第20話 初コラボ、無双、緊急事態 その4

時は少し遡り、深淵エリア。

北斗はスキルを発動した状態で古代龍へ歩み寄ると無造作に太刀を振るった。

斬、と放たれた斬撃は今まで小さな傷しかつけられなかったその肌に深い傷を刻み込み、鮮血が北斗の身を紅く染めていく。

爪と太刀、互いに何合となく斬り結び、北斗の一挙手一投足が古代龍へと凄まじい威圧感を与えており、それに耐えきれずに古代龍が放った痛みと恐怖が入り混じった咆哮。

空気を震わせ肌すら刺すような咆哮を真正面から受けて尚、その表情はどこまでも楽しげで。


「さて、次はどこから斬ろうか?もう片方の腕か?脚か?それとも……」


古代龍はずりずりと後退した。

もうこの羽虫を捻り潰すなどという考えは頭から消え去っていた。

どうにかしてこの異物北斗から逃げたいと、ただそれだけだった。

古代龍のそんな想いは北斗にとっては関係など一切なく、無常に古代龍を斬りつけていく。

予告通り左腕を斬り飛ばし。

右足を削ぎ落とし。

両翼をズタズタに切り裂き。

尾を斬り落とす。

じわじわと削られていく命に、古代龍から放たれる魔力も弱まっていく。


「流石の古代龍もここまで削がれれば回復能力も落ちるのかい。少しずつ元に戻ってはいるが……さて、完全体に戻るまでどのくらいかかるものか」


そこまで待ってやるほど俺は優しくないぞ。

斬、と。

瞬きの間に太刀を振るい、古代龍の両眼を潰す。

いよいよ視界を潰された古代龍は音と匂いでなんとか北斗の存在を把握しようとするが、意味がなかった。

あまりにも匂いが薄い。ダンジョンの中の匂いに紛れてしまっていて役に立たない。

ならば音は?

音も微かな呼吸音が聞こえるかどうかという状況で、霞の中を手探りで進んでいるかのように北斗の居場所が曖昧だった。

腕が無く、脚も片方失っている以上手当たり次第にブレスを放つか?

否、そんなことをすれば自身も巻き込むかダンジョンの天井を崩壊させ自信を潰すかだろう。

なれば、押し潰すか。

不可能だろう、八つ裂きにされて終わる。


「震えてるなあ。どうやったら俺を倒せるのか、算段をつけようとしているんだろうが……可哀想に、無理だぞ」


どこまでも普通の声音。

普通であるということ、それが余計に古代龍の中に生まれた恐怖心を育ててゆく。

その時だった。

ぱりん、と小さな……ガラスのようなものが割れる音が古代龍の荒い呼吸が響く空間に混ざり、失われていた古代龍の肉体が元通りになる。

これならば、これならば!!!

目の前の異物北斗を滅ぼすことが出来る!

くわり、口を開いて戻った視界を頼りに北斗へ照準を合わせた。


「……学習くらいはしてほしいもんだな。また斬り落とせばいい話だってのに」


再び古代龍の視界が暗闇に包まれる。

今度は四肢を残さず斬り落とされ、惨めったらしく床に崩れ落ちるのに数秒も掛からなかった。


「お前さんの行動パターンはなんとなく読めた。その上俺がスキルを使っている以上、俺の負けはあり得ない」


乱雑に放たれるブレスが床を、壁を焦げ付かせ、溶岩へと変貌させ。

肌を焦がすほどの熱気の中、まるで自分の周囲には影響がないとばかりに北斗は太刀を構える。

恐ろしい、このままでは、本当に。


「悪いねえ。もうちっと死合ってやりたかったが、ミコさんの安否も気になりゃもう一つ気がかりもある。そろそろ終わらせて貰う」


音なく古代龍へ駆け出す。

片腕を失っており、バランスも取りづらかろうというのにそれを微塵も感じさせないの走り。

わからない、何処だ、奴は何処からくる。

斬り落とされ無いに等しい尻尾を振り回し、せめてとブレスを放ち続ける。

しかしそれは古代龍を無駄に消耗させるだけの愚かな行為。

ひとつも北斗に傷を喰らわせる事はなく悪戯に壁と床を荒らしていくのみ。


とん、と。


軽く床を蹴る音が古代龍の耳に届く。

来る、上からなのか、はたまた。

何処、から。


「終わりだよ」


恐らく古代龍は気付いていないのだろう。

己がすでに首を断たれているということに。

轟音を立てながら頽れる体躯を、北斗はただ無感動に見つめていた。


「……さてさて。そろそろ出てきてもらおうかねえ……そこにいんのは分かりきってるんですわ」


ネファストのリーダーさん?

仏の顔も三度までと警告はしたんだ、それを無視したんだから……覚悟は出来ているんだろうな??

卑下た笑みを浮かべ姿を現した男に、北斗は底冷えするほどの視線を投げつけた。





────1時間後。


「早くあめっちのとこに行かないと!!!!!」

「ぐぎゃ!」

「へぶ!」

「ひぎぃっ!」

「……あの、ミコさん……その人たち、もう全身ボコボコなんですけど」


水琴とフォルトゥナはネファストの3人を引きずりながら深淵エリアを目指していた。

水琴に瞬殺された3人はあっさりと縛られ、今はタイヤ引きよろしく5人の後ろを跳ねながら荷物扱いされている。


「こいつらのことなんてどーでもいいの!そもそもこいつらが君たちやボクとあめっちを罠にかけたんだ!このくらいで済んで感謝してほしいね!」

「……それは、そうですね」

「雨月さんを、今も酷い目に合わせてるから…自業自得」

「そうですね。あんなにも強く優しい人を私たちを助けたからと巻き込んだ人に慈悲はいりません」

「いや、みんなまで……確かに僕も頭に来てはいるけど」


現在は下層エリアを駆け抜けつつハルトには珍しく険しい顔をしている。

恩人でもある北斗をこんな事に巻き込んだ事を許せなかったからである。


「それに、あめっちがボクを帰還させてからもう1時間。何が起こっててもおかしく無いし。こんな人たちに気を使う暇すら惜しいもんね!」


未だ流れているサブチャンネルの配信コメント欄も賛否両論はあるもののほとんどがネファストの面々への批判と北斗の無事を祈るものばかり。

引き摺られているネファストの扱いに不満を漏らす者はほぼいなかった。元々嫌われているのが窺える。


「お願いあめっち、無事でいて…!!!」


そろそろ深層エリアへの階段が見えてこようかという頃。

水琴一向の目の前から何かがやってくるのがわかった。

武器を構え緊迫した空気が漂う中、何者かの姿がきちんと視認出来るようになる。

その、何者かの正体は。


「……あめっち?」

「ミコさん?それに……坊ちゃんたち?どうしてここに…帰還石を使って地上に戻したのに」


左腕を失い、残った右腕で縄に雁字搦めに縛り上げた男を引き摺りながら深淵エリアから戻ってきた北斗だった。

全身が血まみれであったり腕が欠けていたりと満身創痍の風体ではあるものの表情はケロリとしていて。


「まさかユニークアイテムを使ってまで深層に来るとは思いもしなかったですねえ。慢心はいけないや。…ミコさん?」

「〜〜〜〜〜っ、あめっちぃぃぃぃ!!!!」

「ミコさ……ちょ!?!?」


感極まった水琴がそんな北斗に抱きついて床に押し倒したのは、ご愛嬌だろう。











あとがき


そんなこんなで古代龍戦終わりです。

北斗くんの腕についてはご安心を、ポーションがあるので。


そして、重ね重ね評価、フォロー、閲覧本当にありがとうございます!!!

読んでいただけるだけでもありがたいのに、フォローや評価をしていただきその通知が来るたびににやにやしているゆきおんなでございます。

ぜひぜひのんびりお付き合いしていただければと思います。

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