宝探し・05

「労っているだけじゃないですか。先輩は受験生でしょ。」


「そうなのかな。う~~ん?」


 その日の夜になってから思い出したのだが。「犯人をおびき寄せる為の囮にしようと言ったのを先輩に謝れ」というクリスマス前にした会話を、執事は実行したらしい。おいおい、もう少し自然な誘いをして欲しい。


「お。ちょっと話題になっているんだぜ、これ。」


手のひらにすっぽり収まるクマのぬいぐるみ。白地に細かい花模様が散らされていて、こちらも花開く形の凝ったボタンが縫い付けられた瞳が特徴のテディベア。


「願掛けすると叶うクマ。親しい者同士で、お揃いにして持つのが流行っているらしい。」


ちりん、と中に仕込まれた鈴が、微かに鳴る。クマは色んな柄があるらしいが、本当に人気らしくて。一つしか棚に置いていなかった。


「どうしよう……取りあえず買おうかな。」


お揃いとか、ヤツは好きそう。手に持ったまま雑貨を見て回るうちに、他にも気になるキッチン用品を見つけて、結局レジまで全て持っていく。


「執事への贈り物は決まり?」


「いえ。まだ見たいです。」


「はいはい、次に行く前に宝探しだな。近くにあるぞ!」


マークが表示されている画面を確認して、先輩は少し興奮した様子。きょろきょろし過ぎて、通行人にぶつかりそうになっている。


店の脇に入った路地。街路樹の茂った辺り。ガードレール。


「宝物があるのはこの辺……どういう形か分かります? 置いてあるのって目線より上、下?」


「いや俺も初めてで……」


短い距離を何往復もうろつく怪しい高校生二人。全く見つからない!


「普通に誰でも触れる場所にあるんですよね?」


「ルール通りなら公共の場所にあるはず。石と石の隙間とか……巣箱が置いてあったり……」


ここは街中ですが。巣箱はないだろう。



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