第16話 狩人の戦い
腕が軋む。自分よりも遥かに大きい身体をユウは剣で受け止めていた。これ、無理だ。そう判断し、電気を剣に纏わせる。
「はぁっ!」
そして、
「大丈夫⁉」
「……だっ、大丈夫。君は逃げて」
震えながらもそう言うフウアにユウは歯を食いしばる。大丈夫じゃないだろう。大丈夫じゃないからそんなに震えているんだろう。怯えててなお、相手を優先しようとする精神性。それに若干、腹が立ってくる。どうして、そんなに自分を優先しないだと。
「断る! 俺は自分がやりたいからこうしてるだけだ!」
そっちがそうなら、なおここで引くことは出来ない。したくもない。フウアが何といおうがだ。
ユウはそのまま敵を見据える。
剣を構え、走り出す。あちらよりに先に動かないといけない。拳を受けて分かった。あれは何発も受けれるものじゃない。だから、受け身の姿勢では駄目だ。
ユウが走り出した途端、
「Giaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa」
怒りを叫ぶような咆哮が森を轟かせる。まるで、ずっと欲しかった獲物を取られたかのように。そして、そのままユウに殴りかかる。|
凄まじいスピードの拳。ユウはそれを受け止めるのではなく、避けた。受け止めると、このまま長期戦は不可能。それは最初の一撃で分かった。だから、少しずつ攻撃しつつも、こいつの弱点を探る。
そう思い、拳を振り下ろした
「Giaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa」
「ちっ!」
が、大したダメージにはならなかった。せいぜい、かすり傷になった程度。振り向きざまに殴りかかってくる小
かすり傷は付けることができた。だが、かすり傷だけでは駄目だ。そう思っていると、ユウはうん?となる。前に戦った
ユウはそう考えるていると、思い出した。
それか? 今のところ、考えられる要因としてはそれしかない。とはいえ、どんなスキルなんだ。ユウがそう思っていると、脳内に浮かんできた。
・臆病者の勇気
レベル:10
スキル概要
自身のレベルより上の者と対峙する際に、一時的に基礎ステータス・クラスステータスが上がる。このくらいのレベルだと、+40になり、五感が鋭くなる。
どうやら、一時的にステタースを上げてくれるものらしい。有難いとユウは思う。このおかげで、戦いのステージに立てたのだがら。
次々と来る拳を何とか避けていく。一撃一撃が凄まじい威力だ。スキルで何とななっているが、それでもまともに当たったらヤバイ。そう思っていた時だった。
物凄い力がユウを襲った。
一瞬、意識が暗転する。そして、後ろに来る痛み。たぶん、木か何かにぶつかったのだろう。だが、その痛みで暗転しかけた意識が戻った。
おぼろげな意識で何とか見る。そこには、拳を握りしめ、もの凄い殺意をみなぎらせながら殴りかかってきている
「まずっ」
ユウは急いで避けようとする。が、全身を襲う痛みで上手く立ち上がれない。あっ、これ間に合わないな。本能的にそう悟る。その時だった。
「
光の矛が
「ごめん……」
「ありがとうございます!」
謝ろうとしたフウアをユウが遮る。自分が勝手に戦って、勝手に死にかけただけだ。少なくとも、フウアが罪悪感を感じる必要はない。
にしても、めちゃくちゃヤバイ威力だったなとユウは思う。吹き飛ばされた
だが、その攻撃を受けてもなお、小巨人(ジャイアント・ゴリラ)は立ち上がった。腹空いてんだから、頼むから死んでくれ。そう思いつつ、ユウは剣を構え、
ただ一点。そう言わんばかりにフウアの方へと走り出す。
こいつ、何でこんなにフウアを狙ってんだ? ユウはその姿を追いつつ、疑問に思う。このモンスターについてフウアは知っていたようだが、それはさすがにモンスターの種類だろう。少なくとも、この個体については始めてのはず。
とはいえ、その件を考えるのは後にしようとユウは考える。今は、このゴリラを殺すのが先だ。
ユウは全力で走りつつ、保存されている魔法を確認する。なるほど、新たにもう1つ増えたか。その魔法の内容を把握すると、ユウは今まで以上のスピードを出す。そして、
硬い音がした。ついたのは切り傷程度。その程度しかつかないことはユウも分かっていた。
「穿て、刻め────
その瞬間、ユウは
「Giaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa」
つんざくような悲鳴がする。現状、まともに致命打与えられる攻撃はユウにはない。だから、まず敵の隙を作れる攻撃をした。今までの様子を見ても、このモンスターに再生能力はない。視界というアドバンテージを壊せた。これなら、少しでも有利になる。そう思った時だった。
「Goooooooooooooooooooooooooooooooooo」
人知を超えた光景にユウは一瞬、思考が止まる。そして、気が付けば吹き飛ばされていた。後頭部に鈍い痛みが走る。本日二回目。正直、かなり痛い。吹き飛ばれる過程で打ちどころが悪かったのか、腕も動かすのがつらい。
上手く立てない。このまま突っ込んだら死ぬ。それは嫌だ。死ぬのは、怖い。何かないのか、死なない程度で済む方法はないのか。藁にも縋る思いでユウは魔法を確かめる。そして、そこにあった。ワンチャン出来そうなのが。
失敗したら、終わる。確実にとは言えないが、ほぼ間違いなく終わる。だけど、ワンチャンはある。死なない程度には痛い。痛みも怖い。だが、死ぬのよりは遥かにマシだ。覚悟はとうに決めた。少なくとも、戦う前から。
なら、やるしかない。ユウはそう思う。
狼と兎。今の2人は例えるなら、こうだ。目の前で怯えている無防備な獲物に
だから、気づかなかった。
先に邪魔者と蹴散らした青年が、
彼の保存している魔法は現在2つ。1つは
ユウの身体はすでに満身創痍というべき状態だった。そんな身体では、ろくに追いつくどころか動かす事が出来ない。吹き飛ばされたことによる痛みはもちろんあるが、まぁ死なないならいい。
そして、ユウはそのまま狙った通りに
もう1つの魔法、それはフウアが先に発動させた魔法だった。“光る三輪の
フウアが見せたように威力は強大。だが、難点が2つ。1つは魔力消費が激しいこと。もう1つは術者の状態次第では、身体がボロボロになることだった。ユウはなる状態に当てはまる。
だが、いい。
ユウは痛いのは嫌いだ。極論、そんな状態にはなりたくない。だが、それでもだ。死ぬか瀕死かだったら、ユウは迷わず瀕死を選ぶ。何があろうと死にたくないのだ。
この魔法のいい所としては詠唱が不要な所だった。モンスターの魔法ではないのに、詠唱がいらないらしい。だから、
そして、さらに好都合なことにあの
もっとも、フウアを執拗に狙っているというだけで胸の奥が燃えそうになるのだが。まぁ、それは一旦置いておこう。
ユウは魔力を流し、標的を狙う。チャンスは一回、これを逃したらもう次はない。
だから、気づかない。今にも殺そうと構えている
「
ユウは魔法名を叫ぶ。そして、そのまま光の矛を叩きこんだ。
フウアに神経全てを注いでいた
「Gaaaaaa……、gaa」
小さい断末魔を上げる。ついに狙っていた獲物には届かず、モンスターは息を引き取った。
そして、それと同時にユウも倒れた。元々壊れた身体にさらに負荷をかけたのだ。小さな悲鳴を聞きながら、ユウは意識を失っていく。
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