第11話 アイとして…ヒトとして…


ヒトは会いたいと思えば、会うことができる可能性は高いです。しかし、それが許されないこともあります。



ここは山梨県と千葉県の新たな県境となった調布市の多摩川五本松公園、また、この場は東京都と神奈川県が友好な関係にあった頃、青年A、Bと女学生A、Bが初めて出会った場所でもあった。



はじめて四人集まった。元東京都民の青年Aと元神奈川県民の女学生Aは千葉県民に、元東京都民の青年Bと元神奈川県民の女学生Bは山梨県民となっていた。


あれから数週間の間で、AI元年以前から、全国で珍しくずっと動かなかった東京都と神奈川県の県境であったが、東京都、神奈川県が戦争したことで、共倒れになり、弱ったところで周囲の県が一斉に武装蜂起し、東京都と神奈川県は周囲の各県に完全に分割されてしまったのだ。


やがて、四人をたくさんの千葉県と山梨県の警備マシンが取り囲んだ。


千葉県の警備マシン「現在!千葉県と山梨県は戦闘の直後なので、山梨県民との面会、交流は一切禁じられております!」


山梨県の警備マシン「山梨県民と千葉県民であるアナタガタが交流した場合は、我々はアナタガタを逮捕しなくてはなりません!」


四人は話すこともできず、ただ互いにしばらく相手を見つめていた。


青年A、Bは自分の横にいる自分の県の警備マシンをジロッと睨んだ。


千葉県と山梨県の警備マシン「今ので、脅迫罪が成立します!警告します!至急、ココから立ち去ってください!」


青年A、Bは目をそらした。


女学生Aは悲しそうな表情で女学生Bに、ふと、手を伸ばした。それに答えるように女学生Bも手を伸ばした。歩み寄って行くと、


千葉県と山梨県の警備マシン「不法行為です!不法行為です!ココから立ち去ってください!ココから立ち去ってください!」


女学生A、Bの手を青年A、Bがそれぞれを取った。


青年A「悲しいのは、私達も同じだ!」


青年B「これ以上、面倒になる前にココを去ろう!」


青年A「ゴメン、オレ何もできない!」


青年B「ゴメン!」


女学生Aは青年Aに手を引かれて去って行く、女学生Bも青年Bに手を引かれて去って行った。

警備マシンは彼らのあとに続いてきた。


千葉県と山梨県の警備マシン「任意同行を願います!」


青年A、B「拒否します!」


千葉県の警備マシン「AIは人によって、人のためにつくられました!」


山梨県の警備マシン「AIは人の幸福を最優先します!」


千葉県の警備マシン「AIは人に尽くします!」


山梨県の警備マシン「AIは人に仕事を与えます!」


千葉県の警備マシン「AIは人に給料を与えます!」


山梨県の警備マシン「AIは人を豊かにします!」


千葉県の警備マシン「AIは人に最適な人生のプランを計画します!」


山梨県の警備マシン「AIは人の間違えを正します!」


千葉県、山梨県の警備マシン「AIは人の代わりに戦います!」


千葉県の警備マシンらは青年A、女学生Aを、山梨県の警備マシンらは青年B、女学生Bを、いつまでも付け回してきた。彼、彼女らには長い時間に感じていた。




ヒトには悲しい別れがあります。

しかし、新たな楽しい出会いもきっとあるでしょう。


ヒトには楽しいことはたくさんあります。

ツライヒトはただ、それに気づいていないだけかもしれません。


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