2-1 学校でAfternoon

「起立、気を付け、礼」

「おはようございまーす」


 今日は月曜日。また今日から一週間が始まる。

 いつも通りの朝、いつもどおりの日常がやってきた。


 キンコーン、カンコーン


 午前中の授業を終え、昼休みの時間になった。


「飯、食うかー」


 机を移動させ、向かい合うようにくっつける。


「やっと、ご飯……」


 砂漠で遭難しているぐらいか細い声で、小豆が言った。

 朝早く起きて朝練に参加し、人一倍体を動かしているせいか、相当お腹が空いているのだろう。

 いつも昼は、小豆と大和、そして俺の三人で食べるのが日課になっていた。


 ……胡桃沢は、いつもどおり教室の隅で一人でご飯を食べている。

 土曜日、遊園地で一緒に死線をくぐり抜けた仲だ。

 ご飯くらい誘っても、罰は当たらないだろう。


「胡桃沢一緒に、飯食う?」

八朔ほずみくんが一緒に食べたいなら……」

 なんだこいつは。

 胡桃沢は、弁当を持ってこっちにやってきた。


「ひなっち、どうしたの急に誘って? 胡桃沢さんと仲良かったっけ?」

「まあ、小学校一緒だったし……」

「そうなの? 今まで話してなかったような……」

 そういわれるとそうなのだが、夜や遊園地の出来事をここで話すのは難しいだろう。


「まあ、仲直りしたなら良かったじゃねえか」

「前も、それ言ってたけど何? 別に喧嘩してなかっただろ?」

「いやでも前、胡桃沢 「ガン――!!」


 何か、足元の方からぶつけた音がした。

 大和は、痛ッ!! なんでだよ……とぼやいている。なにをしてるんだろう。


「でも、中学はどこいってたの? 一緒じゃなかったよね?」

「父親の都合で海外行ってたから……」

「海外!! 凄い、帰国子女だ……」

「まあね……」

 胡桃沢は、少し含みのある言い方だった。


「秋野さんって、陸上部の人よね?」

「小豆でいいよ。秋野で呼ぶ人いないし。私も、唯ちゃんって呼んでいい?」

「それはちょっと」

 え!? と小豆はびっくりしていた。


「いいだろ。名前ぐらい」

「冗談よ。唯でいいわ」

「よかった、嫌われてるのかと……」

「小豆さん、嫌われるタイプじゃないでしょ。私と違って」


 胡桃沢は、少し棘のある言い方をした。なんで、卑屈に返すのか。


「でも、確かに唯ちゃん友達いない……」


 ゴホッ!!……びっくりしてせき込んでしまった。

 小豆は、胡桃沢に対して棘で突き刺していた。

 少し、胡桃沢が涙目になっていたのは気のせいだろう。


「じゃあ、今日から友達」

「小豆さん……」

 小豆が温かく彼女を受け入れ、二人は手を取り合っていた。


 そんな会話をしている間に昼食を食べ終え、昼休みが終わった。


 ***


 授業も終わり、家に帰ってリビングでくつろいでいた。

 今日は胡桃沢に聞いたところ、ランラン曰く、ミレンナ―は現れないらしく暇を持て余していた。


「ただいまー」

 妹の声とともに、どたばた歩く音が聞こえる。


「お兄ちゃんいたの? 帰ってくるの早いね!」

「おかえり」

 そういって、視線を向けると、妹の後ろからもう一人現れた。


「……おじゃまします。」

「友達?」

「……和栗結花わぐり ゆうかって言います。よろしくお願いします。」


 妹が友達を連れてきていた。

 大人しそうな子だが、礼儀正しく、目鼻立ちがはっきりしていて、将来は美人になりそうな顔立ちの子だった。


 兄が居座っていたら邪魔だろう。

 そう思い、腰を上げて自室に戻ろうとした時、


「……あれだったら、お兄さんも一緒にゲームしませんか?」

 妹の友達――結花ちゃんがそう誘ってきた。


「気を遣わなくていいよ。部屋にいるから」

 女子小学生が友だちの兄(高校生)と遊んでも楽しいことはないだろう。


「でも、なんか……お兄ちゃんと話してみたかったって」

「なんで??」

「……柚葉ちゃん、いつも学校でお兄さんの話してるから。」

「ちょっ!? そんな話してないよ!!」


 妹は少し顔を赤らめ、少し恥ずかしそうに怒っていた。

 いったい学校で何を話されているのだろうか。恐怖を感じる。


「もう!! じゃあゲームするよ!!」


 そうして、三人でゲームをすることになった。

 とりあえず、定番のマッスルカートを始めた。

 一般人から、フィジーク選手、ボディービルダーなど、たくさんのキャラクターから一人選び、一位を目指すレースゲームだ。


「お兄ちゃん!? 私のプロテインの邪魔しないで!!」


 なぜこのゲームが老若男女に親しまれているのかよく分からない。

 もっと魅力的なキャラクターがいそうな気もするが……。


 友人の大和は、このゲームのキャラクターになるのが夢らしい……もし、そうなった場合はダンベルを投げつけてあげよう。


「妹って、学校でどんな感じ?」

「……柚葉ちゃん、みんなの人気者みたいな。」

「いいって、二人とも!!」

 

 妹は、ぷりぷり怒っている。

 ゲームをしながら話を続ける。


「……まだ、最近引っ越ししてきたばかりだけど、すぐ友達になってくれたから。」

「へー」


 もう……と妹は照れくさそうにしていた。

 学校では、面倒見もいいらしい。

 家でも少しは発揮してくれるといいのだが。


「……この前、大丈夫でしたか? 柚葉ちゃんから、遊園地で事故あった時、居合わせたって聞いたから……。」

「まあ、なんとか」


 あの遊園地の一件は、事故として処理されていた。

 魔法少女や怪物が暴れていたとなれば話題になりそうだが、特にそんなニュースは上がっていなかった。

 現在は、臨時休業中らしい。


「……柚葉ちゃんや、お兄さん怪我したりしたら嫌だなって。」

「ありがとう」


 頭を撫でたくなるのを我慢する。

 心配してくれてるのだろうか。気遣いもできるとてもいい子だ。


「はーい、私の足ゴリラが一位!!」


 妹はガッツポーズをしていた。

 俺の使っていたデカメロンもいい勝負をしていたが、一歩足りなかった。


 窓の外は、夕日が辺りを燦々と照らしている。もうすぐ、日が暮れるだろう。


「結花ちゃんって、家近く?」

「お兄ちゃん、結花ちゃんの家行ってなにするの……?」

 え……と妹に距離を取られる。


「ナンパじゃないわ。暗くなる前に帰らないと危ないだろ」

「……家は近くです。じゃあ、暗くなる前に帰ろうかな」

「えー、じゃあ、また明日ね」


 バイバイと手を振って、家を出て行った。

 あんな子なら、妹がもう一人増えてもいいかもしれない。


「お兄ちゃん、結花ちゃんについていかないでよ」

「おまえ、兄をなんだと思っている?」


 そうして、一日が終わった。

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