最後の投稿
しとえ
最後の投稿
行き場のない人生の
行く先はやはり惨めで
惨敗ばかりでした。
それなりに努力は
してきたつもりです。
幸福だったかどうかは
分かりません。
今も昔も これからも
天国などというものは
この世界にも死後の世界にも
存在しないので有りましょう。
優しいあなたは
私のことを知れば手を
差し伸べてくれるでしょう。
けれど どうして その手を
掴むことができましょうか…
私はあなたを不幸にしたくないのです。
あなただけが私の中の
無垢で美しい存在だったのですから。
さようなら……
あなたに言える お別れの言葉が
これだけなのがあまりにも悲しい
学生時代の大切な友人が死んだ。気がつけばの自殺だった。
彼女が抱えている問題に気がついたのは、死んでからもう随分経ってからだった。 私は彼女のために何かしてあげられただろうか ……と自問自答する。
だが結論はいつも同じで、結局のところ彼女に何もしてあげることができなかったのだ。
SNS に残された彼女のアカウントをそっと指で追ってゆく。
これが彼女のアカウントだと気がついたのは、たった一つの投稿でだけだった。
絵文字で隠されていたけどそこに映っていたのは彼女と私だ。
卒業したあの日一緒に行った遊園地。
そこには『人生で一番楽しかった1日』と書かれていた。
彼女はずっと自分が抱える問題をけして私には話そうとはしなかった。
きっと私では受け止めきれないことを分かっていたのだろう。
体中山ほどある自傷の後、SNSに上げられた血まみれの写真、否定され続けた言葉、OD、摂食障害、自分で開けた大量のピアス、 家族の問題、家出に失敗して連れ戻されたこと、 夜な夜な徘徊していたこと、 パキッてフラフラしていたらレイプされたこと……
「死にたい」「消えたい」「自分がいなければみんな幸せ」という言葉が山のように書き込んであってとても苦しかった。
彼女が生きていた証がもうここにだけしか残っていないようであまりにもつらかった。
私が彼女のSOSに気づいてあげれば……
だけどそのことで私が悩むのを見れば、彼女もまた苦しんでしまったのかもしれない。
彼女はそんな性格だったのだから。
きっと最後の投稿は私に向けての言葉だったのだろう……
さようなら……
あなたに言えるお別れの言葉が
これだけなのがあまりにも悲しい
最後の投稿 しとえ @sitoe
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