第4話 迷宮に行こう!

「次の依頼の話なんだけどね」


 ユウとフウアは冒険者ギルド本部に来ていた。街でフウアに出会った後、ちょっと話したい事があると言われて、ユウは冒険者ギルド本部に来たのだ。

 テーブルに座り、お互い飲み物を頼んだ後、改めてフウアが話し出す。


「依頼」

「えぇ。ちょうどいいのが見つかって。ただ、ユウ君がやりたいかなと思ったんだけど……、どうかしら?」

「どんな依頼なのかな?」


 まずはそれからである。ユウとしてはなるべく危険度が低い依頼が良かった。危険があることについては、この一か月で諦めた。だから、せめて危険度が低い依頼をしたかった。


「迷宮よ」

「迷宮……」

「大丈夫。もう完全攻略された迷宮だから」

「どこなんですか?」


 フウアの安心させるような物言いにユウは聞き覚えがあった。もしかしてと思いつつ、ユウはフウアの言葉を聞く。


「冒険者迷宮って所でね」

「冒険者迷宮……。たしか、ここから少し離れたところにあるらしい迷宮だっけ」

「知ってるの?」

「マエさんから聞いたんだ。ただ、軽くだから詳しくは知らないよ」


 そう言うユウの言葉にフウアは意外そうにした。まぁ、今までこの世界について全く知らなかったからその反応も仕方ないよなとユウは思う。とはいえ、詳しいことは知らないからフウアに聞く事にした。


「どういう所なんだ?」

「うんっとね。まず、迷宮について話すね。確か、まだ説明していないよね?」

「うん」

「じゃあ、ね……」


 フウア曰く、迷宮というのは大きく分けて二種類だそうだ。元々そうであるものと突如として変化したもの。迷宮とはそこ自体が迷路のようになっており、モンスターの住処ともなっている。迷宮の大体は地下に広がっており、中には遺跡が迷宮になった物もある。


「めちゃくちゃ危険じゃん……」


 ある程度聞いて、ユウはそう呟いた。モンスターの住処になっている所とか絶対に行きたくない。怖い。ユウがそう思っていると、フウアが安心させるように呟く。


「大丈夫。さっきも言った通り、この迷宮は完全攻略されてるの」

「完全攻略?」

「ようは未知の所はもうないっていう証明ね。隅々まで探索し、全てわかったらそう言われるの」

「それを伝説の冒険者一行って言う人達がやったの?」

「そうよ」


 伝説の冒険者一行。そう呟きつつ、ユウはふと思い出す。そう言えば、森の道を作ったのはその中の誰かとマエさんたちから聞いたなと。凄い人達だったんだろうか、ユウはそう思っているとフウアは微笑みながら喋りだす。


「千年前。魔王討伐に行く前に彼らが完全攻略してね。その後はもうどこにどんなモンスターがいるか、どんな仕掛けがあるか分かっているからさして問題は無いの。しかも、迷宮は三層だけだから初心者もやりやすくてね。初心者用の迷宮とも言われてるわ」

「そっ、そうなんだ……」


 とはいえ、ユウは不安だった。完全攻略されようが怖い物は怖い。だって、モンスターがいることには変わりないのだから。変わらず、不安げにしているユウの様子を見てフウアはなおも安心させるように言葉を重ねる。


「今回の依頼はその中でも一層。そのモンスターの皮を取ってきてほしいという依頼よ。モンスター自体は私たちのレベルでも余裕だから大丈夫よ」

「なっ、なるほど……」

「どうしてもいやなら、別のでもいいのよ?」


 相も変わらず怯えているユウの様子を見て、フウアは心配そうに提案する。その言葉にユウは少し考えた。マエさん曰く、迷宮は冒険者として活動するなら回避は不可能らしい。今回の依頼のは、おそらくかなり初心者用。ここでどんなのか知った方がいいかもしれない。

 そう思いつつ、ユウは怖かった。モンスターの住処とか絶対にヤバイ。怖い、出来るなら行きたくない。


 ユウはひたすら迷った。安全を取るか、挑戦を取るか。悩んだ末に答えを出す。


「やろう」

「大丈夫?」

「うん。ここでやらなきゃ駄目だと思うし……」


 心配そうに見つめてくるフウアに申し訳ないなと思いつつ、ユウはそう言う。どんなに怖くても、この後もやることになりそうならここでやった方がいい。怖い、怖いけど逃げるのも駄目だ。ユウはそう決心した。


「じゃあ、依頼の申し込みしてくるね」

「ありがとう。依頼は今日?」

「いや、明日よ。明日、宿前で待ち合わせしましょう」

「了解したよ」


 ユウはフウアに依頼の申し込みを任せ、宿へと戻ることにした。


*****


 次の日、ユウとフウアは森の中を歩いていた。初心の森でも、駆け出しの森でもない。冒険者の街とは離れた場所にある森。そこを歩いていた。


「モンスター、やっぱりいるな……」

「しょうがないよ」


 うんざりとした様子で言うユウに対して、フウアは微笑みながらそう言った。ユウとフウアがいる森は、だいたい駆け出しの森にいるようなモンスター。つまり、レベル10~20代のモンスターがいた。フウアは余裕そうだが、ユウは割と余裕ではない。


「でも、そろそろだから」

「そうなのか……」


 迷宮に行こうが、どっちみっちモンスターいるんだよなとユウは憂鬱げに思う。まぁ、とはいえ依頼を受けた以上行かないという選択肢はない。


「にしても、完全攻略されている迷宮ってほかにもあるの?」

「そうねぇ……。うん、結構あるよ。でも、まだ攻略されていない迷宮の方がいっぱいよ」

「そっかぁ……」


 ユウとしては迷宮は攻略されているのだけしか行きたくなかった。理由としては、そっちの方がまだ安全そうだったから。でも、そうはいかなそうだよなとユウは思う。攻略されていない迷宮の方が多いなら、たぶんいつかは遭遇するのだろう。


 そう思うと、余計に憂鬱になってきた。


「はぁ」

「大丈夫?」

「大丈夫。うん、なんとか」


 心配そうに覗いてくるフウアにユウは曖昧げに頷く。とりあえず、フウアの足を引っ張らないように頑張ろう。そう思いながら、歩いているとフウアがふと止まった。


「ここよ」


 フウアがそう言いながら指さしたところには、入口があった。人一人が入れるような小さな入口。木に囲まれた中に小さくあった。


「ここが?」

「そう。ここが冒険者迷宮」


 これが。ユウはじっと見つめる。これから入ることになる入口は、そこにあったのだ。

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