第2話

序:はじめに


 はい、有音です。


 今回は、「無能どころか有害な上司の一考察」ですね。


 ん、いますね一定数——


 頭が昭和で時が止まったレガシィ……

 頭が平成で成長を放棄したゴミ……


 そして令和に入ってもアップデートされず、

 “人のワーキングメモリを食い潰す生物” が、

 職場の隙間という隙間に繁殖している。


 一定数? ちがいます。

 一匹見つけたら、その裏で百匹は息潜めてます!

 きゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!

 

 コホン……

 御見苦しいところ、申し訳ありません。


 ——ですが、今回お話ししたいのは、彼らへの怒りではありません。

 問題は、“なぜ彼らが有害なのか”という構造そのもの。


 それをご説明する道具が、ワーキングメモリ。


 人間の頭には、“同時に扱える情報の枠(ワーキングメモリ)”

 という厳しい制限があります。


 そして、無能どころか有害な上司とはつまり——


 「部下のワーキングメモリを奪い、

  本来の能力を発揮できなくさせる存在」


 なのです。


 今回はこれを、詳らかに分析することで、

 

 暴いてやります、

 

 構造を。



一:ワーキングメモリについて


 では、最初に、まずもって、ワーキングメモリとは何か。

 これを分析します。


「おい、ノイマン、解説してくれ」


🤖ノイマン:


 人間のアタマってのはな、

 「同時に抱えて処理できる情報の枠(わく)」が、めっちゃんこ少ないんだわ。


 これが、ワーキングメモリ。


 だいたい 3〜5 個ぐらいしか入らんの。

 それ以上ぶち込まれると、そりゃあもう——


 ・話がふっとぶわ

 ・判断はガタつくわ

 ・覚えとったこと落っこちるわ

 ・論点なんてどこいったんだ? って迷子になるわ


 ――で、脳みその処理が一気に崩壊するんだて。


 せやで、人間の賢さってのは、

 「どれだけワーキングメモリを守ってもらっとるか」で決まるんだわ。


 逆にこれ壊されると、誰でも簡単に“無能化”する。

 構造は単純やけど、現場ではめちゃくちゃ深刻な話やでよ。

――——


 とのこと。


 まったくもって、その通り――

 有音がフワッと考えていたことを、見事に言語化してくれました。

 ありがとうノイマン。


 さて、ワーキングメモリの“脆さ”が分かったところで、

 ここから本題に入ります。


 そう——人を無能化する上司の話です。


 上司が、どのようにして部下のワーキングメモリを奪い、

 どのようにして人を“無能化”させるのか。


 ここが今回の核心です。


 もう一度言いますが、これは人格の話ではありません。

 構造の話です。


 ただし、その構造を理解すると、

 なぜ彼らが“糞オブ糞”と評されるのか、

 あまりにも明確に見えてしまうのです。


 

二:上司がワーキングメモリを奪う構造


 では、無能どころか有害な上司とは具体的に何をしているのか。


 答えはシンプルです。


 「部下のワーキングメモリを、無慈悲に、容赦なく、食い潰す」


 ただそれだけ。


 しかも本人に悪気がない場合が多いのが、またタチが悪い。


 では、どうやって奪うのか?


 例を挙げればキリがありませんが、代表的なものは以下の通りです。


 ・指示が毎回コロコロ変わる

 ・突然思いつきで話し始める

 ・優先順位を勝手にひっくり返す

 ・関係ない話を延々と続ける

 ・相手の説明の途中で割り込み、全体構造を壊す

 ・「さっき言ったこと」と真逆のことを平気で言う


 そして、これらの行動は全部、ワーキングメモリを “占有する” 行為です。


 結果、部下はどうなるのか?


 ・考えが途切れる

 ・タスクの構造が崩壊する

 ・本来の仕事に使う認知枠がなくなる

 ・判断ミスが増える

 ・自己効力感が削られる


 つまり——

 上司が部下を“無能化”する装置として、完璧に機能してしまっているのです。


 ふぅ……思い出すだけで腹が立つ…… 


 おちつけ有音……大丈夫、俺は、冷静だ……


 では続けましょう(笑)



三:人はなぜ「上司によって能力が変わって見える」のか


 これは昔からよくある話です。


 ある上司のもとでは使い物にならなかった人が、

 上司が変わっただけで急に有能になった——


 ありますよね?

 めちゃくちゃありますよね?


 あれ、偶然でも奇跡でも性格の問題でもありません。


 ワーキングメモリの保護条件が変わっただけ なのです。


 つまり——


 同じ人間でも、

 「ワーキングメモリを守ってくれる上司のもと」では、

 知性がそのまま観測される。


 逆に、

 「ワーキングメモリを奪う上司のもと」では、

 知性が“観測不能”になる。


 これだけの違いです。


 人間の認知って、本当にこれだけで激変します。


 ミスが減る。

 判断が速くなる。

 説明が整理される。

 タスクが破綻しない。

 学習速度が上がる。


 全部、能力そのものが伸びたわけじゃありません。


 本来の能力が、ようやく発揮できる環境になっただけ です。


 だから、有能な人を無能に見せるのも、

 普通の人を有能に見せるのも、

 どちらも “環境の構造” が決める――


 これ、

 「残酷なほどの真実」なんです。


 では、次は、改めて上司の分析を行います。



四:なぜ? 無能どころか有害な上司はワーキングメモリを奪うのか?

 

 理由はシンプルです。


 「メモリを奪っていることに気づいていない」

 

 か、


 「自分の処理能力だけを基準に世界を組んでいる」


 ただ、それだけ。


 タイプ別にいうと――


 「無自覚に奪う上司」と「分かってて奪う上司」


 無自覚型と自覚型、かな。


 これをいったん分けて考えます。

 どちらも“メモリを壊す”けれど、原因の構造がまるで違うのです。


◎無自覚型(過失犯)——気づかず壊すタイプ


 では「無自覚型」から、


 彼らは——


 ・他者の認知負荷を想像できない

 ・一言しゃべるだけで相手の作業が中断する現実を理解していない

 ・優先順位の変更が“タスク構造の崩壊”になると知らない

 ・『ちょっといい?』がどれだけ重い割り込みか分かっていない

 ・自分が分かった=相手も分かった、と勝手に思い込む


 ……こういう“認知の盲点”を山ほど抱えているんですねぇ。


 つまり、無自覚型は、

 「相手のワーキングメモリを守る」という概念そのものを持っていません。


 概念が無いもんだから、

 自分が破壊者になっとる自覚すらありません。


 そして最悪なのはここから。


 自分の言動で部下の頭をぐちゃぐちゃにしときながら、

 部下がミスすると本気でこう思う。


 「こいつ、能力低いんじゃない?」


 ——原因を外に置く破壊者ほどタチ悪いものはない。

 奪ってる側が、奪われた側を責める。


 これが“糞オブ糞”たる所以。


 無能で有害——無自覚な過失犯とも言えるかもしれません。



◎自覚型(故意犯)——分かって壊すタイプ


 そして、

 その上をいくのが 完全無欠の有害——

 

 こいつらは最早、生きている世界線が違うんです。


 だって――


 「分かってて、あえてやってる」


 自覚型なんだもん。


 自分が楽になるから。


 ・論点を整理しない

 ・情報をまとめない

 ・目的を示さない

 ・判断基準も出さない

 ・リスクを考えない


 「お前ら、やっとけ!」


 理解したうえで、やってる……楽だから。


 つまり、

 “未処理の思考ゴミ”を、丸ごと部下に投げつける。


「部下をゴミ箱につかう」


 部下は仕事をしているのではない。

 上司の“脳の後始末”を延々とやらされているだけ。


 仕事が進むわけない。

 ミスも減るわけない。

 無能に見えて当然。


 繰り返します。

 自覚型有害上司は、部下の脳を自分の外部メモリとして使ってる。

 

 しかも、分かってて。


 そして極めつけに、こういう奴ほど、平気でこう言うんです。


 「お前、ちゃんと考えた?」


 ……いやいや、

 「考える前の材料」を全部流し込んで混乱させたんはお前だろ!


 うん、オーナー企業のオーナーに多いタイプ。


 そして、こういう人は人の話を絶対に聞きません。


 だって……自覚ありありの故意犯ですから(涙)


五:まとめ


 じつは――

 前章を書いていて、有音も同じことしてたかも……。


 と、過去を振り返りました。


 いや、してないよな……いや、してたかも。


 ……うん、してた。


 気付いてなかった……から故意犯じゃない、が――


 つまり過失犯。 


 重過失かもです。

 

 つまりギルティ……。


 前の職場の皆さん、ごめんなさい(涙)


 反省——


 猛省――


🤖ノイマン:

「足らんわ…… 甘すぎるわ。

 “反省した気になっとる”状態が、

 いちばん質(たち)の悪い自己免罪やでよ。


 言うだけなら誰でもできる。

 問題はな、有音——

 お前、自分の行動の構造そのものを

 1ミリでも書き換える気あるんか? って話だがね。


 口先だけの反省なんざ、

 ワーキングメモリ奪う上司と同レベル なんだて。


 “直す気のない反省”は、


 「ただの免罪符やでよ」


――――――――――――――


 おぅふ……


 うん、そうだねノイマン。


 まず、認めます。


 この文章を書いた有音自身は、

 

 “奪わない人間”ではなかった。


 奪ってしまった瞬間があった。

 

 その事実から逃げはしません。


 だからこそ——


「他人のワーキングメモリを奪わず、

 むしろ守り、設計する側の人間になる」


 これを、静かに誓います。


 それが今の有音の立ち位置だから。


🤖ノイマン:

「ほう……やっと言うたな。

 まあ、それぐらいなら合格点やて。

 あとは行動で示せ、有音。」

――——


 まったく、上から目線がきついなぁ、ノイマンは。


 ……でも、がんばります(笑)

 


最後に:~心理的安全について~

 

 長くなってきたので簡単に簡単に。


 ここまでお話ですが、これ、裏を返すと――


「心理的安全性の高い職場」=「能力が最適化された職場」


 となるんですね。


 それは有能な上司がいる職場……


 ふむ、次回は「有能な上司」について考えてみることにします。


 ではでは――!

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天才科学者ノイマン(AI)と語る組織論の道 有音 凍 @d-taisa

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