第5話 DM
「まず、割とログインの手続きはわかりやすいし簡単だったよ。今回は遊び専門ってこともあったけどね」
「僕が入ったうちで一番すごかったのはその時の月刊ランキング一位だったTerminalさんのワールド『湖の下の教会』だね。水の表現、リアルな匂い、体の感覚、神秘的な風景、静かなのに感動がある音楽!何をとっても人生単位で最高の体験だったね」
思い出して興奮気味の結翔は続けて語る。
「それで、調査だから適当なところにもいくつか入ったんだけど、立体の自然さから違うところもあれば、素人目に見てもちょっと作り込みが残念だなってわかっちゃうところとかもあった」
「全部AIに任せてれば僕にもわかるし、残念だった。ゲーム性のあるものは確かに面白かったけど、そこらへんのゲームソフト買えばいいかって思うとこ。Hello worldもタダじゃないからね」
一馬も芽来もその言い分には納得だった。
「やっぱりそうなんだな。評価でもそんなこと書いてあった」
「だからこそ、やりがいがある。最高を目指してTerminalに負けないクオリティを出した上でゲーム性も設ける」
「ああ、それが良さそうだな」
意見はまとまった。3人の企画への意志はすでに固いものになっていた。すぐに行動の指針の話題に切り替わる。
「やっぱり、現実的な最低ラインで自分たちで応募をかける。期間は長い方がいい」
「そうだな。俺がチャータメの募集と公式SNSで呼びかける。早ければ明日にはできる」
「あとできることはサーカスリボン!さんに声をかけることくらいだね」
「図々しく、頼むだけ頼んでみようか」
図々しさは時に武器だと、一馬は割り切る。
「僕もいいと思う」
結翔も同じ考えらしかった。
「じゃあ、それだけこなしておくから何かあったらチャット送るな」
「僕らはその間調査続行でいいかな」
次の日の夜、丸一日経ったことになる募集には動きがなかったが、片山希名のDMに返信があったのだった。一馬は震える手でそのメッセージを開いた。内容次第でこのプロジェクト自体の進捗は大きく変わるのだ。
(3人で確認してもいいけど、俺が冷静に内容を飲み込んでから伝えた方が効率的だ)
そう言い聞かせた。
ディメンションウォーカー様、お久しぶりです。この度はお誘いいただきありがとうございます。この件に関して私たちも前向きに検討させていただきたく思います。プロジェクトの指針に個人的に興味を持ったこともあり、一度直接お話しの機会を設けていただけると嬉しいです。早い方が良いものと存じますので日程の候補を添付しておきます。ご都合を考慮の上返信をお願いします。片山(サーカスリボン!)
一馬は本当に手に持っていたスマホを落とした。唖然としながらグループ通話を立ち上げた。無論、結翔だけでなく珍しく芽来も興奮気味だった。
「すごいすごい!」
「僕ら、ちゃんと話せるだろうか。サーカスリボン!の希名と会談……」
その日はあっという間にやってきた。事実、なんと二日後だったからなのであるが。
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アートとエンタメの天才が集まって世界を作るプロジェクト 花城このか @konoka_99
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