第19話 さぁ、冒険に出よう

 ユウは宿で目が覚めた。時刻は朝の八時くらい。昨日初めて酒を飲んだが、二日酔いのような症状はない。うん、そこまで飲まなくて良かった。そう思い、出かける支度をする。


 無事に準備終えた時だった。


「入っていいかな?」


 フウアの声がドア越しで聞こえる。どうしたのだろうかと思いつつ、ユウは大丈夫ですと言った。

 

「失礼するね」


 フウアがそう言いながら、ゆっくりとドアを開き、入ってくる。特に調子が悪そうには見えなくてホッとした。


「どうしたんですか?」

「いや、ね。今日って、予定あるかしら?」

「いや、無いですね」


 本当に無い。ユウは言われてみて気づいた。色々ありすぎて、今日の予定を特に考えていなかったのだ。

 その事を聞いたフウアがホッとしたようにしながら、口を開く。


「なら、冒険者ギルドに行って冒険者登録しない?」

「えっ、冒険者登録ですか。まだ、出来ないんじゃ……」

「とりあえず、ステータス見てみない?」


 そういえば、最後にステータスを確認したの、コオルさんたちの任務に同行した後だった。確かに、小巨人(ジャイアント・ゴリラ)を倒した後だ。もしかしたら、上がってるかもしれない。

 ユウはそう考えて、ステータスを開く。


*****


・ユウ・ハヤマ

レベル11

基礎ステータス

HP:40 耐久:35 力:10 速さ:14 魔力:?

クラスステータス

剣術:14 火魔法:0 水魔法:0 土魔法:0 風魔法:0 光魔法:0 闇魔法:65


スキル

・■■接続

レベル:100

スキル概要

■■に接続していることにより、魔法行使に対する妨害が効かなくなる。


・臆病者の勇気

レベル:30

スキル概要

自身のレベルより上の者と対峙する際に、一時的に基礎ステータス・クラスステータスが上がる。このくらいのレベルだと、+70になり、五感が鋭くなる。


魔法

・『深淵より見る■■の図書ドゥ・バブビリオ

ランク:EX

レベル:10

詠唱:なし

概要

一度見た魔法を■■が保存し、使うことが出来る。が、あくまで使えるのは一度だけ。一度使ったら、また使いたい場合は魔法行使もしくは発動の瞬間を見なくてはならない。が、それさえ満たせば魔法を保存するときに詠唱・魔法名を言わなくても保存できる。

また、保存した魔法を使用する際は必ず詠唱と魔法名を唱えなくてはならない。ただし、魔物の魔法は別。魔法の技術や火力は保存した物と同レベルになる。が、魔法数値と関係なく使える。

このレベルだと2つしか魔法を保存できない。保存できる魔法と使用回数はレベルごとに上がっていく。


*****


「レベル11⁉」


 表示されたステータスを見て、ユウは思わずそう叫ぶ。確か、最後に見た時のレベルは5。小巨人ジャイアント・ゴリラとの戦いでここまで上がっていたのか。


「あの小巨人ジャイアント・ゴリラはレベル40だったみたいだからね。そこまでのジャイアント・キリングを果たせば、そうなるよ」

「そうですか……」

「でも、これで冒険者になれるね」


 嬉しそうに言うフウアにユウはそういえばと思い出す。確か、冒険者になれるのはレベル10から。ユウの今のレベルは11。条件は満たしている。


「だから、冒険者登録ですか」

「そういうこと。行けるかな?」

「大丈夫です。行きましょう」


 出来るんだったら、さっさとやりたかった。だって、これで日本に帰る手段を探す一歩を踏み出せるのだ。もちろん、まだスタートラインに立ったくらいだが。それでも、早く帰るために、出来ることはさっさとやりたいというのがユウの本音だった。


*****


「相変わらず、いっぱいいますね」

「そうね」


 ユウはフウアと一緒に冒険者ギルドに来た。中は相変わらずにぎわっており、多くの冒険者がいた。その人混みをかき分けながら、ユウとフウアは進んで行く。


「そういえば、初心の森の件って解決したんですか?」

「何とも言えないの。少なくとも、昨日の調査では場違いなモンスターはいなかったみたいだけど」

「このまま何事もなく終わると良いですね」

「それが一番なんだけどね……」


 おそらく、まだ原因もよく分かっていないのだろうとユウはフウアの様子を見て思う。たまたま、場違いなモンスターが血迷って来たとかそう言う感じであってほしい。


 そう思っている間に登録するカウンターについた。任務のカウンターにはたくさんいるが、こちらには人がいない。一番に登録できそうだとユウは思う。


「冒険者登録する方ですね」

「はい」

「では、こちらにおかけください」


 その後、ユウはギルドの人の指示に従い、書類を書いた。もっとも、書類と言っても本当に簡単な物だった。名前とレベル、クラスを書くだけだった。


「これだけでいいんですか?」


 もっとも、住所とか聞かれてもユウとしては困るのだが。


「えぇ、大丈夫です。冒険者という職業は色んな人が来ますからね。細かい事を聞くと、冒険者になれない人が増加しますから」

「なるほど」


 ということは、訳ありの人も結構、冒険者になるのだろうか。まぁ、冒険者という職業を聞く限り、レベル10にさえなればなれるというのだから、そういう人が多くいるのも当たり前なのかもしれないとユウは思う。


「これで大丈夫ですか?」


 一通り書いた後、ユウは書類を渡した。冒険者ギルドの人は書類をちらりと確認する。


「大丈夫です。レベルも見た感じ、問題なさそうなのでそれでは冒険者の説明に移らせていただきます」

「わかりました」

「まず、冒険者というのは基本的には依頼を受ける職業です。依頼を完了した後、それに決められたお金が支払われるという仕組みです。しかし、稀にですが冒険者ギルドなどが討伐出来ないモンスターを倒したなど、依頼ではなくても冒険者ギルドが特例と認めた場合は冒険者ギルドからお金が支払われます」

「そうなんですか」

「ユウ様も後で支払われますよ」


 その言葉に何かしたかと考え、ユウは思いついた。おそらく、小巨人(ジャイアント・ゴリラ)を倒した件のことだろう。あれが特例と認められたということなのだろうか。


「依頼はあの一番奥のカウンターでお願いします。それでは、次にランクについてです。冒険者には階級がございます。S級からF級まであり、ユウ様は初めてなので、F級となります。階級を上げる方法は任務を着実にこなしていくのが一番でありますが、迷宮・遺跡攻略、魔法・魔道具の発見など冒険者としての功績が認められたら上がります」


 その説明を聞いて、ユウはコオル達が言っていたことを思い出す。依頼は名目上は誰でも出来ないが、適していないと止められる。その決める基準の1つが冒険者の階級だった。


「そして、依頼についてです。依頼は基本的に誰でも受けられるということになっていますが、レベル・階級が適していないと判断した場合は依頼受諾のカウンターでこちらから止めさせていただきます。依頼のランクはS~F。ユウ様の階級とレベルですと、FかEの依頼をおススメします」


 確か、Fが一番低いランクだったよなとユウは思い出す。まぁ、一番最初だし自分に不相応の依頼は受けたくない。それが妥当だろうなとユウは思う。


「では、以上で冒険者説明を終わりにします。どうぞ、こちらを受け取りください」


 そう言い、冒険者ギルドの人に渡されたのはケースに入った名刺のような物だった。


「こちらは冒険者の証です。これは貴方が冒険者である言う証明になり、国の中心都市と言った行き来する際に身分証が必要な場所を通る際など様々なことに役に立ちます」

「なるほど、ありがとうございます」

「では、冒険者としてのご活躍を期待しています」


 冒険者ギルドの人の言葉を聞きながら、ユウはフウアと共に冒険者登録のカウンターを後にする。活躍、できそうにないですよとユウは少し弱気になる。


「じゃあ、次はパーティー登録しまようか」

「パーティーも登録制なんですか?」

「えぇ。そうじゃないと冒険者ギルドが困るの」


 その後、ユウはフウアと共にパーティー登録をした。書類は冒険者登録の時と同じように、大したことは書かなかった。書類を提出した後、パーティー登録は完了したらしくすぐに終わった。


「早かったですね」

「そうね」

「依頼、受けてみますか?」


 もうユウは冒険者になった。自由に依頼を受けることができる。もちろん、不相応のは嫌だし、命にかかわりそうなのも嫌だが一個くらいは受けてみたいなと思った。


「私はいいけど、大丈夫?」

「大丈夫です」

「じゃあ、さっそく依頼が張ってある掲示板を見に行きましょうか」


 ユウはフウアと共に、冒険者が溢れる掲示板目指して、歩いていく。


*****


小巨人ジャイアント・ゴリラ討伐にここまでのお金が出るんですか……」

「良かったじゃない」

「まぁ、そうですね」


 ユウとフウアは森の道を歩いていた。受ける依頼を決め、依頼受諾のカウンターに行ったユウは依頼を受諾した後、小巨人ジャイアント・ゴリラ討伐のお金をもらった。価格は銀貨100枚。


「銀貨100枚あれば色々買えるよ」

「そうなんですか」


 フウアの話を聞いて、ユウはふと思いつく。ずっと前から考えていたことだった。


「なら、フウアさん。何か欲しい物はありますか?」

「欲しい物?」

「今まで色んなこと、お世話になっていましたからせめて何かお礼がしたくて」


 ユウが異世界に来てからの生活で何から何までフウアの世話になっていた。ユウはお世話になる度にずっと思っていた。何か、彼女に返せるようなものはないかと。

 お金も手に入った。今なら、何かフウアに出来るかもしれない。そう思ったのである。


「欲しい物じゃなくて、してほしい物でも全然大丈夫ですよ」

「…………」


 フウアはユウの言葉に考えるにしていた。何が良いんだろうかと思いながら、ユウは彼女の答えを待つ。そして、フウアは思いついたように顔を上げた。


「何でもいいの?」

「可能な範囲ならですが……」

「なら、もう少し気軽い感じの話し方にしてほしい」

「……気軽い感じですか?」


 予想外の言葉にユウはそう聞く。気軽い感じって、どんな感じのが良いんだろうか。


「うん。私の事も、フウアさんじゃなくてフウアがいいな。話し方も砕けた感じで大丈夫」

「それで良いんですか? 何か欲しい物とかは……」

「ううん、これが良いの」


 フウアが珍しくそうはっきりと言った。今まで恩人だったので、いつもより丁寧な言い方をしていた。でも、本人が良いというなら変えたほうが良いのだろう。


「えっと……、フウア。こんな感じかな?」

「うん。そっちが良いな」


 ユウはフウアの事を呼び捨てにした。その言葉を聞いたフウアは嬉しそうに微笑む。これだけでいいのだろうか? ユウはそう思ったが、本人の笑顔を見てまぁいいやと思う。フウアがここまで嬉しそうにしているのを見たのは初めてだったから。本人が嬉しいのなら、それでいいのだろう。


「じゃあ、依頼へ行こうか」

「そうね」


 日本に帰れるか? そんな不安が過りつつも、進んでいく。これが彼の冒険者としての始まりだった。




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