ep44:華蓮視点⑫

 謁見の間でソレイユの国王陛下と王族の方々に挨拶した後、私は王宮で開かれた宴の主役になった。

 友好国の宰相の娘ということで、お近づきになりたいらしい貴族の方々が、次々に話しかけてくる。

 エトワールでは全ての社交の場を避けてきた私だけど、この晩餐会を断ることはさすがにできなかった。


「僕は去年エトワールに行っているのですが、お会いするのは初めてですね」

「はい。母国では勉強に集中しておりましたので、社交の場に出るのは今日が初めてですわ」


 最初に話しかけてきたのは、アレクサンドル様だった。

 彼がエトワールを訪問していた描写は、ゲームにも映画にも無い。

 でも、シナリオが改変されたこの世界では、ソレイユの王太子アレクサンドル様は、火球が降り注ぐ大災害から王国を護った聖者として有名になっており、エトワールの王宮と神殿を訪問したことがあるらしい。


「わたくし、ソレイユに来たら、アレクサンドル様と魔法についてお話をしたいと思っておりましたの」


 微笑みながら、私は勉強好きをアピールする。

 本当は、前世の記憶があるのかどうか聞きたいのだけど。

 人がたくさんいるこの場では、前世について話すことはやめておこう。


「本当に魔法がお好きなんですね。後で王宮の書庫を案内しましょうか」

「ええ、是非お願いしますわ」


 優しく微笑むアレクサンドル様も、魔法の勉強が好きな人だった。

 女性的な顔立ちだからか、異性と話すのが少し苦手な私でも落ち着いて話すことができる。

 こんな風に抵抗なく会話ができる男の子は、前世では陽太くんだけだったのに。


 アレクサンドル様は、転生者なのかな?

 陽太くん……なのかな?

 前世のこと、どれくらい覚えているのかな……?

 私の心の中に、「早く知りたい」という気持ちと、「知るのが怖い」という気持ちがあった。



 ◇◆◇◆◇



 翌日、アレクサンドル様は約束通り、私を王宮の書庫へ連れて行ってくれた。

 魔法の技術に秀でた国だけあって、エトワールでは見たことがない魔法書がいっぱいある。

 私は属性に関係なく使える無属性魔法の書物を借りた。


「アレクサンドル様、1つお聞きしてもよろしくて?」

「はい、何でしょう?」


 他には誰もいない書庫の中で立ち止まり、私は勇気を出して聞いてみることにした。

 アレクサンドル様も立ち止まり、キョトンとしている。


「ソレイユを火球群から防いだとき、どうやってお気づきになったの?」

「それは……うーん、何か予感がした、という感じですね」


 私の問いに、アレクサンドル様は数秒ほど沈黙をおいて答えた。

 つまり、言いづらいこと?

 それって、前世の記憶があるとは言えないって躊躇したからかな?

 私の心の中で、彼に対する期待が高まる。


 この人は、あの映画を観た転生者……なのかな?

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