第6話 婚約破棄

「もう我慢ならん!父経由で国王に直訴してくる!」


 マイラが言った。こいつの家は貴族だが、そんなことができる身分なのか?


「ダメです。事を荒立ててはなりません」

「ですが、このままでは……!」

「私が直接王様に言います。アルト、マイラ、ついてきてください」


 俺とマイラは聖女様についていった。約束はしてないけど大丈夫か?俺たちは謁見の間に着いた。


「ん?ソフィアか。何か用か」


 威厳のある男が玉座に座っている。国王イアン八世だ。


「王様、今日はお願いがあって参りました」

「おう、何だ?何でも言ってみよ」

「第一王子殿下との婚約を破棄していただきたいのです」


 国王の眉間に皺ができた。


「何故だ?仲が悪いのか?」

「第一王子殿下は私の事が嫌いなようで、会うたびに平民とかここから去れと言われます」

「ふむ、それぐらいでは婚約破棄は認められんな」

「今日も私の護衛であるアルトが鞭で攻撃されました。私の回復魔法で治しましたが……」

「ふむ、公衆の面前でか?」

「はい」

「これ、バランを呼べ」

「はっ」


 国王は第一王子を呼んだようだ。


「父上、何か用ですか。……ソフィアもいるのか」

「お前、ソフィアの護衛を公衆の面前で攻撃したらしいな」

「ソフィアの回復魔法を見ておきたかったのです。護衛を攻撃したのは護衛がソフィアを庇ったからです」

「お前、婚約者を攻撃したのか!」

「婚約者と言えど、平民ですよ。打たれた護衛も平民です。何か問題が?」


 国王は頭を抱えてしまった。


「私は教育を間違ってしまったのかもなぁ。何故このような尊大な男になってしまったのか……。家庭教師と取り巻きのせいか」


 国王はぶつぶつと独り言を言った。


「あいわかった。聖女ソフィアと第一王子バランの婚約は白紙とする!」


 第一王子が驚愕している。


「父上!ありがとうございます!僕は平民と結婚するのが嫌だったんですよぉ!いやー良かった!」


 国王が立ち上がってバランを殴った。第一王子は吹き飛んだ。


「ぐ……、ち、父上……?何故?」

「聖女との婚約は次の王太子候補に必要な事なのだ。それもわからずに聖女を平民などと貶し攻撃した。お前は私の期待を裏切ったのだ!」


 第一王子が王太子候補だったとは……。国が滅びるぞ。


「ソフィアよ、下がってよいぞ」

「はい、失礼します」


 俺たちは謁見の間を後にした。

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