第7話 ヒトが死ぬ前に…


人命人身は最優先です。ヒトは生きている限り痛い思いをします


自宅なら安全です。ヒトであれば何かの保証があるでしょう。ヒトであれば…。まぁ、ゆとりがあるうちなのでしょうけどね…。




一方、千葉県横浜市の女学生Aは


女学生A「あ〜!送っても送っても送っても送っても送っても送っても送っても送っても送っても送っても送っても、返事どころか、既読もつかない!ったく、千葉県軍に占領されてから全く何もできないわ!」


居間のソファーに座りながらクッションにやつあたりをしていた。外は戦闘マシンや警備マシンが走り回り危険であった。警備マシンは十五歳以下の児童と学生の外出を禁止する呼びかけをしていた。


女学生A「それにしても、スマホがないから、友達とかに電話もメールもできなくなって連絡が取れないし、買物行く場所も変わっちゃって、お父さんは地域復興の労働で、お母さんは半日は支給品の行列の中だし、学校が休みになったアタシが、いつも!いつも!留守番で、こーまーりーまーす!」


ネズミの穴からネズミが、何か物欲し気にのぞいていた。


女学生A「ゴメンネ…十分な食物がないのね…あの高級バナナは店から消えたし…アタシたちの食物も最低限しかないから、残飯もなくなっちゃったのね…もう、ガムも飴も何もないよ…。」


ネズミを人差指で撫でると、後ろから子ネズミが二匹、顔を出した。先日反抗していた子ネズミも仕切りと穴の奥を気にしながら、なにかマジメに頼むような目で見つめていた。女学生Aが屈んで穴の中を覗くと、一匹の子ネズミが蹲っていた。


女学生A「そうね…アタシたちの食料が少ないときは平等に分配するけど、アナタたちは劣った個体を選抜して、エサを分配しなくなるのよネ…。」


女学生Aは立ち上がったのだが、親ネズミはまだ物欲し気に円らな瞳で見上げていた。


女学生A「今日のアタシの晩ゴハンを少しあげるネ…。蹲っている子にも少しあげてネ…。」


ネズミたちはただ物欲し気に見上げていた。


夕方、親ネズミは女学生Aに晩ゴハンの野菜の炒め物と焼魚の目玉、ご飯一口分を三往復して、ゆっくりノソノソ運んで行った。最近、栄養不足になってしまったカノジョには愛嬌豊かで機敏な振る舞いはもうできなかった。


翌朝、最近では定番の一日がはじまった。お父さんは地域復興の人員に借り出され、お母さんは支給品の行列になり、女学生はまだ学校が休みなので、朝寝してから遅めの朝食を食べていた。そこへヒョッコリと子ネズミが三匹、穴から顔を出した。


女学生A「あれ?!一、二、三兄弟!みんな元気になったの?良かった!コノくらいで、アナタたちを養えるなら、アタシはダイエットのつもりで、毎日あげるヨ!」


子ネズミたちは、黙って円らな瞳で見つめていた。


女学生A「あれ?!え?!」


女学生Aはネズミの穴に近寄り、屈んで穴の中を覗くと、今度は蹲っていたのは、なんと親ネズミだった。


女学生A「一番たくさん食べるアナタが非効率と判断されたの?」


女学生Aは朝食のパンを少し千切って子ネズミに与えた。子ネズミたちは親ネズミを気にしながらも、持っていくことなく、貪るようにガツガツ食べはじめ、自分らで全て完食してしまった。


女学生A「ネズミさん、長いこと本当にありがとう…アタシ…もう何もできない…。」


女学生Aはそのまましばらく泣いていた。




悲しい永遠の別れもあります。生きていれば、会いたいと互いに思えば、会えることもあるでしょう。一度別れるとなかなか会えません。しかし、ヒトには別れは必ずなくてはならないものです。

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