第9話 報告

「それでは、今回の件について報告をお願いします」


 冒険者ギルド本部、その一室でユウとフウアはソファに座っていた。目の前には冒険者ギルドの職員がこちらを冷静な目で見ている。

 危機を去ったと思ったら、今度はこれか。ユウはそう思うと、うんざりしてくる。とはいえ、頼まれたのでやらなければならない。


「分かりました」


 フウアはいつも通りだった。迷宮で見せた取り乱しやら疲れやらは感じさせない。さすがだなと思うと同時にユウは少し不安になる。本当に大丈夫なのか。そう思いつつも、ユウは今までのことを思い出した。


*****


 迷宮から出た後、ユウとフウアは冒険者の街を目指していた。冒険者迷宮には近くに、別の街があるが、そこには寄らずに目指して行く。理由としては、依頼が失敗したことを伝えに行かなければならないからだ。


「どんな理由でも失敗したのは変わらないからね」

「仕方ないか……」


 正直、予想が出来ないトラブルなのでどうしようもないがそれでも失敗したという事実は変わらない。まぁ、仕方ないよなと思いつつユウは歩く。


「フウア、体調は大丈夫?」

「うん、大丈夫よ」

「そっか、それは良かった」


 と言いつつも、ユウはフウアの体調が大丈夫そうかこっそり見ていた。大丈夫じゃなくても、大丈夫という奴だからだ。


「でも、冒険者の街も歩いていける距離にあって良かった」

「そうね」

「ところであのモンスターたち、外に出ることないのか?」


 扉は閉めたが、ユウとしてはそこが不安だった。モンスターがもし、迷宮外に出たらかなり大変なことになりそうだからだ。その問いにフウアは首を振る。


「それは大丈夫。一度迷宮内に住み着いたモンスターは外に出ることは無いから」

「そうなのか」


 それなら、ひとまず安心はできるなとユウは思う。とはいえ、あの迷宮これからどうするんだ。このままじゃ、冒険者が簡単に立ち入れないだろう。


「とりあえず、冒険者の街に行きましょう。そこでいろいろしようよ」


 フウアの言葉でユウは冒険者の街へと足を速めていく。そうして、冒険者の街にはその日の深夜についた。


「冒険者ギルド、この時間にもやってるのかな?」

「あそこは年中無休だからね」

「大変だなぁ」


 ユウとフウアは足を進めていく。正直なところ、ユウはもうくたくたに疲れており、休みたかったが、冒険者ギルドがやっている以上行くしかない。

 幸い、冒険者ギルドは街の入り口からはそこまで遠くなかった。夜なのに、そこそこいる人の中をかき分けつつ、ユウとフウアは歩いていき冒険者ギルドへと入る。


 そして、中に入った途端のことだった。


「フウア殿、ユウ殿、お疲れ様です。お帰りの所申し訳ありませんが、少しお話を伺いたのでよろしいでしょうか?」


*****


 そんなわけで今に至る。依頼を失敗したことを報告しようとしたら、引き留められてここに来た。どうにも、冒険者迷宮のことについて聞きたかったらしい。フウアが今日会ったことを話し始める。ユウはその説明を聞いていた。


「ようは、冒険者迷宮でも初心の森と同じ件が起きているという事ですか」


 説明を聞き終えた冒険者ギルドの職員は驚いたようにした。初心の森の件はまだ終わっていなかったとはいえ、まさか迷宮内でも起きているとは思わなかったのだろう。


「初心の森はどのくらい調査が進んでいるのですか?」


 ユウはそう聞く。今回同じことが迷宮内で起きた。なら、初心の森で少しでも調査が進んでいれば何か分かるかもしれなかったからだ。


「そうですね。原因などはまだ。しかし、一つだけ分かっていることがございます」

「それは何でしょう」

「こちらの印章です」


 そう言われ、冒険者ギルドの職員が見せたのは紙に書かれた何かの印みたいなものだった。ふと、思い出す。そういえば、これ任務を同行した時に遭遇したモンスターにもあったものだ。


「これはどこで?」

「こちらは小巨人(ジャイアント・ゴリラ)首にあったものでございます」

「そこにもですか?」

「えぇ。そう言えば、ユウ様の任務でのモンスターにもあったそうですね」

「はっ、はい」


 やっぱり、あの時のは同じ案件だったのかとユウは思う。ということは、この付近で三件も似たようなことが起きている。やっぱりこれを人為的じゃないと思うのは無理があるなとユウは思った。


「この印は転移印となります。こちらは遥か昔、千年前に使われていた物です」

「転移印……、転移できるですか?」

「えぇ。この印をつけた物を一定以内の距離範囲に転移させることが出来ます。ただ、今はこれほとんど見かけないんです」


 何でだろう、そんな便利な物だったら使えばいいのに。ユウはそう思って、聞く事にした。


「どうしてです?」

「それは約千年前にこれを作ることが盛んだった街が魔王軍の攻撃によって滅んでしまったんです。特殊な技術だったため、それ以上は……」

「そうなんですか。なんか、引き継げる人もいなかったんですか?」

「その街の貴族の跡取り息子が生き残ったみたいですが、ある時すぐに消息を絶ってしまって……」

「なるほど」


 つまり、現在では見ることがないであろう技術ってことか。何でそんな物がと思いつつ、ユウは職員の話を聞く事にした。


「ただ、それ以外はまだ何も。ちなみに、もしよろしければ迷宮内で見かけたモンスターにはありましたか?」

「えっと……」

「ありました」


 必死で思い出そうとするユウに対して、フウアがそうきっぱり言う。


「そうですか。なら、今回も同じようですね」

「これからどうするんですか?」

「とりあえず、調査できそうなレベルの冒険者が帰ってくるまでは迷宮内に関する依頼は受けないことにします」

「なるほど」


 まぁ、そうするしかないよなとユウは思う。どうやら、彼女の言い方的に調査できるレベルの冒険者は今はいないようだ。これから、どうするか。そう思いながら、ユウとフウアは部屋を出た。

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