第11話
半人半魚の怪物に向かい棗達が歩いていくと、気がついたそれらが大きく口を開き唸り声をあげ威嚇を始める。
棗はやはりと納得し左でショットガンのハンドガードをもち銃口を向けた。
「ま、ゴブリンとかどうみても哺乳類だがアイツラは両生類だもんなぁ。友好的なわけねぇか。んーじゃ華音、マコこのまま15ヤードまで距離を詰める。そこからはハッピータイムだ。」
: ハッピータイムってなんだよあたまトリガーハッピーかよ。
: 棗はどうみてもトリガーハッピー人種だよ。
: テキサス育ちもんなぁ。
: テキサスへの風評被害。 まぁテキサスと言ったら銃と陽キャとテキーラのイメージだが。
銛を持ち唸り声をあげ棗達に半魚人達が迫ってくるが棗はゆっくりと人差し指をトリガーガードの中に入れトリガーを引いた。
ゴブリンの時とは違い成人男性ほどの体の大きさを持ち鱗に覆われた身体を持つ半魚人だが、前後左右に動く人間のような体格のため身体の前面は比較的鱗がなく防御力が低いため後方へ抜ける衝撃で鱗を弾けさせながら身体を穿たれ倒れる。
そして棗の発砲とともに華音も発砲しており腹部に二発胸に三発更に頭部に一発と確実に仕留めた。
「ふ、はひ⋯⋯こわいっ こわいっ」
マコは薄っすらと涙を目に浮かべているが、身体を震わせたり逃げ出すこともなく教本通りの射撃スタンスをとるとゆっくりと確実に一発ずつ連射することなく撃ち込んでいた。
華音ほど素早く撃たないマコは腹部に一発確実に当て動きを止め胸に一発致命打を叩き込みそして最後に頭部に撃ち込み弾の消費を抑え確実に倒していくがその速度は棗が三匹、華音が二匹の半魚人を倒したのに対し一匹とかなりゆっくりとした動きだった。
「おし、クリア。マコいい動きだ。華音もえらいぞ。」
棗はゆっくりだが確実に的確に撃つマコのスタイルも、素早く弾を多く使っても確実に殺す華音のスタイルもどちらもありだと思っている。
コレが相手も銃を持っているとなれば話は別だが、相手は木製の粗末な銛しか持たない知能も低そうな半魚人だ。
どんなやり方でも今は確実に生きている的へ銃を向け引き金を引き命を奪うことが出来れば問題はないと考えていた。
(しかしなんだ、あのマコがモンスターとはいえ躊躇なしに引き金を引けるか? いくら料理で魚から内蔵をえぐり出したり動物のモツをぶつ切りにしてるからってこれを見て平気なメンタルだったか?)
一瞬だけ棗の脳裏にこの世界へ転移する時に女神に何かされたのではないかという考えがよぎるが棗からすればナイスなサポートであり感謝こそすれ恨み言を言う気はなかった。
「マコと汐路は周囲の警戒。華音はアタシから少し離れたところでバックアップ。アタシはこの半魚人の死体を調べる。」
: いやだから、どこの兵士だよ。棗のメンタルやべぇよ。
: 手際良いなぁ。マコちゃんも一発一発は遅いけど確実に当ててるし。
: 遅いのか? 普通くらいじゃないの? 棗と華音が早すぎるだけなんじゃ?
: いや、華音ちゃん腹に2胸に3頭に1の計六発 一発多いけどビルドリルのスコアから計算するとそんな早くない。早いやつはもっとはやいぞ。
: でもあれはサークルだろ? 華音ちゃんは腹に胸、頭部とサイティング変えてるんだから十分早いと思う。
: 棗はショットガンだったけどアレは早いほうなん?
: 普通。The普通。というかショットガンの場合リロードをみたいかな。
: 因みに棗のビルドリルの成績は華音ちゃんよりだいたい上回ってる。下振れた時の成績が華音ちゃんのアベレージってくらいかな。
: ほぇーバズったから見に来てるワイと違い古参は詳しいな。ところで古参達は銃を撃ったことあるん?
: 古参は結構あるんじゃね? 棗達抜きでオフで集まってグァムのシューティングレンジ行ったとか聞いたし。ちなみにワイは古参だけどエアプ
足元の石を拾いながら近づき倒れた半魚人に投げつけ確実に死んでいるかを確認した棗は一番近くにいた半魚人の側にしゃがみ込むとショットガンを背負い、マチェットを引き抜きその死体へと振り下ろす。
まるで金属にうち当てたような音共にマチェットが弾かれ衝撃で何枚かの鱗が身体からこぼれ落ちるのを見て棗は目を細める。
「硬っ こいつピラルクとか古代魚みてぇな固くて分厚い硬鱗があるな。特に背中や腕や足の外側に。そういやぁ南の方じゃ硬鱗を削って民芸品とかを作るんだったか? なら異世界産半魚人の硬鱗なんてのも売れるかもな。」
そう口にするとお腹や関節部からマチェットを突き刺しその反対側に存在する鱗を内部から押し剥がし始める。
バキバキと音を立て鱗が剥がれ落ちそれとともに大量の血とこぼれ落ちた内臓が周囲を汚しムワッとした生臭い匂いが辺りに立ち込めていく。
「なっちゃん。 あまり時間かけてられないと思うよ? かなり臭う。」
「だな。 この一匹からぶち抜いた硬鱗だけでいいか。あとは魔石ってのを探してぇところだったんだが⋯⋯。」
これ以上は血の匂いで新たなモンスターを呼び寄せてしまうと断念した棗はベルトに付けたポーチから丸めたビニール袋を1枚取り出しそれに剥がした鱗を拾い集めて入れマコたちの元へと戻っていった。
「おう、異世界産とれたてホヤホヤの半魚人の鱗だ。あとで汐路のフリマで販売するぜ。南の方じゃピラルクだかアロワナだか忘れたが硬鱗を削って民芸品を作るらしいからコイツでもなんか作れるかもな。」
: モン狩りとかのゲームなら序盤の鎧とか作れそう。
: マチェットを弾いてたし鱗で出来た本物のスケイルメイルが作れそうだよな。
: まぁ銃弾は防げそうにないけど。
: 銃弾はまあ止めたところで衝撃がダイレクトで伝わるだろうからどちらにしても大怪我するだろうが。
「おう。腹とか胸にあたった9mmはホローポイントだったし背中側の硬鱗を撃ち抜いてはいなかったな。22口径や32ACPじゃこの鱗は撃ち抜けねぇだろうな。こりゃまじで5.56や7.62mm それどころか12.7mm⋯⋯50BMGが必要かもしんねぇぜ。お? そうだそろそろ昼か? さっさとここから離れて楽しい楽しい銃選び談義でもしようじゃねぇか。」
棗がそういいながらにこやかに笑うと汐路は棗達を見ながら頼りになるけどコレについていけるかなと呟き、リスナー達に励まされていた。
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