1-2.増え鬼の鬼って楽しいよね

木村がドアを通った。

その瞬間に、俺たちはあまりにもまぶしすぎる光に包まれた。


はっ、と目覚めた。

あの光はなんだったんだ。皆は無事なのか。そもそもなんであんな光が――

そこまで考えた所で辺りの景色が目に飛び込んできた。ひたすらに白い空間。穢れ無き空間。影が無いからか無制限に広がっているようにさえ見える。その景色はさながらホワイトアウトだ。出口なんてものは見つからない。

そして周りには倒れているクラスメイト達。

…どうしてこうなった。


『おっ、お目覚め第1号じゃあないか!やっほー?聞こえるかい?』


どこからか、キーの高い、女の子のような声がした。


『おーい少年ー、聞こえてるのかーい?』


聞こえてはいるがどう返事するべきなのだろう。周りを見渡しても周りの人はまだ起きない様子だ。


『困っているのかい?とりあえず、ボクの思念が聞こえているなら3回手を叩いてくれよ』


聞こえているので手を指示通りに叩く。


『OK、OK。【念波】の調子はバッチリらしいな』


ね、ねんぱ?それは一体何なんだ。


『あー、済まない。そこらの説明を一切していなかったのを忘れていたよ』


まず何でこんな事になったのかを説明して欲しいのだが。


『その説明についてはみんなが起きてからさせてくれ。時間がないんだよ』


いや、待て。そもそも何で俺の思念が読み取られているんだ。


『おっと、まずそこか。もうちょいとツッコむところあると思うんだけど。まあいいや、なぜボクが君の思念を読み取れているか、だね?それは君がさっきボクの出した条件に従ったからだよ』


条件、ってあの3回手ぇ叩けってやつか。


『そのとーり!感がいいガキは嫌いじゃないよ?』


はがねの錬金術師?なんで日本のサブカル知ってんの?


『まあそこは置いといてもらって、君にはまずみんなを起こしてもらおう!肩を揺さぶればみんなすぐ起きるぜ』


はいよ。今更逆らった所で何もできない。だったらとりあえず指示に従ったほうが賢明だ。


『素直な奴は嫌いじゃないよ!』


ちょっと作業終わるまで静かにしといてもらっていいっすか。


『はい』


まずは言われた通りに肩を揺さぶって、近くにいた預を起こす。目が覚めるまでに少し時間がかかったが、起きたら目がしっかりとしていたので睡眠というより気絶のほうが近いか。そんな事を考えていたら、


「おい時雨!これどうなってんだよ!」


と興奮した様子で聞いてきた。

(俺にも分からん)と答えようとしたら


「つまりこれ異世界転移ってやつじゃないのか!?」


と嬉しそうに言ってきたので、とりあえず落ち着かせて、俺にも状況が把握しきれていないこと、よく分からない思念が頭のなかにダイレクトで送られてきて、みんなを起こすよう命じられたことを説明した。


すると、預にも思念が送られてきたらしく、すぐにみんなを起こす作業に協力してくれた。こういう、飲み込みが早いのもコイツの良いところだ。適応力が高いと言うべきか。


それから、預と一緒に皆を起こしていった。途中からは起こすだけ起こして状況説明は後回しにしたのでだいぶ作業効率が上がった。しかも起こしたやつも協力してくれるのでありがたいことこの上ない。ネズミ算式というのだろうか。気分は増え鬼の鬼だ。


先生を含む計38人を起こしたとき、またあの声がした。


『みんなを起こしてくれてありがとよ!時雨君!』


悪役のセリフにしか聞こえないのですが。


『みなのものー!よくぞ集ってくれた!』


俺はこの十数分で慣れてしまったが、初めて思念を受け取ることに、混乱した皆が一斉にざわついたが先生が鎮める。


『それじゃあ全員、手を1回叩いてくれ!』


おい俺の時より叩く数少ないのはなんでだ。


『そこは置いといてもらって…』


特に理由はなさそうなので置いとく。皆で手をたたく。


[あー、あー、聞こえるな?]

すると物理的にあの声が聞こえるようになった。

[ボクの名前はジスト。諸事情で姿は見せられないのは勘弁してほしい。


さて、まずは謝罪から入ろう。急にこんなことにしてしまい、こちらとしても申し訳ない。君たちには思うところもあるとは思う。


ただ、この場所を提供できるのは24時間と決まっているため、端的に状況を説明したいから口は挟まないでもらいたい。君たちを召喚してから今まで既に半日以上が経過しているからあまり時間がないんだ]


それまでとは違っていきなり堂々とした真面目な口調になった。アンタそんな話し方できたんだ。


[君たちがここにいる理由は一言で言うならいわゆる異世界召喚だ]


(預がこちらを向いてあからさまに顔をほころばせた)


[というのもボクの管理している世界のバランスが崩れかけているからなんだよ。


ボクが管理している世界は魔獣や人族、そして魔窟ダンジョンなどの自然が共生していて、お互いのバランスを保ちながら生きている。


だが最近は人族のキャパシティを魔獣や魔窟がオーバーしてしまっていて、奥の手である召喚サモンに頼らざるを得なくなったのさ。異世界人は強い異能スキルを所持していることが多いからね。


ただし召喚したのはボクではなく、ボクが管理している世界の住人だ。だが召喚された異世界人の皆がみんな、とても強い異能を手に入れるわけではない。だからここで強くない異能を持つ人を間引こうと思っている。]


ここまで言った所でみんなが一気に不満と恐怖の声を出した。


「おい、間引くってどういうことだよ!」


「弱い奴らは死ねってのか!?」


「やだよ、私死にたくない」


みんなが抗議するのも当たり前だ。死ぬなんて俺もまっぴらごめんだしな。


[間引くと言っても死んでもらうわけではないから安心してほしい。いや、死ぬには死ぬが死ぬわけじゃない]


どっちだよ。


[説明を終えたら、皆には【異能覚醒スキルアロウズ】を受けてもらって異能を目覚めさせたあと、【異能板スキルボード】の使い方を伝える。その後、ボクがここに作った迷宮ラビリンスに挑んでもらって、そこで死んだ人は元の世界に帰ってもらう。


あ、詳しい理由は後で言うけど、あっちの世界では異能は使えないよ。あと、元の世界に戻るって言ってもここの記憶は消させてもらって、君たちが召喚されなかった世界線に送るから安心してね]


いろいろと説明が突飛だったこともあって分かりづらい。


[分かりづらいか。それなら思念で送ってあげよう]


そう言われた瞬間に、脳内に図が描かれた。


ジスト

 ↓管理

異世界

↑ここには大きく分けて人族、魔獣、魔窟ダンジョンがあるが、これらのバランスが崩れて『魔物飽和暴走スタンピード』が起きそうになっている。


→強い異世界人を召喚サモンして解決してもらおうと人族が自主的に召喚の儀式を行った。


→ジストもこのままバランスが崩壊するのは望ましくないが召喚者が皆強いわけではないため、召喚に干渉して神域に招いて弱いやつを間引き、送り込む。


→弱者を間引くために異能スキルを使って迷宮ラビリンスを攻略してもらう。脱落死亡した者は記憶と異能を消した上で元の世界の召喚されなかったパラレルワールドに送る。


人族→魔獣   護身や経済発展のための狩猟

魔獣→人族   捕食

魔窟→魔獣   一部を生産、色々なものの収集

人族→魔窟   経済発展のための探索、魔獣の間引き

魔窟→人族   成長のための魔力、精気の吸収

魔獣→魔窟   住処、一部が生産される


…図式化すると意外と単純なものだが、なんか言われてなかった情報がかなり追加されている。ちゃんと読まないといけないということか。あと送られたあとに思考が動くのに時間が割とかかった。無◯空処って多分これの上位互換。


[と、いうわけで!皆の異能を発現させていきたいと思いまーす!]


毎度毎度思うけどアンタ急展開すぎない?


―――――――――――――――――――――――――

こんにちは!作者の ちどりふで です!

初めての作品になるので文章が拙い所がありますが見守ってくださると嬉しいです!

誤字などはコメント欄で教えていただければ訂正します。

他にも感想などがあればぜひコメント欄に書いてください。★とフォローもよろしくお願いします!


ジストさんは基本的にめんどくさいことはすっ飛ばす人(?)です。あと今回はみんなを召喚してから時雨くんが目覚めるまでに15時間くらいかかったことで時間がないのも説明の少なさに拍車をかけています。


次回、「異能覚醒」。乞うご期待。

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