第3話 それでもあの人のそばにいたい

あの人と一夜を過ごした日からも、変わらずメッセージのやり取りは続いていた。


それどころか月に二回ほど、デートして、ホテルに泊まって、朝まで一緒に過ごすようになっていた。


二人とも裸でベットに横になり、あの人の長くて綺麗な髪に指を通す。


「彼氏さんとは、上手くいってる?」


「んー…、どうだろう」


「倦怠期、とか?」


「…そうではないの」


あの人は少し困った顔をして、彼氏への不満をこぼす。


「同棲を始めたのは、結婚を見据えて…だったんだけどね」


「うん」


「彼は…ほんとに結婚する気、あるのかなって」


理香子さんからすると、「二十代後半の自分が同棲するなら、先を見据えてじゃないと」と彼に伝えた上で始めた同棲だった。


それなのに、結婚の話をするといつもはぐらかされるらしい。


「正直ね、誕生日とか記念日になると、期待してたんだよね」


「プロポーズ…してくれるんじゃないかって?」


「うん…でも、今まで一度もなかったの。私の誕生日も、付き合って三年記念日も」


「…そっか」


あの人は体の向きを変え、天井を見上げた。


「…湊くんと、初めてデートした日、ほんとは帰りたくなかったの」


「…え?」


「自分との将来の話を、ちゃんと話せない彼がいる家に、帰りたくなくて」


「…なるほど」


「ごめんなさい。こんな言い方、利用したみたいだよね…」


あの人は俺に隠すように、鼻を啜る。


俺は黙って、あの人を抱き寄せる。


そして、あの人の頭を撫でた。


「そんなこと、思ったことないよ。俺は…理香子さんが呼んでくれたら、会いに行く」


「…ありがとう」


二人で抱き合ったまま、眠りにつく。


***


嫌でも、朝はくる。


身支度を整えて、それぞれの家に帰る。


まだ身体に残るけだるさは、昨日の温もりの証。


そして、理香子さんの言葉が頭から離れない。


(俺なら、そんな思いさせないのに)


スマホを開いて、あの人からのメッセージを確認する。


もうそれは、俺には愛おしい習慣になっていた。

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