第22話 買い物とアイテム講義

世間が北斗の古代龍討伐に騒めく中、当の本人は千代田区にあるダンジョン省の本部へとやってきていた。

各ダンジョン協会支部を統括しているダンジョン省、ここに北斗はしょっちゅう不要アイテムを売りにだったり普通に買い物に来たりしていた。

今日の目的はとあるユニークアイテムだった。


「さてさて、お目当てはあるのかなっと……ん?あれは…」

「あれ、雨……ごほん、し、東雲さん、こんにちは」

「はいこんにちは。しっかし、まさか完全プライベートで来た先で理人たちと出会うとはねえ。本当、縁があるもんだ」


ダンジョン省の中で出会ったのはフォルトゥナの4人だった。

ちなみにプライベート時に配信者名で呼び合ってしまい身バレ…という事故を防ぐために互いに改めて本名を名乗り合っている。

北斗は雨月紫雲ではなく東雲北斗として。

ハルトはハルトではなく春河理人として。

セイナはセイナではなく篠崎聖奈しのざきせなとして。

アカネはアカネではなく赤原汐恩あかはらしおんとして。

リオはリオではなく一ノ瀬莉緒いちのせりおとして。

ちなみにしれっと名前呼びをしている北斗だが、最初はいくら年下であり今まで坊ちゃん嬢ちゃんと呼んでいたとはいえ名前の呼び捨ては……と苗字で呼ぼうとしていた。

だが、なぜか猛反対にあい名前呼びに落ち着いたという本人からしたら謎の経緯を経て現在に至っている。


「今日はどうしたんだい?買い物なら渋谷支部でも事足りるだろうに」

「ああ、それは……」

「今日私たち、ユニークアイテムを買いに来たんです」

「そう、ユニークアイテム。できれば、マジックバッグがあればいい」

「容量が小さい物でも滅多に出回らないと聞きましたので、希望は薄いのですが……」

「マジックバッグか……理人たちは希少クラスか伝説クラスの物が目当てなのかい?」


北斗がそう尋ねると、4人は揃ってキョトン、と首を傾げた。

……ん?なんだ、この反応。

まさか……いや、そうと決まったわけじゃない。前回の探索者カードの裏面機能について知らなかったことを加味したとしても、まだ希望はある……よな?


「あー……その、一応ユニークアイテムと言ってもクラス分けされてるんだが……ご存知?」


フルフル、と4人揃って首を横に振る。

瞬間、北斗は頭を抱えながら大きくため息をついた。

こりゃ……雅にまた説教せんといけないねえ。あいつは本当、なんで最低限のことしか教えていないんだか……。

北斗の反応に不安げにする理人たちを安心させるように微笑むと口を開く。


「安心しな、理人たちに怒っているわけじゃない。これについてはマスターである雅の責任だからあいつに呆れてんだよ。まあ、折角の機会だからこれについても解説しておこうかね」


雨月先生の臨時ユニークアイテム講義だ。

北斗の言葉に目を輝かせる理人たち。実はユーフォリアで講師をしている探索者の自慢たっぷりの指導より北斗の講義の方がわかりやすくためになるのでまた受けてみたいと常々思っていた4人なのだった。

あらら、目を輝かせちゃって。そんじゃ、張り切って教えるとしますかね。……友人の圧倒的説明不足のお詫びも込めて。


「まず、ユニークアイテムってひと纏めにするのは難しい。色々種類があるからな、だから4つのクラスに分かれている」


ユニークアイテムの種類は以下の通り。


一般コモンクラス

一番よく手に入るユニークアイテム。

少し能力値を底上げするアクセサリー、属性が付与された武具といったものが分類される。基本的に入手した者が利用する事が多く、売却価格もそこまで高額でもない。販売されていたとしても比較的安価。

特に所有、利用に規制はない。


希少レアクラス

少し入手確率が下がるユニークアイテム。

数個の属性がついている武具やアクセサリー、容量の小さなマジックバッグ、低ランクのスキルを取得できるスクロール、一度限りの制限付きの魔法が使える魔導書などがここに分類。

一般クラス同様入手した者が利用する事が多く、効果によっては少し値が張る事も。売却したら高層マンションが現金でぽんと程度の値段がつくことも。

所有、利用に規制はほぼないが、効果などによってはダンジョン協会の各支部かダンジョン省への報告が義務付けられており、報告なく使用が確認されたら罰金が課せられる。


伝説レジェンダリークラス

入手が非常に稀なユニークアイテム。

マジックバッグ、レアスキルのスクロール、強力な魔法の行使が可能な魔導書、以前北斗が上級ポーションとの比較に挙げたエリクサーや賢者の石など一つだけでも凄まじい力を持つなどがここに分類される。金額については非常に高額である事が多く、手を出すことは難しい。

基本的にダンジョン協会並びにダンジョン省への報告が義務付けられており、報告をした上で許可証を得て初めて所有と使用が認められる。もしも報告を怠るか秘匿した場合は一時的な探索者としての資格の停止、並びに罰金が課せられる。


厄災ディザスタークラス

入手難易度としては伝説クラスと同じなユニークアイテム。

このクラスに分類されるものにおいては原則個人での所有は勿論のこと使用も禁止されている。

例を挙げるとすれば先日の事件で使用された階層移動の罠を張れる物、存在する階層以下のモンスターを召喚できる物、呪いが付与されている武具やアクセサリー等々、羅列されているものだけでも危険だと理解わかるものばかり。

もしも使用や鑑定前以外の所有が確認された場合は探索者資格を剥奪の上、最悪の場合は一番重い罰が適用される可能性もある。


「……とまあこんな感じで、理人たちが希望しているマジックバッグはこの中だと希少クラスないし伝説クラスだ。つまり、よしんば見つけたとしても引くほど高いか、中層エリアまで潜ってる理人達には小さすぎる可能性がある。一番現実的なのはダンジョンで入手出来るまで頑張るってとこだねえ」

「「「「…………」」」」


おっと、全員黙っちまった。

まあ、ピンキリとはいえ前回見つかったマジックバッグの金額も一緒に伝えたから、そのせいでもあるんだろうがね。

あと可能性があるとすればアイテムボックスのスキルのスクロールを見つけるってとこだが…これも伝説クラスのユニークアイテムな上、売っていたとしてもおいそれと手を出せるもんじゃないからなあ。


「……ひとまず、僕らが気軽に入手したり買えるものじゃないのは理解したので、諦めます……。というよりも、そんな風に分かれていたなんで初めて知りました」

「それについては雅の教育不足だ、気にする必要はないよ。本当は俺が作ってプレゼントって手もあるんだが……そんなに顔を真っ青にして首を横に振らんでもしないよ、流石にそこは弁えてるさ」

「よ、良かったです……。その、僕らはマジックバッグ目当てでしたが、東雲さんは?」

「俺かい?俺は……ああ、あれだよ」


北斗が指し示す先にあったのはシンプルながらも美しいガーネットのような石が使われたネックレス。

一見するとただの装飾品にしか見えないそれを北斗が欲していたということに4人は首を傾げたが、北斗が続けた言葉に欲するのも当たり前と考えを改めることになる。


「あのユニークアイテムの名前は不滅の首飾り。使用すると使用者を中心とした一定範囲に結界が張られてどんな攻撃も通さないって噂。しかも使用者が守護したいと思う人間を指定できるイカれ機能付き」

「す、すごい……でも、なんでそれを東雲さんが?私たちから見ても東雲さんこんなものいらないくらいに強いのに」

「……この前の古代龍の一件。あれは元々理人たちを狙ったものとはいえ、俺に対してあんな容赦なく化け物をぶつけてきたんだ。もしそこに他の、無関係の人間が巻き込まれてしまった時に守り切れるようにしておきたくてねえ」


そう言いながらカウンターに近寄り購入手続きを進めていく北斗。

表情は普段通り飄々としてはいるもののどことなく別の感情も浮かんでいて。

旧知の仲である水琴を巻き込んだ事も関係しているのだろう。

どんな言葉をかけて良いかわからなくなってしまった4人は口を噤んだが、ふと汐恩が値段が気になったらしく北斗の手元を覗き込んだ。

ぴしり、とその体勢のまま固まる。


「ん?汐恩、どうしたんだい?」

「……東雲、サン。その、それ、金額」

「あー……まあ、汐恩たちからすると驚く金額だよなあ」


ざっくり言ってしまうと9桁はいく金額だ、汐恩たちからすると恐ろしく高い金額になっているだろう。

それをあっさりと購入しているのだから、北斗の財力が凄まじい事は容易に想像できる。


「……本当に、東雲さんって何者……?うちのクランマスターも大概なのに、それより凄い」

「さて、何者なんだろうね?少なくとも汐恩たちの味方であることは保証させてもらうさね」

「む……子供扱いしないで」


ぽんぽんと汐恩の頭を撫でる北斗。

事実フォルトゥナの4人は北斗よりも年下なので本人からすれば弟妹のような存在なのだが、汐恩はそれが不服だが撫でられるのは嫌ではないらしく、膨れっ面になりつつも北斗の手に頭を押し付けていた。


「ちょ、汐恩!!!ずるっ……じゃなくて東雲さん困らせるんじゃないわよ!」

「汐恩ちゃん子供扱い嫌なんでしょう?なら離れてもいいんじゃないかな?」

「いや、二人も東雲さんに近づきすぎるのはちょっと…あ、僕はいくらでも撫でてくださって大丈夫ですからね」

「特に俺は困ってないんだがねえ……?」


なあんで4人はこんなに揉めてるんだ?

今日の目的は済んだし、雅に指導不足の説教をしに行きたいんだがそろそろお暇しても……駄目かい?

そんな4人揃って頷かんでもいいだろうに。














あとがき


今になってハルト以外の本名書いてない事に気がつき急遽一気にお披露目となりました。ノートに下書きやら設定書いてるから書いた気になってたんでしょうね…反省。

そしてそろそろお気づきでしょう、ユーフォリアのクランマスターである雅がポンコツなところがある事を。本人に悪気はなく、ただすっ飛ばしてしまっているだけなのでどうかこれからもポンコツマスター雅くんを見守ってください。


一話をめちゃくちゃ盛り込んで長くしてしまう事もあれば短くなる事もあるのでこのムラっけをなくしたい今日この頃です。がんばります。

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