第5話 冒険者迷宮第一層①

「暗っ」

「そうね」


ユウとフウアが中に入ると、そこはかなり暗かった。ただ、真っ暗ということはなくまぁ、灯がなくとも辛うじて見えるくらいだ。


「灯つけるね」


 フウアが魔法で灯を出す。ユウとフウアはその灯を頼りに迷宮を進んで行く。歩いていきながら、ユウは思う。にしても、すごいなフウアはと。ユウも魔法で暗闇の中を進むことは出来るが、自分しか出来ない。周りにもサポートできるフウアは凄いなとユウは改めて思った。


「ここからどうするの?」

「えっとね。普通に真っ直ぐ行くの。今日は第二層にもいく予定はないし。一層の終わりまで行ったら終わりかな」

「なるほど。どんなモンスターが出るんだ」

「えっと……、まず序盤だと……、あっ、来た」


 フウアのその言葉にユウはそちらを見る。そこには、小学生くらいの体形。醜い豚の顔立ち。そして、明らかに人間の身体つきをしていないモンスター。二足歩行の異形がそこにいた。


「あれ、オークの子供ね」

「オーク……」

「レベルは10。うん、ユウ君でも大丈夫よ」

「……頑張るよ」


 その言葉とともに、ユウは駆けだした。それと同時にオークの子供も飛び出す。手には棍棒を持っており、ユウに振りかざした。


 剣で棍棒を受け止める。レベルは下とはいえ、まぁまぁ力はある。当たりたくはないなと思いつつ、ユウは一旦距離を取った。


エア


 ユウは魔法を繰り出す。事前に保存されていた魔法の一つを放った。剣から風が放たれるが、オークはそれを素早く避けた。そして、ユウめがけて棍棒で殴ろうとする。


「風の元に斬れ────風斬りエア・カルテ


 その瞬間の隙を狙って、ユウはもう1つの保存してあった魔法を出した。前の魔法よりも威力は高い。来ると思ってなかったオークの子供の身体はもろに崩れる。


「よしっ」

「怪我はないかしら?」

「大丈夫」

「良かった」


 ユウの元に駆け寄り、フウアがほっとしたようにする。元々、ユウが出来そうなモンスターはなるべく一人でやると決めていたのだ。まだ、レベルが低い以上、頼りきりもよくないと思ったユウがそう提案したのだ。

 もっとも、ヤバそうだったら遠慮なく介入していいということにしているが。


「こんな感じのがいっぱいいるの?」

「うん。レベルとしてはこのくらいが第一層には主にいるね。終盤はもう少し高いのがいるけど。ただ……」

「どうしたんだ?」


 どこか困惑したようにフウアはオークの子供を見つめていた。どうしたんだろうと思い、ユウはフウアに聞く。


「ここにオークはいなかったはずなんだけど……」

「えっ」

「レベル的には違和感ないだけど。ただ、ここら辺は別のモンスターがいるはずなの」

「そういうことって普通はあるの?」


 ユウは聞きつつ、ふと嫌な予感がした。初心の森で起きた騒動もそんな感じだったからだ。


「迷宮なら起きないとは言い切れないかな。完全攻略されたのも千年前だから、変わってないとも言い切れない」

「そうなのか」

「うん。ただ、攻略されていない迷宮よりは確実に安全だと思う」

「攻略されていない迷宮ってそんなに危険なのか?」


 ユウは恐る恐る聞いてみる。一応、攻略されていない迷宮に入る可能性もある。そのために聞いておきたかった。嫌な予感はするけど。


「そうだね。突然、最下層にいることがあるの」

「行きたくないな……」

「まぁ、そんなことはないから大丈夫よ」


 どうやら、この迷宮は攻略されていない迷宮よりは安全なようだ。それでも。フウアも予想外のモンスターに出くわす可能性がある。あぁ、嫌だ。依頼じゃなければ、入りたくなんてない。そう思いながら、ユウはフウアと共に歩いていく。


*****


「よしっ、ユウ君は大丈夫?」

「何とか」


 迷宮に入って、何度目か分からないモンスターとの戦いを終えて、ユウとフウアは一息ついた。今のモンスター自体はユウのレベルとそこまで変わらない。が、今回に限っては魔法が使えないままだと厳しいので手助けしてもらったのだ。


「新たに魔法も保存できたし、助かったよ」

「大丈夫よ、このくらい」


 フウアはレベル的にも全然余裕そうだった。さすがだなぁと思いつつ、ユウはあたりを見渡す。少なくとも、罠のようなのは見られない。どうやら、いるのはモンスターだけらしい。その事が少し意外だったので、フウアに聞いてみることにした。


「ここって、罠とかないの?」

「千年前はあっただけどね。ほら完全攻略した伝説の冒険者一行が無くしたんだって」

「そんなことできるの?」


 ユウは驚いたようにそう呟く。もちろん、ユウにはあまり知識はない。魔法とかもよく分かっていない。が、話を聞いただけでも大分凄いことをしているのは分かった。


「そのパーティーの魔法使いがやったみたいなの。正確には罠が作動しないように魔法をかけたそう。ここの罠が単純だったから出来たことで、ほかのは無理みたいだけど」

「それでも凄いと思うよ」


 実際、そのおかげで何人もの冒険者が救われている。少なくとも、ユウはそのことで助かっていた。しかも、それが千年間続いているのだから凄いことだとユウは思う。


「まだだよね。目的のは」

「えぇ。一層の奥にいるからね」


 まだまだ道のりはありそうだなと思いつつ、ユウはふと思う。そう言えば、さっき本来いないはずのオークの子供がいた。もしかして、目的の所もそういうのがありえるのだろうか。そう思い、フウアに確かめることにした。


「目的のモンスターがいないってことあり得るかな」

「まぁ、ほかの冒険者が先に討伐している可能性はあるわ。でも、一匹じゃないし、よっぽどのことが無ければないと思うよ」

「じゃあ、そこに別のモンスターがいる可能性は?」

「さっきのオークみたいに? うーん、途中ならともかく最後の方はないと思う」


 フウアのいう事にほっとしつつ、ふと思う。そういえば、初心の森の時もあり得ないことが起きた。今回も何が起きてもおかしくはない。


「もうすぐ中盤だよ」


 どうやら、一層はまだ続く。迷宮は何が起きる分からない。だからこそ、慎重に行こう。そう思いながら、ユウはフウアと一緒に進んで行く。

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Fantasia the Wizard~ある臆病な青年が魔王を倒すに至るまで~ 蒼林檎 @callall

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