第4話 最初から分かってたのに

仕事の合間に理香子さんからのメッセージを確認すると、「ごめん、仕事が長引きそうだから、今日は会えない」とだけ書かれていた。


俺は「大丈夫、仕事頑張って」と返した。


いつもなら「じゃあ、次はいつ会える?」と切り替えられるのに、今日は違った。


今日会えなかったら、次なんてもうないんじゃないか。


そんな気がして、胸の奥がざわついた。


俺はなんとか気持ちを切り替えて、仕事に戻る。


考えたって仕方がない、そう自分に言い聞かせながら。


***


仕事を終えて、ふらっも飲みに行くことにした。


よく行く店のカウンターには、俺みたいに一人で飲んでる人もいれば、恋人同士で肩を寄せ合ってる人たちもいた。


その中でも、笑いながらジョッキを合わせる男女が目に入る。


(いつか、理香子さんと俺も…こんなふうに)


ビールを飲み干し、グラスの底を見つめた。


そこに映った自分の顔が、やけに情けなく見えた。


***


夜道を歩く。


街灯の下、理香子さんと並んで歩いた夜を思い出す。


あのときは、手を繋がなくても幸せだった。


ただ隣にいるだけで、それだけでよかった。


でも今は違う。


「彼は…本当に結婚する気、あるのかなって」


あの夜の、悲しそうな声が頭をよぎる。


あのとき、俺はほんの少し期待してしまった。


もしかしたら、俺のほうを見てくれるかもしれないって。


でもあれから、理香子さんからメッセージはない。


俺は何度もスマホを開いては、何も変わらない画面を見つめた。


たぶん、今ごろは彼と一緒にいるんだろう。


結局、別れたわけでもなく、同じ部屋で眠ってるんだ。


(…勝てないじゃん、結局)


そう思った瞬間、胸の奥がギュッと締め付けられた。


***


夜空を見上げると、冷たい月が浮かんでいた。


冬の空気が、鼻がツンとさす。


分かってたのに。


俺は彼女の”本命"になれないって。


それでも俺は、あの人のそばにいたかったんだ。


たとえ、手の届かない場所でも--。

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