ep05:美月視点⑤
どうやら私は、現世の実母に捨てられたらしい。
捨てられた理由は、後に知ることとなった。
捨てた場所が孤児院の玄関前だったのは、育ててもらえると思ったからだろう。
川に流したりしなかった分、多少は愛情があったのかもしれない。
時は流れて、私は2歳になった。
視界はクリアになり、人の顔もハッキリ見える。
私は、ハイハイ、つかまり立ち、伝い歩きを経て、ようやく歩いたり走ったりできるようになった。
自由に動き回れるようになった頃、私はここが日本ではないことに気づいた。
それどころか、地球ですらなかった。
「えっ、リュラル村が魔物に?!」
院長先生が、事務所で誰かと話しているのが聞こえる。
通信に使われている道具は、スマホでも固定電話でもない。
テリファヌという魔道具で、丸い鏡に似た形をしている。
ここは、魔物や魔道具、魔法がある世界だ。
「はい、お預かりします。連れて来て下さい」
「お部屋の用意をしておきますね」
院長が話し終えた後、事務所を出て2階へ駆け上がっていくのは、スタッフのメアさん。
多分、誰か新しい子が来るから、空いているベッドにシーツをかけに行ったんだろう。
興味津々で事務所をコッソリ覗いていた子供たちが、その後ろ姿を見送った。
その子供たちの中に、私も混ざっていた。
私が暮らしているのは、木造2階建ての古い建物。
設備は、割と充実していると思う。
1階には、小学校の教室くらいの広さの食堂、給食室に似た調理場、子供向けの本を揃えた図書室、積み木やボードゲームなどで遊べるプレイルーム、多人数で入浴できる浴室、事務所などがある。
2階には、子供部屋とスタッフの部屋があり、トイレは1階と2階それぞれの廊下の突き当りにある。
この孤児院の名前を、この建物の風景を、私は前世から知っていた。
ここは、「エトワール国立孤児院」と呼ばれる児童養護施設だ。
そしてこの世界は、アヌトゥモレという異世界。
私と華蓮ちゃんがハマッていたゲーム、【星空の彼方】に酷似した世界だった。
この世界での私の名前は「ルナ」。
【星空の彼方】の主人公と同じ名前だ。
孤児院の前に捨てられた過去と名前だけなら、たまたま同じなだけだと思うところだけど……。
「リュラル村から来た、アラン君よ。みんな仲良くしてあげてね」
孤児院スタッフのミテーラさんが紹介する前から、私はその子の名前を知っていた。
今の私と同じくらいの年頃と思われる、幼い男の子。
その容姿は、ゲームで何度も見た「アラン」そっくりだ。
栗色のマッシュパーマヘアに、紅茶色の瞳。
エトワール国立孤児院の子供たちよりも痩せているのは、貧しい農村で暮らしていたからだろう。
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