軋み

白川津 中々

◾️

 彼女を好きな事に変わりはないが、それでも……

 


「なんで、何もしてないの?」


 洗い物も洗濯もされていない部屋を目の当たりにし、思わずそんな言葉が出てしまった。


「後でする予定」


「今日休みだったでしょ」


「うるさいな。やるからいいでしょ」


「二人で暮らしてるんだからさ。もうちょっと気を遣ってよ」


「やるって言ってんじゃん。何がダメなわけ?」


「帰ってきてこれだけ散らかってると、嫌だよ」


「じゃあそっちがやればいいじゃん。気になるなら」


「それだと、家事分担の約束がめちゃくちゃになっちゃうけど」


「知らない。もういいよ。今からやるから」


「投げやりにならないでよ。一度話そう」


「……」


 無言で洗い物を始める彼女から目が離せず、僕はずっと、立ち尽くしていた。どうしてこうなってしまったのだろうかと考える。やはり僕が黙って洗い物や洗濯をして、「まったくもう」と笑っていればよかったのだろうか。しかし、そんな不誠実に、気持ちや感情を隠すように接するのは……


「突っ立てないでよ。邪魔だから」


「ごめん」


 彼女の声に心臓が激しく軋んだ。

 それでも僕は、まだ、彼女を好きでいる。

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軋み 白川津 中々 @taka1212384

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