第6話FileNo.06 犯人はサンタクロース

【プロローグ】


クリスマスが近い冬の夜。

住宅街の一角にパトカーの赤色灯が静かに回っていた。


家の中では、夫婦が何者かに殺害されて発見された。

強盗の形跡はなく、怨恨の線が濃厚。


容疑者として名前が挙がったのは両隣の住人。


① 母子家庭の母・佐伯ゆかり(32)

② 大柄で白いひげが特徴の外国人・グローバーさん(65)


どちらも被害者夫婦と金銭トラブルを抱えていたという。


そのとき――

2階から小さな足音が降りてきた。


トタトタトタ……


「ぼく、窓から犯人を見たよ。

犯人はサンタクロースだよ!」


現場がざわつく。


犯人はサンタクロース――

たっくんの証言は真実なのか?


芋三郎刑事は、この奇妙な事件の真相に辿りつけるのだろうか?


【解明編】


「……クリスマス前に面倒な事件だ」


芋三郎はため息をつきながら、

ゆかりとグローバーを向かい合わせにして尋問を始めた。


ゆかり「私じゃないわよ。犯人はそこの外国人でしょ!」

グローバー「ホッホッホー!私は無実デース!」


広瀬が小声で芋三郎にささやく。


「息子さんの証言を信じるなら……やはり外国人がサンタ像に近いような……」


芋三郎は黙って立ち上がった。


「お母さん、失礼ですが家の中を拝見させていただきます」


「まあ、いいですけど……」


芋三郎は部屋を見回し、

ゆかりのクローゼットの前で立ち止まった。


ギィィ……


そして一言。


「……そういうことか」


ゆかりが身を固くする。


芋三郎はゆっくりと家族を振り返った。


「隣人夫婦を殺害した犯人は――ゆかりさん、あなたです」


一同「!!」


ゆかり「な……何言ってるのよ!

息子が犯人はサンタクロースって言ってたじゃない!

どう見てもこの外国人がサンタでしょ!」


外国人「ホッホッホッ」


広瀬「この人、ずっとホッホッホ言ってますね……」


芋三郎はたっくんに優しく聞いた。


「たっくん。サンタクロースはどんな格好をしていた?」


「えっとね……赤いミニスカートに黒いあみタイツ!

それで……あみタイツの中にチップが入ってたよ!」


ゆかり「ひっ……!」


芋三郎はクローゼットを指差す。


「それはこの衣装でしょう」


中にはコスプレ衣装がぎっしり。

特に赤いミニスカートと黒い編みタイツが存在感を放っている。


広瀬「これ、たっくんの証言そのまんまじゃないですか!!」


ゆかり「くぅ……バレたかぁ……!」


芋三郎「動機を聞かせてもらえますか」


ゆかりは膝から崩れ落ちた。


「……コミケに行くお金が欲しかったのよ……!

夫婦に借金を頼んだら断られて……それで腹が立って……つい……!」


広瀬「佐伯ゆかり。夫婦殺害の容疑で逮捕します」


ゆかりは連行されていった。


パトカー「パーーーッ……プー……」


家の外で、たっくんが芋三郎に駆け寄る。


「ねぇ芋三郎さん。警察の人なんでしょ?

ミニスカポリスはどこ?」


芋三郎「……そんなコスプレまで……」


広瀬「絶対お母さんの影響ですよね……」


そこへ外国人が帽子を取って言った。


「ホッホッホ。それでは私はアルバイトがあるので失礼します」


芋三郎「アルバイト?どんな仕事ですか?」


「白いタキシードを着て、チキンを持ってお店の入口に立つ仕事デース」


広瀬「……完全に日本のクリスマス文化の犠牲者じゃないですか……」


夜空には、イルミネーションが静かに輝いていた。


――FileNo.06 完。

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