいな奴を欲しいと思わない。そう確信できたからね。
その辺を踏まえると、人生をやり直せるのは好都合でしかなかった。
今度はちゃんと勉強しよう。環境を言い訳にしないで努力し続けていこう。
そう心に誓い、俺はその日まで真っ当に生きてきた。
幸運にも、俺のいる孤児院は王都の一角にあり、国からの支援物資がよく届いた。
羽ペン。インク。羊皮紙。王立学園の教科書から魔導書まで揃っている。
お陰で見たこともなかった字もすぐ書けるようになったし、七才になるまでに孤児院にある本はすべて読めるようになった。
だからこそ不満に思うこともあったけどね。
前世において、俺はよく推理小説を読んでいたんだ。
しかし孤児院には一冊たりともその手の本がなかったりする。というか、おそらくこの世界には存在しない。
なんせスキルだの魔術だのと言ったものがあるからね。
前世なら物理的に不可能なトリックでも、スキルや魔術を使えばどうにかなるというケースが多すぎる。コンテンツとして成立しないんだよなぁ。
だけど俺は推理小説を読みたい。不出来なものでもいいから久々に読んでみたい。
ぶっちゃけ、たった一回すら謎解きに成功したことはなかったけどね!
あまりにも分からないから、読む前に犯人をネットで調べて、トリックだけでも推理しようと試みたが、それすらも上手くいかなかった。我ながらセンスがない。
それでも好きだから読み続けた。
どこにフィットしたかは自分でもよく分かっていない。
理知的に犯人を追い詰めてく探偵をかっこよく思えたのか。
或いは、自分の想像を超える答えを出してくる探偵に憧れてたのか。
もしくは、単純に正義というものに惹かれていたのかもしれない。
一回でも良いから謎を解き明かしてやりたいって意地になっていたのかもね。
「あー、どっかに推理小説が落ちてねーかな」
そんなことを呟いた昼下がり。そいつらはやって来た。
俺が逮捕されるきっかけとなった、貴族の視察団とやらがさ。
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