第5話 鞭

 う……、頭が痛い。昨日は飲み過ぎたっぽいな。どうやってここに辿り着いたのかその記憶が無い。うおっ!ベッドの隣でジャンヌが全裸で寝ている!あちゃー、俺ジャンヌと寝ちまったのか……。何という節操の無い下半身だ……。それよりも、聖女様の護衛だ!まだ間に合うはずだ!


「ん……、アルト。行くのか?」


 ジャンヌが起きだした。


「ああ、ジャンヌ。俺は聖女様の護衛に行くぞ。じゃあな」


 俺は服を着て、王宮に向かった。


「あっ、来ましたね」

「アルト!遅いぞ!うっ、酒臭い!」


 聖女様とマイラはもう教会に行く準備を終えていた。俺待ちだったようだ。


「へへっ、聖女様。俺二日酔いで頭ガンガンしてるんだ。治してくれ」

「キュア」

「ありがとうございます」


 聖女様に二日酔いを治してもらった。


「聖女様を便利扱いするな!」


 マイラは怒ってばかりだな。俺たちは馬車で教会に向かった。いつものように聖女様の進路を確保し、聖女様が回復魔法をかけるときは守ってやった。今日の仕事もなんとか終わったようだ。


 王宮に着いたらまた第一王子に遭遇した。


「平民!何故僕の行くところにいる!目障りだ!」


 第一王子が聖女様に言い放った。こんな奴が婚約者なんて王様は何考えてるんだ?


「それでは失礼します」

「ちょっと待て」


 聖女様が去ろうとしたら呼び止められた。第一王子は鞭を抜きながら言った。何故鞭を持っている?


「お前、回復魔法が使えるのだろう?それを見せてみろ」


 第一王子が鞭を振った。いけない。俺は聖女を庇った。バシン!


「ぐうっ!」

「ふむ?護衛か。確かAランク冒険者だったな」


 バシッ、バシッ、バシッ!


「ぐっ、うっ、はっ……!」

「アルト!」


 俺は背中で鞭を受け止めた。服と肌が裂けて痛い。


「さぁ、回復魔法を見せてみろ」


 俺は床にうつ伏せに寝た。


「……ハイヒール!」


 背中に暖かい物を感じる。もう痛くない。


「ふはは、良い物を見せてもらった。もう行っていいぞ!はっはっは!」


 俺たちは第一王子の機嫌が良いうちに退散することにした。


「アルト、大丈夫か?」


 マイラが俺を心配している。


「アルト……ごめんなさい」


 聖女様が泣いている。


「これが俺の仕事なんでね……。聖女様、泣くなよ」


 聖女様は泣き止まない。第一王子め……、いつかギャフンと言わせてやる。

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