第21話 初コラボ配信のその後で

水琴たちと再会し、フォルトゥナが所有していた帰還石を使ってダンジョンの外に出た北斗を待っていたのは、雅が手配していた医療班と大量の警察だった。

医療班については自分の持っているポーションで治療したためすぐに帰ってもらったが、警察についてはそうはいかない。

ユニークアイテムはその強力さはさることながら、危険性が高いことから使用禁止されている物も数多く存在する。

今回ネファストが使用した階層移動トラップとモンスター召喚のユニークアイテムはどちらもその筆頭、使用をした者は厳重な罰を受けることになる。

配信を通して有識者が大量に通報をしていたのだ、加害者であるネファストが知らぬ存ぜぬと出来ないのはもちろんの事、被害者である北斗たちも警察に事情を話さねばならない。

警察官から何度も頭を下げられつつ事情聴取を無事に終え、解放された頃にはすでに日付が変わっていた。


「流石に草臥れた……事が事だけに長引くのは覚悟してたものの、長すぎやしないかい……?」

「ボクもくたくたぁ……立場上説明することとかには慣れてるけど、これはまた違う種類だよねえ……」


特に年若い(そんなに変わらない)ハルト達に面倒はかけるものかと4人への聴取を軽いものにする代わりに自分たちが全て説明すると庇った北斗と水琴はその分長時間拘束されることとなり、今はユーフォリアのマスタールームにてぐったりとソファにもたれ掛かっていた。


「お疲れ様、二人とも。……そして、うちの者が本当にすまない。ユーフォリアからは追放処分の上、他の処罰についてもきっちり受けてもらう。世間にも公表することは厭わない。むしろさせて貰う」

「ボクはしのっちが助けてくれたから怪我はないし、きちんと処断さえしてくれたならそこまで求めないけど……配信中に起きちゃったことだし、流石にそこはしっかり対処しないといけないよねえ」

「まさか俺のところに水琴の配信用カメラが取り残されてて、あまつ幸か不幸か古代龍に壊されずに無事配信しきっちまったってんだから、本当、いいのか悪いのか……」


そう。

水琴側のチャンネルで流していたコラボ配信は全て垂れ流してしまっていたのだ。

北斗と水琴が罠にかけられ階層移動させられた事も。

移動先で古代龍も召喚され、北斗が水琴を逃した事も。

北斗が古代龍によって腕をちぎり飛ばされたり事も。

古代龍を、討伐してしまった事も。

ユーフォリア所属の探索者パーティ、ネファストがことの首謀者である事も、全て。

これは水琴がサブチャンネルで配信していた方でも同様で、全てが世間に知れ渡ってしまっていたのだ。

中には勿論北斗らの自作自演を疑う声や心無い言葉もあるが、腕まで吹っ飛ばされているのにそれは無かろうと世間は北斗達に同情的だった。


「そこはごめんねえ、しのっち。でも、結果的に残ってて良かったよ。ボクたちの無実、被害者って事が簡単に証明出来たんだからさ」

「まぁそこはあの手この手で火消しして回らんで良かったって事で済ませておこう。もし配信してなかったらこれ以上に面倒な事になっていた可能性もあるからねえ」


北斗に瞬殺されていたネファストのリーダー。

以前接触した時のやり取りも含めて見れば、口八丁手八丁な人物なのだろう。

もしも配信がなければ、彼はいいように発言をして北斗たちを悪し様に言ってとんでもない濡れ衣を着せてきていたな違いない。


「ま、あとはアイツが娑婆に出てきた時に逆恨みで変な事をされないよう警戒はしておくさ。周囲に危害が及ばんとも限らないし」

「ボクも!人脈フル活用して次は叩き潰すもんね!」

「すまない、水琴、北斗……。特に北斗には、前回から迷惑を掛け通しだ」

「そんな顔しなさんな。前回の事はもとより、今回の事も気にしとらんよ。それに元々は坊ちゃんらを狙っていた悪質な犯行。それを坊ちゃんらが怪我したら取り返しのつかない事態になる前に防げたんだから謝るより感謝のが嬉しいね」

「そうそう!!それにリーダーはしのっちの命狙ってたんだから!捕まえるのに助力できて良かったよ!」


飄々と言ってのける北斗に、明るく笑い飛ばす水琴。

頼もしい友人2人のそれに、雅は何処か安堵したように表情を緩めた。

内心では何よりも得難い友人と思っている2人から…特に北斗から疎まれてしまうのではないのかという懸念を抱いていたのだ。

北斗については2度も迷惑を欠けてしまったのだから尚のこと。

しかし、その表情もすぐに曇った。


「……だが、北斗についてはこれだけでは済まないだろう。古代龍を討伐、しかも単独ソロでなど……初の事例なのだから」


雅の言葉に水琴の表情も曇る。

雅が言った通り、古代龍は諸外国では存在の確認されていたのだが、討伐はされていない。

これが討伐を敢えてしなかったというのであれば話は変わったのだろうが、というのが事実だ。

名の通り古より生きているとされている古代龍。

まずもって古代龍が持つ魔力の濃度に耐え切れる人間が希少、かつその希少な中から古代龍と戦うに値する戦力を持つ探索者を選定せねばならない。

だが、そんな者はほとんどがクランお抱えのSランクか希少スキル持ち。死に戦にそんな貴重な人材を投じる方が馬鹿らしいということだろう。

そう思われるほどの戦力を有し、討伐は不可能だろうと結論付けられていた古代龍を、今の今まで無名だった北斗が単独討伐した。

否が応でも渦中に身を置く事になるだろう。

諸外国からは兵器と警戒され。

国からは有事の際の戦力と数えられ、難題を押し付けられ、下手すれば日常から監視されるかもしれない。

マスコミからはプライベートなどを一切考慮しない突撃が待ち構えている事だろう。


「別に大した事ないだろ。諸外国にも討伐してないだけで出来うる人材はいるだろうに。ただ珍しいと思われるだけだろうさ」


……待ち構えているのは確実、なのだろうが。

当の本人がこうなのである。

誰も成し得なかった古代龍の討伐を単独成功させたというのに、それを大した事と捉えていないのだ。


「しのっちって本当、自己表現が低いというか、なんというか……他の国から古代龍の討伐依頼されたらどうするのさ?」

「どうって……所詮はダンジョンモンスターだろ?暫くすればリポップするものを無理に討伐しなくてもいいのに俺なんかに討伐依頼なんか出すもんかい。自国の探索者で対処するだろうさ」

「北斗はどうしてそう自分の実力を理解していないんだ……国家戦力に匹敵するんだぞ、お前の実力は」


水琴と雅の呆れの混じった言葉に北斗ははて、と首を傾げるのみだった。

何をそんなに考えているのかね?

第一、本当に討伐依頼を出されたとて俺なんかがでしゃばれば自分たちで討伐出来たことを邪魔されたと逆に国際問題に発展しかねないってのに。

そんな北斗の様子に、2人は苦笑を浮かべて力を抜いた。


「ほんっとにしのっちは昔っから変わんないよねえ!そこがいいとこなんだけどさ!」

「本当にな。この飾らない性格が好ましい」

「なんだいなんだい2人とも、そんなに持ち上げて。何も出やしないぞ?」

「いいのー!ボクらはしのっちとこれからも仲良くできればさ!」


明るく笑い飛ばす水琴。

静かに微笑み2人を見守る雅。

かつて学生時代に過ごしたパーティメンバー達との楽しい記憶。

その時と同じ空気に包まれたユーフォリアのマスタールームに居心地の良さを感じた北斗は、柔らかい笑みを浮かべて2人との会話をしばし楽しんだ。










あとがき


ユニークアイテムについてですが、一応種類分けされているのでどこかの話で解説できるように今頑張って考えております。温かい目で見守っていてください。


そしてフォロー200突破、さらに閲覧数も1万を超え、本当にありがとうございます!!

評価も本当に嬉しくて、増えるたびに泣いて喜んでおります。

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