Assassin's Log
インフレ時代のシンプル・ルール
ここからは中級編だ。これまでの「6 Windows of Dooms」という概念に、時間軸という新たな要素が加わる。まずは、環境と経済という単純な領域から話を始めよう。
どれほど吟味して選んだものであろうと、ある期間の満足が永遠に続くことはない。時間はすべてを変えてしまう。たとえば、二〇二二年に始まったウクライナの戦争がそうだ。物流の滞り、エネルギーコストの増大。それに伴う物価の高騰は、我々の暮らしを容赦なく削り取った。どんなに優れた商品やサービスであっても、個人の予算には限界がある。無限に金を出し続けるわけにはいかないのだ。
私はかつて、健康のためにオリーブオイルで炒め物を作っていた。二〇二二年頃、五〇〇グラムの瓶は六〇〇円か七〇〇円ほどで買えた。だが、二〇二五年にはそれが一四〇〇円から一六〇〇円に跳ね上がった。三倍近い値上がりだ。これには閉口した。私はオリーブオイルを諦め、米油に切り替えた。比較的栄養価が高く、近所のスーパーで安く手に入るからだ。
私は、一冊の本を思い出した。『シンプル・ルール』という本だ。そこには、倒産寸前だったアメリカーナ・ラティーナ・ロジスティカという会社を、簡潔なルールで再生させた劇的な事例が記されている。新しいものを買うのではなく、手元にあるものを再利用するか、代替品を探す。私はその考えを借りたのだ。
「今のままでいいではないか。わざわざ探し直すのは骨が折れる」という意見もあるだろう。それはそれで一理ある。
だが、話を変えよう。生物の世界は「弱肉強食」というよりは「適者生存」の原理で動いている。かつて恐竜がこの地を支配していたが、隕石が落ちて彼らは絶滅した。太陽の光が遮られ、植物が枯れた。草食動物が死に、彼らを食らっていた恐竜もまた死んだ。食物連鎖の崩壊だ。巨体を維持するための糧が、どこにも残っていなかったのだ。
一方で、カエルはどうだ。カエルは弱い生き物だ。しかし、彼らは生きていくために多くを必要としない。虫でも動物の死骸でも、好き嫌いなく食う。陸の環境が悪化すれば、泥の中や川底でやり過ごす。彼らは「適者生存」の師と呼ぶにふさわしい。
カネを使うとき、我々は「これでなければならない」という固定観念を捨てるべきだ。それが生き残るための秘策になる。
私のPS4のコントローラーは、これまでに四回壊れた。二〇二〇年頃は五〇〇〇円で買えたものが、二〇二二年には八〇〇〇円になり、二〇二五年には一万円を超えた。PS5の登場で旧世代機が生産を終えたせいだ。私は代替品を探した。
最初に買った国産の代用品には、タッチパッドもイヤホンジャックもなかった。失敗だった。だが、二度目に買った別の国産品は、多少の違和感こそあれ、五〇〇〇円弱で手に入り、概ね満足できるものだった。
科学的な根拠があるわけではない。ただの私の個人的なルールだ。オリーブオイルでも、美容院のサービスでも、市場価格が一・五倍を超えたなら、私は別の道を探し始めることにしている。
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