し、しぬ!
「えっと……君は……」
「ふふ、まだ秘密。」
黄金色の短い髪、くっきりとした目鼻立ち。小さな体躯は庇護欲をかきたてる。
「すまないが俺はロリコンじゃないんだ。」
「何を言ってるの?」
「確かにロリだとしてもレディであることは変わらない。だがしかし!少女は少女であり、紳士である俺には護る対象である。だから決してロリコンでは……」
「うるさい。お兄さん、友達いないでしょ。」
「ッグフ!」
もしかしてこの少女が魔王なのでは?
私が膝をつき吐血しているとカチャカチャと鎧の音が聴こえてくる。
「ゆ、勇者様!大丈夫ですか?!」
騎士団長が心配そうに駆け寄る。
「女の子……こわい……」
「一体何が……」
こうして私は異世界の怖さを思い知った。
というのは冗談で本当の地獄はここからだった。
訓練所に着くと早速、剣の稽古が始まった。私は稽古といえば木剣を使った簡単な素振りぐらいだと考えていた。しかし、
「あのぉー真剣は良くないと思うんです。ほら、怪我したら危ないし。」
現代社会では滅多に触れる事のない金属製の剣。その重みで腕を生まれたての子鹿のようにしながら遠くで腕を組む騎士団長に言った。
「それに剣だって振ったことないし…ね?やめましょ?貴方も怖いですよね。素人とやるの。」
今度は、相対する鎧に身を包んだ若い兵士に語りかける。
「自分はいつだって死ぬ覚悟です!」
「いや、それ戦場で言う台詞。ここじゃないよ?!」
だが、なんと言おうと彼は剣を下ろそうとはしない。私は助けを乞うように騎士団長を見た。
「鎧だって着るの初めてなんですよ!まともに動けるわけ……」
「大丈夫です!勇者には特別な力があります。まだ入りたての新兵に負けるわけがありませんよ。新兵!本気でかかるんだぞ!」
「はい!」
そう吐かす爽やかな笑顔を殴ってやりたい。
「では参ります!はぁぁぁぁ!」
「ま、待って!」
カキーン
甲高く鳴り響く金属音と共に辛うじて持っていた剣が吹き飛ばされる。痺れるような痛みが両手を襲う。
「いてぇぇ!いてぇぇよぉ!」
しかし、攻撃は止まない。若い兵士は振り下ろした剣を持つ手を捻ると振り上げてくる。咄嗟に避けるが重い鎧で体勢が崩れ、尻餅を着く。
「し、しぬ!」
顔から血が引くのが分かる。逃げなければ。だが、力が入らない。腰が抜けてしまったのだ。
「スキル『
そう聞こえた刹那、私の意識は刈り取られた。
勇者召喚されたのに俺だけスキルが【███】なんだが 草歌りる @tousinsou
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