第5話 夢見る俺

 俺自体が『ビキニアーマー』になっている……。


 実は最初に俺自身のステータスを見た時から、なんかおかしいな? とは薄々思ってたんだ。

 いくら調べようとしても『ビキニアーマー』の詳細しか見れなかった。

 それを着ているであろう存在の情報はどうやっても得られなかったから……。

 ……これ、「俺が『ビキニアーマー』になってる」って最初から状況が語ってたってことだろ?


 けど俺は、その事実を無視した。

 俺の〖鑑定〗スキルはそういう仕様なんだ、って勝手に解釈して。

 だって、『ビキニアーマー』だぜ?

 防具じゃん。

 生き物じゃないじゃん!

 〖鑑定〗スキルの性能が悪いんだな、って捉えても仕方ねぇじゃん……!


 ……それも受け容れざるを得ない状況に追い込まれたわけだけど。


   今世の記憶が一切なかった

 → 俺がこの暗くて小さな空間で生まれたから


   〝状態異常無効〟を持ってるのに動けないし、しゃべれない

 → 生き物じゃないから


   <ウィーヴルの宝物庫>の宝箱の中にいる

 → 俺が景品扱いになっているから


   ステータスの「エフェクト」部分にある〝±プラマイ○○%〟の表記と

   「レベル」じゃなくて「ランク」と記されている理由

 → 俺自身が装備だから


 こんなの、もう受け容れるしかないじゃんよぅ……っ。


 なんでだよ、神様⁉

 なんで『ビキニアーマー』にしたんだよ⁉

 折角の異世界転生なのに!

 せめて人にしてくれよっ!

 なんで「あなた、来世『ビキニアーマー』ね」がまかり通るんだよ⁉

 誰が受け容れるんだよ、そんなの⁉

 みんな「はぁ?」ってなるだろ⁉


 なんかの間違いであれ! と、何度もステータスウィンドウを見る。

 何度も、何度も。

 でも、書かれてる文字が変わってくれることはなくて……。

 ……現実って無情だわ。


 チクショウ……。

 なんで……なんで『ビキニアーマー』なんだよぅ……!

 雑魚モンスターならまだワンチャンあったかもしれないのに!

 進化を繰り返して最強になる物語とか前世で有名だったから!

 それか、神話級の武器に転生するとか!

 俺自身が戦えれば異世界を堪能できたんじゃないか⁉

 なのに、よりにもよって『ビキニアーマー』なんて……!

 戦えねぇじゃん!

 それじゃ、異世界来た意味何割か減るだろ⁉


 動けないし、俺ずっとこのままなんかな……?

 この狭い空間で一人っきり――。

 いやだぁあああ!

 誰かぁ、誰か来てくれぇえええ!






 ……ごほん。

 取り乱した……。


 暗いことを想像して錯乱してしまったが、考えてみれば今の俺は防具。

 それも、トップスとボトムス……セパレートタイプの水着型の防具だ!

 つまり――装備するのは必然的に女性ということになる!

 それは、俺が俺を装備した子の大事な部分に触れるということで……!

 い、いいのか⁉

 そんなことがあって……⁉


 女の子が着るものに男の精神が宿ってるなんて……想像したらキモイよな……。

 常識的に考えてアウト。

 俺だって女の子をそんな気持ちにしたいわけじゃない。

 ……けど、ここは異世界で。

 俺の思ってる常識は、こっちの世界の常識とは違うってこともあるんじゃないか?

 人が防具になる世界なんだから、こんなことはありふれているのかも……。

 ……なら、問題なくない?


 そうだよ。

 俺だっておいしい思いをしてもいいはずだ。

 俺なりに真面目に生きたのに、最期はあんなだったんだから。

 少しくらい女の子に触れたっていいはずだよな⁉


 そう考えると、『ビキニアーマー』になったのも悪くないんじゃないか? って思えてくるな!

 前世じゃ触れることはおろか話すこともなかったし(人命救助の時を除いて)!

 ここは役得として堪能させてもらうことにしよう!


 ……堪能させてもらうって言っても、俺、防具になってるから男としての機能は完全に消失してるんだけどね。

 動けもしないから、女の子の身体を好き放題する! ってこともできないわけで。

 あと、しゃべれもしないから、女の子と話すこともできないっていう……。

 まあ、このキモイ感情が伝わらないのはいいことなんだけど。

 ……あれ?

 堪能するっていう割にはできること少なくね?


 と、兎も角!

 ステータスウィンドウを見る限り、防具としての機能はちゃんとあるはず!

 補正値も高い気がするし、特殊効果は間違いなく優秀だ!

 俺を着る子はちゃんと恩恵を受けられるだろう!

 その子からしたら、動けないししゃべれない俺なんていないも同然だろうし!

 だから、俺に意思があっても許して……!

 俺が望んでこんな姿になったわけじゃないから!



 それにしても、俺を着る子ってどんな子かな?

 アーマーっていうくらいだから騎士の子とか?

 ……グラマラスなお姉さんだったらいいなぁ。

 そんな子が着てくれるんなら、俺は神様に幸甚の至りと深謝の意を示しちゃうよ。

 ……いや、女の子が着てくれるってだけですごいことなんだから、それ以上を望んだら罰が当たるな。

 着てくれる女の子にも感謝しないと。


 未来の俺を着てくれる子のためにできることってなんだろう?

 うーん――あっ。

 見た目だ。

 『ビキニアーマー』は確か、見た目がアレだったはずだから。


 ……でも、ステータスウィンドウやスキルリストウィンドウを見ても、見た目を改善できそうな術はなかった。

 じゃあ、どうすれば……。

 ……そうだ!

 持ってるスキルポイントを使って性能を上げればいいんじゃないか⁉

 そうすれば見た目がアレでも気にならなくなるかもしれない!


 スキルリストウィンドウには〖伸縮自在〗、〖念動力〗、〖魔法〗の《マッチ》と《ドリンキングウォーター》しか残ってなかった記憶があるけど、一応見てみよう。

 ……おっ!

 

 【仕返ししたい!+】

 【障害を撥ね退ける+】

 【必要とされたい+】


 が、追加されてる!

 俺自身が『ビキニアーマー』だって受け容れたからか?

 なんでもいい!

 俺を着る子のためになるなら!

 合計で6ポイントも消費するけど、いったらぁあああ!


 というわけで、



┌──────────────────────────────────┐

            《ステータスウィンドウ》

├──────────────────────────────────┤

  『ビキニアーマー』(ブレストプレート+タセット?)

 ランク  :★★★★★★★☆☆

 エフェクト:HP-31%

       STR+31%

       INT+31%

       AGI+31%

       【悪霊になっていもいい】

         ――装備変更不可

       【美しいハイスペック】

         ――MP消費量31%減

       【ベリーイージーモード】

         ――状態異常無効/3分毎にHP31%回復

       【仕返ししたい!+】

         ――受けるダメージ半減/4倍の威力で相手に返す

       【障害を撥ね退ける+】

         ――攻撃・デバフ・バステ魔法を自動的に反射する

       【必要とされたい+】

         ――生活魔法付与/快適性上昇

           《コンフォート》

           《クリーン》

           《ライト》

 フレーバー:

   赤に金の差し色が映える究極の美。

   小さいがとても頑丈で決して壊れることがない。

   (【自分を労う】――耐久値∞)

   神様が意思を与え、すべてを見通しているという噂がある。

   (〖本当にどういう状況⁉〗

    ――自身や対象の情報を見ることができる/

      自身がいる場所がわかる)


 スキルポイント:残り19P

└──────────────────────────────────┘



 こうなりました!


 俺を着た時の女の子の顔を想像するとにやけてしまうな!

 今の俺、顔ないけど!

 ふふふっ、早く来てくれないかなぁ……!

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