第7話FileNo.07 広瀬刑事の逮捕
【プロローグ】
12月中旬。
冷たい風が吹く警視庁の廊下に、信じがたい光景があった。
若手刑事・広瀬の腕に――
手錠がかけられていた。
容疑は、
山﨑史郎・射殺事件。
広瀬「ち、ちがうんです!ぼ、ぼくじゃない! 信じてください!!」
しかし、犯行に使われた銃は広瀬のもの。
状況はあまりにも不利だった。
広瀬の婚約者・優子は涙目で見つめる。
優子「……広瀬君……どうしてこんなことを……?」
芋三郎刑事は黙って広瀬を見つめ、
深く息を吸った。
「私が、必ず真相を明らかにする。
広瀬君――君を信じよう」
芋三郎はこの事件を解決し、広瀬を救うことができるのか!?
【解明編】
芋三郎「まず、当日のことを話してもらおう」
広瀬「はい……」
広瀬は震える声で語り始めた。
「その日、僕は婚約者・優子さんの実家に挨拶に行きました。
射殺された山﨑史郎さんは……優子さんのお父さんです」
芋三郎「その時、家には誰がいた?」
広瀬「僕、史郎さん、優子さん……
それと、優子さんの兄・剛さんです」
芋三郎「事件の瞬間は?」
広瀬「僕は……トイレに行こうと席を立ちました。
戻ったら……史郎さんが撃たれていたんです」
芋三郎「じゃあ、優子さんと剛さんが犯人か?」
広瀬「いえ!
僕がトイレにいる時、2人が話している声を壁越しに聞きました。
だから2人は犯人じゃないんです!」
芋三郎「…………現場を見てみよう」
◆ 現場検証
優子と剛がいた“リビング”へ入った瞬間、
芋三郎は立ち止まった。
「……そういうことか」
広瀬「芋三郎さん、何かわかったんですか!?」
芋三郎「みんな、ここに集まってくれ」
優子と剛が緊張した表情で並ぶ。
芋三郎は剛を指さした。
「犯人は――あなたです、剛さん!」
剛「なっ……!?
何を言ってるんだ!俺は優子と話してたはずだ!
広瀬君も壁越しに聞いてたと言ったぞ!」
芋三郎「いえ。違います」
芋三郎はクローゼットの横に置かれた
季節外れの扇風機を指差した。
「これです」
スイッチを入れ、扇風機の前に座る芋三郎。
「ばばばば……ばばば……ぼでがじょうごべぶ!!」
広瀬「えっ!?な、なんですかその声!?」
芋三郎「優子さん。
あなたはこの扇風機の風で“声が揺れて聞こえる効果”を利用し、
一人二役を演じた。
つまり、わざと広瀬君に聞かせるため、
“優子”と“剛がリビングで会話しているように”偽装したんです」
優子「っ……!」
芋三郎「剛さんはその時、現場で史郎さんを殺害していた」
剛「……くっ……!」
広瀬「そ、そんな……なぜ……」
優子・剛「……わたしたちがやりました……」
優子は泣き崩れ、剛は静かにうつむいた。
優子「父は……父は、いまだに大谷選手の二当流を認めようとしないんです。
それが原因で私たちと不仲になっていました……」
剛は、ポケットからドジャースの帽子をそっと出した。
◆ しかし芋三郎にはまだ疑問があった
芋三郎「広瀬君。
ひとつだけ……聞いてもいいか?」
広瀬「は、はい……」
芋三郎「なぜトイレに行く時に銃を置いて行ったんだ?」
広瀬「……ズボン脱ぐ時……じゃまだから……」
静寂。
警察「…………こいつ、警察向いてねぇ」
芋三郎はため息をつきながらも、
肩にそっと手を置いた。
「まあいい……次は気をつけるんだぞ」
広瀬「芋三郎さぁーーーん!!」
パトカー「パーーーッ……プー……」
――FileNo.07 完。
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